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第一部
75.
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レオが落ち着くまで一緒にいた後、私は少し悩んだ後に彼をレインの所へ連れて行った。
このままレオを追い詰めたマレーナたちがいる子供部屋に戻すのは忍びなかったのだ。
(こういう時カーヴェルがいてくれたら)
そう思ってしまい苦笑いをする。
(レオにカーヴェルには家令の仕事もあると何度も言ってきた癖に、レオの面倒を見て貰おうだなんて)
結局、ロンの言う通りレオは孤独なのだ。
あんなに大勢のメイドに囲まれているのに安心して預けられる人物は周囲に居ない。
だから、原作エリカという依存先が無いまま育つとケビン以上の暴君になるのだろうか。
レオがカーヴェルに懐いてくれたのは嬉しい誤算だが、今回はマレーナたちにその好意と執着を利用される形になった。
私は溜息を一つ吐くと公爵夫人室に戻る。そしてアイリに頼んでエミリエを呼び出して貰った。
「おっ、奥様、お待たせ致しました!」
間もなく息を切らしてエミリエがやってくる。直前まで掃除をしていたのか箒を持ったままだった。
別にそこまで焦って来なくていいのにと思うが、面倒臭そうな顔でやって来られるよりは何倍もマシだ。
「待っていないわ。急に呼び出して悪いわね」
「いっ、いいえ。このお部屋をお掃除すれば宜しいでしょうか?!」
「違うわ、落ち着いてね」
今にも掃除を始めそうなエミリエを止める。
「えっ、でも掃除が不十分だったというお叱りでは……」
「そうじゃないのよ。他のメイドの件で話があるの」
きょとんとした顔をするエミリエに苦笑いで説明する。
悪い性格の娘では無いだろうが、早とちりが過ぎる。公爵夫人の侍女の一人にするのは難しそうだ。
彼女の希望通り清掃担当のメイドにしておくのが一番良いだろう。
「他のメイドの件……ですか?」
「ええ、リーネというメイドだけれど彼女マレーナに脅されているみたいなの。心当たりは無い?」
私はストレートに告げる。エミリエは驚いたように目を丸くした。
「えっと、心当たりは……無いです」
「そう……」
もぞもぞとした口調で言われる。私は机の引き出しから封筒を数通取り出した。
「話を変えるわね。この封蝋に見覚えはあるかしら?」
「封蝋ですか? ……あっ、これ私の」
「……私の?」
「えっと、私、シーリングスタンプ作りが趣味で、その」
「つまりこの封蝋のデザインは貴方が考えた物で合ってる?」
「はっ、はい、でも何で……?」
不思議そうにエミリエは首を傾げる。私は内心ホルガーの記憶力に関心していた。
ブライアンが持って来た辞職済みメイドの家からの抗議の手紙。
それに付いていた封蝋が各家の物でないと彼は看破した。保管していた過去の手紙から確認も出来た。
けれどそれだけでなく、偽の封蝋について見覚えがあるとホルガーは言い出した。
それから彼はずっと封蝋について考えていたらしく、エミリエが過去に数回手紙に使っていたことがあると思い出したのだ。
そして彼女の封蝋が定期的に変わるということも。
(家令で居続ける理由はあったってことね)
私はそうホルガーの能力について締めくくる。
「この手紙はね辞めたメイドたちの家から公爵家の抗議文なの。偽装されたものだから立派な犯罪ね」
「はっ、犯罪?!」
「それに押されていた封蝋が貴方の物だとすると……」
「ちっ、違います、私じゃないです! 確かそのマークのスタンプは……リーネさんに貸していて……!」
「いつから貸していたの?」
「一年以上前です、使用人室で友達に手紙を書いている時にテーブルに置いていたら貸して欲しいって言われて……」
成程、友達への手紙に使う封蝋だったのか。
道理でどこか可愛らしいデザインだと思った。
「でも、又今度って返して貰えなくて、スタンプだけじゃなくて……」
「……そのこと、マレーナに相談した?」
「はい、定期面談の時にしました。その後レーネさんから返して貰えたけど何個か壊したって言われて、そのスタンプの物も……」
やっぱりここで繋がるのか。私は静かに納得した。
「定期面談っていうのはマレーナがレオ君付きのメイドたちに行っているの?」
「はい、不満や困ったことは無いかって……」
成程、侍女長と呼ばれるだけはある。けれど善意の行動では無いだろう。
その面談はきっとメイドたちのトラブルを把握して上手く利用する為の手段でしか無い。
そしてリーネは手癖の悪さという弱みを握られたのだ。
「この手紙はね、数日前に私に届いたの。だからその時点ではシーリングスタンプは壊れて無い筈ね」
「えっ、でも……」
「きっと貴方の封蝋を自分の物にする為に嘘を吐いたのよ、弁償はさせたの?」
「い、いいえ……凄く謝られたので……でも嘘だったなんて」
エミリエは泣きそうな顔になる。
手作りの物に対しそんな扱いをされたならショックも受けるだろう。
「そう……貴方の実家は男爵家よね」
「はっ、はい」
私が質問するとエミリエは頷いた。
「私物を壊されたまでは貴方の裁量で済むかもしれない。だけど貴方の封蝋で文書偽造されたら家まで犯罪に巻き込まれるわ」
「そんな……私、家族は巻き込みたくないです!」
怯えた表情のままだが、エミリエは強く宣言する。
「なら私に協力して頂戴。嘘を吐いたリーネたちに報いを与え貴方の無実を証明する為に」
私が告げると臆病なメイドは力強く頷いた。
このままレオを追い詰めたマレーナたちがいる子供部屋に戻すのは忍びなかったのだ。
(こういう時カーヴェルがいてくれたら)
そう思ってしまい苦笑いをする。
(レオにカーヴェルには家令の仕事もあると何度も言ってきた癖に、レオの面倒を見て貰おうだなんて)
結局、ロンの言う通りレオは孤独なのだ。
あんなに大勢のメイドに囲まれているのに安心して預けられる人物は周囲に居ない。
だから、原作エリカという依存先が無いまま育つとケビン以上の暴君になるのだろうか。
レオがカーヴェルに懐いてくれたのは嬉しい誤算だが、今回はマレーナたちにその好意と執着を利用される形になった。
私は溜息を一つ吐くと公爵夫人室に戻る。そしてアイリに頼んでエミリエを呼び出して貰った。
「おっ、奥様、お待たせ致しました!」
間もなく息を切らしてエミリエがやってくる。直前まで掃除をしていたのか箒を持ったままだった。
別にそこまで焦って来なくていいのにと思うが、面倒臭そうな顔でやって来られるよりは何倍もマシだ。
「待っていないわ。急に呼び出して悪いわね」
「いっ、いいえ。このお部屋をお掃除すれば宜しいでしょうか?!」
「違うわ、落ち着いてね」
今にも掃除を始めそうなエミリエを止める。
「えっ、でも掃除が不十分だったというお叱りでは……」
「そうじゃないのよ。他のメイドの件で話があるの」
きょとんとした顔をするエミリエに苦笑いで説明する。
悪い性格の娘では無いだろうが、早とちりが過ぎる。公爵夫人の侍女の一人にするのは難しそうだ。
彼女の希望通り清掃担当のメイドにしておくのが一番良いだろう。
「他のメイドの件……ですか?」
「ええ、リーネというメイドだけれど彼女マレーナに脅されているみたいなの。心当たりは無い?」
私はストレートに告げる。エミリエは驚いたように目を丸くした。
「えっと、心当たりは……無いです」
「そう……」
もぞもぞとした口調で言われる。私は机の引き出しから封筒を数通取り出した。
「話を変えるわね。この封蝋に見覚えはあるかしら?」
「封蝋ですか? ……あっ、これ私の」
「……私の?」
「えっと、私、シーリングスタンプ作りが趣味で、その」
「つまりこの封蝋のデザインは貴方が考えた物で合ってる?」
「はっ、はい、でも何で……?」
不思議そうにエミリエは首を傾げる。私は内心ホルガーの記憶力に関心していた。
ブライアンが持って来た辞職済みメイドの家からの抗議の手紙。
それに付いていた封蝋が各家の物でないと彼は看破した。保管していた過去の手紙から確認も出来た。
けれどそれだけでなく、偽の封蝋について見覚えがあるとホルガーは言い出した。
それから彼はずっと封蝋について考えていたらしく、エミリエが過去に数回手紙に使っていたことがあると思い出したのだ。
そして彼女の封蝋が定期的に変わるということも。
(家令で居続ける理由はあったってことね)
私はそうホルガーの能力について締めくくる。
「この手紙はね辞めたメイドたちの家から公爵家の抗議文なの。偽装されたものだから立派な犯罪ね」
「はっ、犯罪?!」
「それに押されていた封蝋が貴方の物だとすると……」
「ちっ、違います、私じゃないです! 確かそのマークのスタンプは……リーネさんに貸していて……!」
「いつから貸していたの?」
「一年以上前です、使用人室で友達に手紙を書いている時にテーブルに置いていたら貸して欲しいって言われて……」
成程、友達への手紙に使う封蝋だったのか。
道理でどこか可愛らしいデザインだと思った。
「でも、又今度って返して貰えなくて、スタンプだけじゃなくて……」
「……そのこと、マレーナに相談した?」
「はい、定期面談の時にしました。その後レーネさんから返して貰えたけど何個か壊したって言われて、そのスタンプの物も……」
やっぱりここで繋がるのか。私は静かに納得した。
「定期面談っていうのはマレーナがレオ君付きのメイドたちに行っているの?」
「はい、不満や困ったことは無いかって……」
成程、侍女長と呼ばれるだけはある。けれど善意の行動では無いだろう。
その面談はきっとメイドたちのトラブルを把握して上手く利用する為の手段でしか無い。
そしてリーネは手癖の悪さという弱みを握られたのだ。
「この手紙はね、数日前に私に届いたの。だからその時点ではシーリングスタンプは壊れて無い筈ね」
「えっ、でも……」
「きっと貴方の封蝋を自分の物にする為に嘘を吐いたのよ、弁償はさせたの?」
「い、いいえ……凄く謝られたので……でも嘘だったなんて」
エミリエは泣きそうな顔になる。
手作りの物に対しそんな扱いをされたならショックも受けるだろう。
「そう……貴方の実家は男爵家よね」
「はっ、はい」
私が質問するとエミリエは頷いた。
「私物を壊されたまでは貴方の裁量で済むかもしれない。だけど貴方の封蝋で文書偽造されたら家まで犯罪に巻き込まれるわ」
「そんな……私、家族は巻き込みたくないです!」
怯えた表情のままだが、エミリエは強く宣言する。
「なら私に協力して頂戴。嘘を吐いたリーネたちに報いを与え貴方の無実を証明する為に」
私が告げると臆病なメイドは力強く頷いた。
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