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第一部
85.
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マレーナとブライアンが悪用していた隠し通路はどうやら封鎖されたらしい。
ホルガーからそう事後報告を受けた時に思ったのは「ケビンは使わないのか」だった。
もしかしたら使う分はちゃんと残しているのかもしれないが。
天井を塞ぐ仕事は下男のクレイグがしたとのことだった。
ブライアンが地下牢の見張りにクレイグとアイリを抜擢した時から思っていたが、二人には何か特別な役割があるような気がした。
たとえば普通の使用人には頼めないようなことを依頼したりとか。
(どちらも口が堅く仕事はきっちりこなしそうだからかしら)
公爵邸の暗部について私より多くを知っているかもしれない。
というか私は意図して情報制限されている気がする。
理由は離婚を前提とした短期の結婚だからだ。
そしてホルガーにはケビンの様子や夫婦間の空気などからそれらを察する能力は無いと思うので予めケビンから伝えられている筈だ。
(捨てられるとわかっている公爵夫人相手に礼儀を失しない態度は良いと思うけれど)
普通はそうだろうと思うけれど、この屋敷では普通が通用しないことも私は思い知っていた。
ホルガーは今まで以上にカーヴェルへの引継ぎに熱心な様子だ。
今までトラブル続きで引継ぎどころじゃないからその分を取り戻しているのかもしれない。
家庭教師については有難いことに次が決まりそうだ。
レインの紹介だが昔彼女を教えていた女性らしい。
レオの新しい側付きメイドについてある理由からレインに相談した際、家庭教師についても助けて貰えることになったのだ。
「少し厳しい人ではあるけど教え方は上手いし理不尽な人では無いから」
レインを介し手紙を頂いたが、確かに彼女の申告通り筋が通りしっかりした教師だと感じた。
子供たちに会わせて相性が良さそうなら採用させて頂きたいと返事をした。
レオはマレーナから離してからずっと大人しい。
カーヴェルが元気になって喜んでいたけれど、前のように彼を独占しようとはしなくなった。
それが反省から来るものだけ出ないのはわかる。
マレーナとリーネ二人の側付きメイドを解雇した為、一時的にエミリエにはレオ付きメイドに戻って貰った。
以前のような癇癪や暴走は無いそうだがぼんやりしていることが多いらしい。
レオにはマレーナを解雇する時に一時間ほど二人で話した。
当然十歳の子供に対し全部を馬鹿正直に伝えられる筈が無い。
なのでマレーナとブライアンは恋人同士で、ブライアンが家令になる為にマレーナと共謀してカーヴェルに薬を飲ませたと説明した。
正直これだけの内容でも生々しくて話して良いか迷った。
マレーナがブライアンと恋人だった部分をまず否定された。
レオがブライアンがマレーナを脅したと主張していたが、寧ろマレーナの方が彼に執着していたことを話した。
生々しい部分は割愛したが、事実なので犯行に符合する部分が多い為最終的に彼は納得した。
その代わり可哀想なぐらい気落ちしていた。
「俺が一番大切だから結婚しないって言ってたの、全部嘘だったのか……」
「レオ君……」
「皆、結婚しなきゃって言ってどんどん辞めてく……ロンの侍女はおばさんになってもずっと一緒なのに」
確かにレオ付きメイドたちはケビンの再婚で相当数退職したと聞く。ケビンの後妻になる目的で送り込まれたからだろう。
マレーナはブライアンと職場不倫していたのと実家にレオを狙うよう命じられていたので辞めなかっただけだ。
(流石にそれは言えないわよね)
マレーナに恋愛的な意味でレオが好意を持っていたかはわからない。ただ彼が孤独を感じているのは私にも分かった。
最終的に優しい性格で結婚を理由に退職しない侍女の雇用を約束して終わった。
「次はちゃんとレオ君の心を大切にしてくれる人を見つけるから」
半信半疑みたいな表情で頷かれたが、私には勝算があった。
実はレインからレオの乳母の話を聞いて以来、彼女への連絡を試みていたのだ。
元乳母はシンシアという名で過去赤ん坊のレオを落としたと冤罪で解雇された。
当然アベニウス公爵家やレオを恨んでいる可能性はあった。
しかしシンシアはレオのことも公爵家のことも恨んでいなかった。少なくとも私にはそう思えた。
『赤子から目を離すなど乳母として失格です。レオ様を前に居眠りした私が悪かったのです』
彼女は解雇されたことが原因とは言わなかったが、現在一人暮らしをしているらしい。
何回か手紙のやり取りをした。レオが健やかに育っているのか気になっているようだ。
私はレオは深い孤独を抱えていると訴え、側付きメイドに問題が有り大量に解雇したことも伝えた。
そして乳母が不当解雇されたことが今でも心の傷になっているらしいことも。
『貴方の目で彼を見て、そして健やかに育つ手伝いをして頂けませんでしょうか』
私はそう返信し、結果彼女をレオ付きの侍女に雇用することに成功した。
あの日レインに届けて貰った手紙はシンシア宛てのものだったのだ。
きっと彼女ならレオの心に空いた不信と孤独を埋める手助けしてくれるだろう。
私はそう願った。
ホルガーからそう事後報告を受けた時に思ったのは「ケビンは使わないのか」だった。
もしかしたら使う分はちゃんと残しているのかもしれないが。
天井を塞ぐ仕事は下男のクレイグがしたとのことだった。
ブライアンが地下牢の見張りにクレイグとアイリを抜擢した時から思っていたが、二人には何か特別な役割があるような気がした。
たとえば普通の使用人には頼めないようなことを依頼したりとか。
(どちらも口が堅く仕事はきっちりこなしそうだからかしら)
公爵邸の暗部について私より多くを知っているかもしれない。
というか私は意図して情報制限されている気がする。
理由は離婚を前提とした短期の結婚だからだ。
そしてホルガーにはケビンの様子や夫婦間の空気などからそれらを察する能力は無いと思うので予めケビンから伝えられている筈だ。
(捨てられるとわかっている公爵夫人相手に礼儀を失しない態度は良いと思うけれど)
普通はそうだろうと思うけれど、この屋敷では普通が通用しないことも私は思い知っていた。
ホルガーは今まで以上にカーヴェルへの引継ぎに熱心な様子だ。
今までトラブル続きで引継ぎどころじゃないからその分を取り戻しているのかもしれない。
家庭教師については有難いことに次が決まりそうだ。
レインの紹介だが昔彼女を教えていた女性らしい。
レオの新しい側付きメイドについてある理由からレインに相談した際、家庭教師についても助けて貰えることになったのだ。
「少し厳しい人ではあるけど教え方は上手いし理不尽な人では無いから」
レインを介し手紙を頂いたが、確かに彼女の申告通り筋が通りしっかりした教師だと感じた。
子供たちに会わせて相性が良さそうなら採用させて頂きたいと返事をした。
レオはマレーナから離してからずっと大人しい。
カーヴェルが元気になって喜んでいたけれど、前のように彼を独占しようとはしなくなった。
それが反省から来るものだけ出ないのはわかる。
マレーナとリーネ二人の側付きメイドを解雇した為、一時的にエミリエにはレオ付きメイドに戻って貰った。
以前のような癇癪や暴走は無いそうだがぼんやりしていることが多いらしい。
レオにはマレーナを解雇する時に一時間ほど二人で話した。
当然十歳の子供に対し全部を馬鹿正直に伝えられる筈が無い。
なのでマレーナとブライアンは恋人同士で、ブライアンが家令になる為にマレーナと共謀してカーヴェルに薬を飲ませたと説明した。
正直これだけの内容でも生々しくて話して良いか迷った。
マレーナがブライアンと恋人だった部分をまず否定された。
レオがブライアンがマレーナを脅したと主張していたが、寧ろマレーナの方が彼に執着していたことを話した。
生々しい部分は割愛したが、事実なので犯行に符合する部分が多い為最終的に彼は納得した。
その代わり可哀想なぐらい気落ちしていた。
「俺が一番大切だから結婚しないって言ってたの、全部嘘だったのか……」
「レオ君……」
「皆、結婚しなきゃって言ってどんどん辞めてく……ロンの侍女はおばさんになってもずっと一緒なのに」
確かにレオ付きメイドたちはケビンの再婚で相当数退職したと聞く。ケビンの後妻になる目的で送り込まれたからだろう。
マレーナはブライアンと職場不倫していたのと実家にレオを狙うよう命じられていたので辞めなかっただけだ。
(流石にそれは言えないわよね)
マレーナに恋愛的な意味でレオが好意を持っていたかはわからない。ただ彼が孤独を感じているのは私にも分かった。
最終的に優しい性格で結婚を理由に退職しない侍女の雇用を約束して終わった。
「次はちゃんとレオ君の心を大切にしてくれる人を見つけるから」
半信半疑みたいな表情で頷かれたが、私には勝算があった。
実はレインからレオの乳母の話を聞いて以来、彼女への連絡を試みていたのだ。
元乳母はシンシアという名で過去赤ん坊のレオを落としたと冤罪で解雇された。
当然アベニウス公爵家やレオを恨んでいる可能性はあった。
しかしシンシアはレオのことも公爵家のことも恨んでいなかった。少なくとも私にはそう思えた。
『赤子から目を離すなど乳母として失格です。レオ様を前に居眠りした私が悪かったのです』
彼女は解雇されたことが原因とは言わなかったが、現在一人暮らしをしているらしい。
何回か手紙のやり取りをした。レオが健やかに育っているのか気になっているようだ。
私はレオは深い孤独を抱えていると訴え、側付きメイドに問題が有り大量に解雇したことも伝えた。
そして乳母が不当解雇されたことが今でも心の傷になっているらしいことも。
『貴方の目で彼を見て、そして健やかに育つ手伝いをして頂けませんでしょうか』
私はそう返信し、結果彼女をレオ付きの侍女に雇用することに成功した。
あの日レインに届けて貰った手紙はシンシア宛てのものだったのだ。
きっと彼女ならレオの心に空いた不信と孤独を埋める手助けしてくれるだろう。
私はそう願った。
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