賭けから始まった偽りの結婚~愛する旦那様を解放したのになぜか辺境まで押しかけて来て愛息子ごと溺愛されてます~

Tubling@書籍化&コミカライズ

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自分の心

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 「いや~~~レブランドさんが売り子をしてくれるようになって、店の売り上げが凄いのなんの!!」
 「ありがてぇことです!」

 リイザさんとそのご主人のパペットさんが喜びを爆発する。
 彼がこの村に留まって7日が過ぎた。
 店じまいをした後に皆で晩御飯をいただく事になり、食事をいただきながら色々なお話をしていたのだ。

 「いや、タダで住まわせてもらうわけにはいかない。少しでも貢献出来ていたなら良かったが」
 「貢献なんてもんじゃありませんよ!一か月分くらいの売り上げですよ~~さすが騎士様!」
 「騎士は関係ないだろ!」
 「あははっ」

 リイザさんの言葉にラルフがツッコみ、笑いが起きる。
 レブランド様がいるのに、こんなに穏やかな日常を送れるなんて少し前は想像もしていなかった。
 彼が店頭に立って売り子をしているというのも、正直出来るとは思っていなかったのだ。
 
 「きしさま、しゅごい!」
 「レビーでいいぞ」
 「レビィ?」
 「ああ、君には特別に愛称で呼んでもらいたい」
 「あい!レビィ!」
 
 愛称で呼ばれたレブランド様はとても嬉しそうに微笑み、宝物を見つめるような視線を送っている。
 アルジェールが可愛くて仕方ないのね。
 息子を受け入れてくれて嬉しい。
 でもその反面、二人の距離が近づく事に胸がざわざわしてしまう……親子なのだからいい事なのに。

 「そろそろ自宅へ戻りましょうか、アル」
 「あーい!」
 
 パン屋のご夫婦に食事のお礼を告げ、可愛い返事をしてくれた息子と共に帰宅の途に着いた。
 毎日の事ながら、今日も今日とてレブランド様とラルフが送ってくれている。
 
 「二人とも、いつも悪いわ。近いのだから大丈夫なのに」
 「そういうわけにもいかないよ」
 「そうだ、何かあっても小さな子供連れだと逃げられないだろう」
 「何もないのに」
 「「そんな事はない」」

 二人で声を揃えて返されると、さすがに反論する事は出来ない。

 「なかよしね~~」
 「「仲良しではない」」
 「きゃははっ」

 アルジェールはこの状況を完全に楽しんでいる。
 そして今日も「大好きなきしさま」の腕に抱かれながら、楽しそうにお話していた。
 どこからどう見ても親子の二人。

 「羨ましい?」
 「え?」

 突然ラルフに聞かれ、目を丸くしてしまう。
 二人が羨ましい?私が?

 「どうして……」
 「ずっとそんな目をしているから」

 他の人にはそんな風に見えているなんて、思ってもみなかった。
 羨ましいのかしら……でも何に対してなのか、自分でも自分の気持ちがよく分からない。

 「あの人凄いよね、見た目もだけど精神的にもタフだし。公爵が平民の仕事をするなんて、よほどの覚悟がないと出来ないよ」
 「それはアルジェールがいるから……」
 「アルジェールだけかな。そうは見えないけど」

 ラルフは事情を知らないからそう思うだけ。
 口をついてしまいそうなのを必死で飲み込む。

 「私は息子と二人で生きていけたらそれでいいの。それ以外は望んでいないわ」
 「そっか……その中に俺は入れてもらえない?」
 「え?」
 「考えといて」

 そう言って私の頭をぐしゃぐしゃにするラルフは少し頬を染めているように見えて、その言葉が冗談にも思えず、私の顔にも熱が集まってくる。
 それはつまり……胸がドキドキしながらも、あの人の顔がチラリと頭に浮かんでは消える。
 いつまでも過去の美しい思い出を宝物のように思っていても仕方ないと頭では分かっているのに、なかなか消えてくれない。
 レブランド様がジグマリンに帰ればこの想いも消えていくのかもしれないけれど――――

 「私の妻に触っていいと許可した覚えはない」

 突然レブランド様が目の前に現れ、私の頭を撫でるラルフの腕を掴んでいた。
 考え事をしていて気付かなかったわ……!

 「妻に逃げられたくせにまだ夫婦だと思ってるのか?」
 「なんだと?」
 「カタリナは帰らないと言っている。それに今しがた彼女に俺の気持ちを伝えた。ここに留まっても無駄だよ、騎士様」
 「カタリナ……!」

 レブランド様がこちらをジッと見つめている。
 私はどう答えていいか思案していると、アルジェールがまた間に入ってくれたのだった。

 「めっ!!なかよしじゃないとめっ、よ~」
 「アル……そうね。こんな話、道端でするものでもないわ。とにかく帰りましょう」

 二人はまだにらみ合っていたけれど、アルジェールの寝る時間も近かった為、とにかく帰宅する事にした。
 息子の寝顔を見ながら今日の出来事を反芻する。
 ラルフの言葉……嬉しかったけれど、彼に対しては親愛でそれ以上の気持ちを持ってはいなかった。
 ラルフの腕を掴むレブランド様はまるで嫉妬しているようにも見えたけれど、きっと私の未練がそう見せているだけかもしれない。
 でもこのまま一緒に居続けたら、だんだんと期待してしまう自分が出てきそうで怖い。
 早めに村を出てくれればいいのに――――
 
 私の想いに反してレブランド様はこの村に留まり続けた。
 そして半月が経った頃、アルジェールが高熱を出したので店を休ませてもらい、看病する事になったのだけど……。

 「レブランド様、私が彼についておりますのでお店にお戻りください」
 「いや、息子の危機だ。店にいる場合ではない」
 
 自宅に突然やってきたレブランド様は、頑としてここに留まると言い、一日中彼と過ごす事になってしまったのである。
 
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