【完結】ままならぬ僕らのアオハルは。~嫌われていると思っていた幼馴染の不器用な執着愛は、ほんのり苦くて極上に甘い~

Tubling@書籍化&コミカライズ決定

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変わらない幼馴染に拗れた想いが溢れて ~結人Side~

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 ある程度の成績をおさめていた俺は、余裕で県でもトップの進学校への進学が決まった。

 成績さえおさめていれば親父に文句を言われる筋合いなどない。

 すぐにバイトを始め、髪の色は金髪に変え、夜はクラブに遊びに行ったり、とにかく家には寄り付かなくなっていた。

 クラブのお金は毎回駆流もち。

 アイツも退屈な日常にうんざりしていたから、二人で夜に出歩くことが増えた。

 そうして父親とはますます距離が出来ていたが、もはやそんな事はどうでも良く、勝手に家族ごっこしていればいいぐらいにしか思わなくなる。

 高校に入学し、初めて学食で昼飯を食べていた時の事。

 駆流も入れた不良仲間と騒いでいると、隣りのチビが突然話しかけてきたのだった。
 

 「結人?……お前、結人なのか?」
 

 その声は小学校時代とは少し変わっていたけれど、俺にとっては甘い蜜のようで、今となっては苦味を帯びていて……一瞬で昔へ引き戻されてしまう声だった。

 違う、こんなところにいるはずがない。

 でもこの声は、確かにアイツの声――――
 

 「あ゙?」


 強がりとも思える悪態をつきながら振り返ると、そこには一番会いたくて会いたくなかった人物が座っていたのだった。

 でも昔と違うのは分厚いびんぞこ眼鏡をかけ、前髪も目深に切り揃えていたところだ。

 なんだ、この見た目は?

 亮の目は誰よりも美しく、周りの人間を一瞬で魅了する。

 小学校時代はクラスの中心で明るく、その笑顔は人を惹き付けてやまない、そんな人物だったはずだ。

 俺の目の前にいるのは確かに亮のはずなのに……幼馴染に再会した事よりも、どうしてこんな見た目をしているのかが気になって、今にも問いただしたくなってくる。
 
 そんな自分の気持ちをグッと堪え、知らない人物のフリをしてやり過ごす事にした。

 第一、もうコイツとは関わりたくはない。

 亮にとって自分が必要ないように、俺にとっても必要ない人間にしていかなければ。そう思うのに――

 
 「亮~~お待たせ!遅くなってごめん!やっと戻れたー」

 「雫、大変だったな。時間もないし、早く食べてしまおう」

 
 亮……雫……すでに名前呼びする友人が出来ているのを目の当たりにして、酷く落ち込む自分がいる。

 2人の会話を聞きたくなくて、直ぐに席を立ち、その場をあとにした。

 アイツにとってただの友人の一人だった、そんな事を未だに気にする自分が腹立たしい。

 自分に近付くなと牽制しなくては。

 何も知らないくせに。

 俺がどんな気持ちをお前に抱いているのかも、俺の家の事情も、どれほどそばにいてほしかったかも。

 なのに今さら俺に関わろうと必死になる幼馴染に、ムキになってしまったのだった。
 

 「絶対学校でも声かけるからな!」

 「っの、バカが!!」
 

 亮の細い腕を壁に押し付けると、眼鏡が地面に転がり、懐かしい素顔が露わになる。

 その素顔はあの時のまま……
 
 いや、昔以上に磨きがかかっていて、吸い込まれるような瞳に釘付けになってしまう。

 あ――俺の今までの悩みなんてコイツと会えば一瞬で吹っ飛んでしまうんだな……コイツはその威力をまるで分かっていない。

 なんでこの瞳を隠しているのかは分からないが、1つ言えるのは眼鏡をしていた方がいいかもしれないという事だ。

 こんな昔よりも一層美しくなった素顔を晒したら……学食の時のように、コイツに色んな人間が声をかける光景を見なくてはいけなくなる。

 
 「お前は、二度と眼鏡を落とすんじゃねぇぞ。学校でも外すな、分かったな!」

 「え……う、うん。もちろんそのつもりだけど」

 「チッ」


 完全に俺の独占欲をぶつけただけだった。

 でも亮はほんのり頬を赤らめ、大きな目をパチパチと瞬きをしながら不思議そうな表情をしている。

 
 …………その仕草が、もう、本当に、ヤバい。

 
 成長して体が大きくなったからか、小学生の時とは違う色気が出ている。

 唇も触れられる距離にある……手を伸ばしてしまいそうな自分を必死で抑え、誤魔化すために悪態をつくので精一杯だった。

 未だに未練タラタラな自分が嫌になってくる。

 せっかくコイツへの気持ちを振り切ったと思っていたのに――――なんでお前は俺を追って同じ高校に来たんだ。

 近づいてはいけないと思いつつ、その後も学校では事ある毎に幼馴染の眼鏡が外れそうになると駆けつけ、ご丁寧に眼鏡をかけ直している自分がいた。


 俺はどうしたいんだ。


 そんな自分に自問自答していた放課後、なぜか玄関口で幼馴染と雫とかいう友人がイチャついている姿を見てしまうのだった。

 俺には見せないとびきりの笑顔――――眼鏡をしていても顔がほころんでいるのが分かる。

 亮に対して反発しつつ、胸の中は独占欲が渦巻いていた。

 イライラはついに限界に達し、矛先は幼馴染へと暴走していく。

 酷い言葉を放ち、追いすがる亮の腕を振り払い、その場をあとにする。

 アイツに触れられた箇所が熱い。

 そんな無防備に俺に触れるな……何も分かっていない幼馴染は昔のような感覚で触れてくるけれど、俺の中ではもう昔のように無邪気に触れ合う事は出来ないのだ。

 無自覚に近付かれると、アイツの華奢な腕を絡め取り、無邪気に声をかけてくる唇を俺の唇で塞ぎ、めちゃくちゃにしたくなってしまう。

 体型もあの頃とは真逆で、それが出来てしまいそうだから、自分の中で溜まっていく欲望を抑えるので必死だった。

 こんな感情を持っているなんて、絶対に知られるわけにはいかない。


 「結人~~待てよ~~~」

 「………………」


 遠くから駆流の声が聞こえてきたので少し頭が冷えてきた。

 コイツと話すとなぜか冷静になってくる自分がいて、割とありがたい存在でもある。

 きっと駆流は俺と同じで、他人に興味がない。

 俺以上に興味が無さそうなので、一緒にいて楽なのかもしれない……変な慰めや余計な事を言ってくる事もないから。

 でもなぜかこの時は亮について、聞きたくもない情報をしつこく聞かせてくる。


 「結人が去ったあと大変だったんだよ~~亮クンが泣いちゃってさー」

 「………………」

 「雫クンって子が慰めてたなぁ。背中さすってあげたりして」

 「………………」

 「僕も一緒に慰めてあげたくなったよ。亮くんって結人が前に言ってた大切な子でしょ?」

 「………………何が言いたい」

 「やだなぁ、僕は面白い事が好きなだけさ」


 俺は駆流の表情を見て溜息を1つ吐いた。

 そうだ、コイツはこういうヤツだった――――他人に興味がないからこそ人が苦しんでいたり悩んでいると楽しくなってしまう性格。

 外から傍観し、見て楽しむ。

 俺がコイツの家に入り浸っていた時も楽しそうだった事を思い出す。

 まぁそれでも家庭の事情などをどうにかしようとはしてこなかったので、それなりに居心地は良かったが……アイツとの事で何かしようとするなら話は変わってくる。


 「お前がそういう事を面白がる性格なのは分かってるが、アイツに何かしようとしたらタダじゃおかねー……」

 「おぉこわっ!僕が結人とまともにやり合うわけないじゃーん!そんなに睨まないでよ~~」

 「…………チッ」


 亮とは関わりたくないし、アイツをどうこうしようとは考えていない……俺と関わって危険な目に遭わせたいわけでもない。

 俺が亮の近くにいると駆流がアイツにちょっかい出しそうだな。

 長年つるんでいてものらりくらりしているコイツの行動は予測つかないし、もしかしたら男も範疇なのかもしれない。

 ひとまずバイトを沢山入れて、学校に行く頻度を減らせば亮とも会わなくて済むし、駆流も落ち着いてくるだろうと考える。

 しかしこの安易な考えが亮を危険な目に遭わせるなんて、この時の俺は予想もしていなかったのだった。

 
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