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このドキドキの正体は?
しおりを挟む結人に拒絶されてから一週間。
あの日からまったく彼には会っていない。
学食に行っても顔を合わせないし、廊下ですれ違う事もない……不良グループの中にもいないのを見て、学校にも来ていないのかもと考えた。
遠くからチラチラ見ていても埒が明かないので、思い切って6組へと行く事を決意する。
「亮が行くなら俺も付いて行くよ。6組はガラ悪いの多いし」
「宝森が行くなら俺も行く」
「雫……真司まで。ありがとう」
僕は2人に感謝の気持ちを述べる。
単純に気遣いがとても嬉しかったのだ。
「ん、気にするな」
名前を呼ぶような仲になってしみじみ感じるようになったのは、真司は本当に優しいヤツだという事。
話し方はぶっきらぼうだけれど、いつも気遣ってくれているのが分かる。
何となく結人に似ているかもしれない。
「お前さ~~亮の事は名前呼びで俺の事は雫って呼んでくれないわけ?」
「宝森は宝森」
真司にクレームを入れるけれどあっさり流され、ガックリうなだれる雫が面白くて、思わずクスッと笑ってしまう。
独りじゃないって事が嬉しいなぁ。
何とか勇気を奮い立たせ、3人で6組へと向かったのだった。
普段交流する事が滅多にないクラスへ行くという事もあり、ドキドキしながら顔を覗かせると、入口付近にあまり会いたくない人が座っていた。
結人の仲間でいつも一緒にいる駆流という人だ。
眼鏡越しだけれどバッチリ視線が合い、突然顔を出した僕に向こうも驚いてビクッとする。
「ぉわっ!ビックリさせないでよ~~」
「ご、ごめん」
「なに?結人を探しに来た?」
「うん、最近姿が見ないから休んでいるのかなって聞きにきたんだ」
「ふ――ん」
『結人には気を付けた方がいいよ』
あれはどういう意味で言ったんだろうか?まだそれほど会話をした事もないので、聞くに聞けずにいる。
僕の行動に意味深な目をしながらジッとこちらを見てくるので、眼鏡をしていてもその視線に耐えられなくなり、思わず視線を逸らす。
そんな僕の様子を見ていた雫が、後ろから助け舟を出してくれたのだった。
「ねぇ、亮を揶揄ってないで、結人って人が休んでるのかどうかだけ教えてよ」
「やだな~~揶揄ってるだなんて人聞き悪いんだから。なんで君たちはこの子の為にそこまでするの?」
「? 友達だからだろ」
「? 友達ってだけで?」
「それだけじゃない。亮は推しだからな!推しの幸せを全力で後押しするのは当たり前だ」
「そ、そう」
ふんすと鼻息を荒くしながら得意げに言い返す雫に、結人の友達の駆流クンはちょっと引き気味の反応だった。
なんだか2人の会話が噛み合ってない感じがする……止めるべきか迷い、真司の方をチラリと見ると、なぜだかニコリと笑顔を向けられてしまう。
つられて笑顔を返す僕。
「ちょっとそこ~~何イチャコラしてんの?結人が見たら怒りそうだから」
「え、なんで?!」
駆流クンの言葉につい反応してしまう。
イチャコラしてないけど、してたら結人が怒るってどういうこと?
僕の頭に疑問符が並んでいたところに、結人の情報が入ってきたので、この話題については流されてしまったのだった。
「結人は今日も休み。でもバイトには行ってるみたいだし、そのうち来ると思うよ?」
「そうなんだ。バイト……バイト?!」
バイトをしているという事を初めて知った僕は、思わず食いついた。
「知らなかったの?」
「うん……」
「じゃあさ、顔見に行ってみたら?」
駆流クンの提案に迷惑をかけたらどうしようと思いつつ、働いてる姿を見てみたい好奇心の方が勝り、放課後に行ってみる事にしたのだった。
~・~・~・~・~
「あの――どうしてあなたも?」
「あなたも、だなんて他人行儀だな~~駆流って呼んでよ。亮クン」
結人のバイト先が割と高校に近いコンビニだという事を教えてくれた駆流クンは、何故だか一緒に行きたいと言い出したのだ。
駆流クンの言葉に一緒に来ていた雫が「気持ちわるっ!」と思いっきりツッコんだ。
真司も部活が休みなので一緒に来てくれている。
そして今はバイト先に着き、道路を挟んで向かいの建物からこっそり幼馴染の働く様子を覗き見ながら会話をしている状況だ。
ほとんど話した事もない違うクラスの人に突然名前呼びをお願いされ、困惑した僕は、クン付けで呼ぶのが精一杯だった。
「え……っと、駆流クン?」
「もう~~せっかく結人のバイト先教えてあげたのに、つれないなぁ」
どうにも駆流クンとの距離感がつかめない……気を取り直して結人の様子に目を向けると、コンビニの制服を着ながら髪の長い部分をところどころ留め、仕事に励んでいた。
背も高くて制服も似合ってるし、カッコいいな……女性からモテそう。
テキパキ仕事する姿を初めて見て、何だか動悸が早くなってる気がする。
昔は僕の後ろを歩いて内気な結人だった……昔は昔でとても可愛かったんだよな。
それに裕福ではないにしてもお金に困っている家でもないと思うのに、バイトしてるという事にも驚きを隠せない。
中学三年間会わなかった間に、彼を取り巻く環境が驚くほど変わっていて、何も知らない自分に寂しさと後ろめたさを感じてしまう。
”中学受験”
この選択をした事を後悔はしていない。
『夢を叶える為の亮の覚悟を見せてもらう』
という母さんとの約束だったから、受験勉強も頑張ったし、中学校でいじめられて学校に通うのが辛くても頑張った。
母さんも親友を亡くし、その為に息子の僕が医療の道に進みたいと言い出したから、いばらの道に進もうとする僕の覚悟を感じたかったのかもしれない。
この話は結人にするつもりはないけれど、昔のようにとは言わなくとも、何とか距離を縮められたらなぁ。
「結人のこと考えてるよね?」
「え?!いや、その……」
「亮クンって、結人のこと好き過ぎ」
「「?!」」
突然駆流クンに恥ずかしいことを言われ、顔に熱が集まり固まってしまう。
そりゃ好きだから昔みたいに話せたらなとは思ってるけど、あくまで友達としてだし、友達のことを好きだとかそうじゃないとか考えたことがなくて動揺してしまう。
言葉を返せずにいる僕の後ろから真司の腕が伸びてきて、目隠しされるかのように彼の腕の中におさまったのだった。
「真司?」
「亮、そろそろ帰ろう。遅くなるし」
「え、でも……」
もう少し結人の姿を見ていたい、あわよくば客としてコンビニの中に入ってみたい。
そう思っていたけれど、雫が乙春2のイベントが始まると騒ぎ始めたので帰ろうという流れになった。
乙女ゲームは大好きだし僕もイベントは楽しみにしていた……でも今日は乙女ゲームどころじゃなくて、そんな自分の気持ちに戸惑いつつも(明日は学校で会えるといいな……)と思いながら皆と帰途に着いたのだった。
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