【完結】ままならぬ僕らのアオハルは。~嫌われていると思っていた幼馴染の不器用な執着愛は、ほんのり苦くて極上に甘い~

Tubling@書籍化&コミカライズ決定

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路上で思いがけず素顔が解禁

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 翌日、その次の日も結人は学校へは来ていなかった。

 仲良くなりたいという焦りというより、彼と話せない事の方が寂しいと思う自分がいる。

 一日一回は姿が見たいと思うし、今は全く姿すら見られないので毎日登校しているかを探してしまう。
 
 中学時代はまったく顔を見られない生活を送っていたのが嘘のようだ。

 今日も今日とて結人がバイトする姿を向かいのビルの陰からこっそり見守る日々だった。


 「ねぇ~~もう店の中に入ろうよ」
 

 僕と一緒に来た駆流クンが、しびれを切らしたように声をかけてくる。

 雫は塾だし、真司は部活なのでここには駆流クンと僕しかいない。


 「でも仕事の邪魔をするのは嫌だから」

 「も~~そんなの気にして声かけないとか信じられない!学校では構わず声かけてくるじゃん」

 「学校とバイトは違うよ!」

 「はいはい、じゃあ行こうね~~」

 「え? えぇ?!」

 
 駆流クンが僕の腕をガッチリ掴んで引っ張りながら、結人のバイト先へと向かっていく。

 腕の力が強い……振りほどけない……!

 結局連れて行かれるままコンビニの前に着いてしまう。


 「来ちゃった……どうしようっ!入っていいの?!」

 「普通に客として入ればいいじゃん。ほら、行こう」


 引っ張られるまま中へ入ると、レジ近くの陳列棚で品出しをしている結人の後ろ姿が目に入ってくる。


 「ぃらっしゃいま――っ?!なっ、お前ら……!!」

 「やほ~~元気そうじゃん」

 「お、お疲れ様、結人」


 駆流クンではなく僕の登場に心底驚いている結人の顔を見ると、なんだか申し訳ない気持ちになってしまう。
 
 それと同時にコンビニの制服姿を間近で見る事が出来て、喜んでいる自分がいた。

 体格も大きいし、仕事する姿ってやっぱりカッコいいな。

 大人な感じがする。

 自分の幼馴染が誰よりもカッコいい気がして、誇らしい気持ちになった。


 「結人が全然学校来ないから、君の為に(愛しの)亮クン連れて来てきてあげたんだよ~~」

 「おい!!」


 駆流クンが結人のために僕を連れて来たとかよく分からない事を言っている。

 僕が見たかったから来たはずなんだけど……そしてなんだか結人と駆流クンのやり取りが、雲行きが怪しくなってきたような気がする。

 このまま喧嘩になったらどうしよう。

 僕はピリピリした空気を何とかする為に、この場を一旦辞する事を決めて結人に声をかけたのだった。
 

 「ねぇ、バイト何時まで?」
 
 「あ゙?……もうすぐ終わる」
 
 「じゃあ、一緒に帰ろうよ。家も近いんだし」

 
 僕の提案に駆流クンも同意してくれる。


 「それいいね!僕も一緒に帰ろう~~じゃあ裏で待ってるね」

 「ちょ……っお前ら……!」

 「じゃね~~」


 駆流クンは有無を言わさない様子で僕の腕を引き、店の中から出ていったのだった。

 ふり返ると、結人はこちらを睨みながら立ち尽くしている。


 「同意を得ないで勝手に出てきて大丈夫だったかな」

 「固いな~~大丈夫だよ。どうせ嬉しいんだから」

 「……そうなの?」

 「分かってないなぁ。とにかく裏の従業員出入口で待ってよう」


 なぜ嬉しいのかは分からなかったけれど、迷惑じゃないならいいか、とホッと胸を撫でおろす。

 ひとまず駆流クンの言葉に頷き、バイト終わりまで2人で待つ事にしたのだった。


 ~・~・~・~・~


 「お疲れ様!」

 「…………チッ」


 バイトが終わった結人が従業員出入口から出てきたので言葉をかけると、こちらに目もくれず舌打ちされてしまう。
 

 「結人~~そんな態度ばかりしてると、嫌われちゃうよ?」

 「ぅるせーな、だいたいお前がっ!」


 僕の目の前で、またしても2人が言い合いを初めてしまったのだった。

 でもなんとなく2人はこういうやり取りが慣れている感じに見える。

 いつもの2人って感じで……瞬間、何だか胸がモヤッとしたような気がした。

 なんだろう、結人にも仲の良い友人の一人や二人はいるだろうし、当たり前のことだ。

 でも何となく見ていたくなくて、咄嗟に結人の服を掴む。


 「…………? なんだよ」

 「あ、ごめん!もうすぐ日も落ちちゃうし、そろそろ帰ろう」

 「そだね~~夜は危険だからね」

 「…………帰るぞ」

 「うん!」


 学校以外で一緒にいられる事が嬉しくて、その時は相当浮かれていたのだと思う。

 3人で並んで歩いていたら、一番端を歩いていた僕は前から歩いて来た人にぶつかってしまったのだった。


 ――――ドンッ――――

 「いたっ」

 「……ってぇ」


 ぶつかった相手を見上げると、190cmはありそうな大柄な男性で、一緒にいる仲間も皆ガタイが良く、正直、やってしまったと思った。

 あちこちにタトゥーが彫られているし、見るからに関わっちゃいけない人達だ。

 物凄い形相で睨まれているので、とにかく頭を下げる。


 「すみません!」

 「ああ゙?!」


 ひぇ~~めちゃくちゃ怒ってる!!

 どうしよう……自分のせいで結人や駆流クンに迷惑をかけてしまうかもしれないという事に、焦りと申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

 そんな僕の気持ちをよそに、ガラの悪い人達の一人が突然結人や駆流クンの名前を口にしたのだった。


 「結人に駆流じゃねーか!こんなとこで会うとはな」

 「あ゙――……」

 「これからクラブ行くけどお前もどうだ?」


 え……お友達なの?

 下げていた頭を上げると、ぶつかった人達と結人たちが仲良さげに話している姿が目に入ってくる。

 こんな怖い人とも友達なんだ……顔が広いんだな。

 迷惑かけなくて良かったとホッとする気持ちの反面、とても遠い世界の人間に見えてしまうのだった。

 彼らは僕には全く分からない話をし始め、ぼーっと眺めているしかなかった。

 僕が会わなかった中学生時代、結人にどんな交友関係があるのかなんて分からないから仕方ないんだろうけど、凄く寂しく感じるものだな。

 そして彼らの中にいる一人の女性が結人の腕に自分の腕を絡ませていて、なんだかイケナイものを見ているような気がしてしまう。

 また胸がモヤモヤしてきた。

 こんなにカッコいいんだからモテるよね。

 僕はこの中には入っていけない……邪魔にならない内に帰ろうと考え、そっと彼らから離れようとした瞬間、制服の襟ぐりを掴まれて引っ張られ、そのまま持ち上げられてしまう。


 「うっ……ぐぁ……っ」

 「おいおいおい、どこ行こうとしちゃってるわけ?オレにぶつかっておきながら」

 「亮!!」「亮クン!!」


 僕を持ち上げているのは、ぶつかった男性だ……掴まれた首が苦しくて、息が吸えない。

 遠くで結人と駆流クンが何か言ってる気がする…………結人の腕に絡みついてた女性が僕を見て笑ってる――――なんでこんな目に遭ってるんだっけ――――

 だんだん意識が遠くなってきた気がした瞬間。

 僕の体は地面に放り出されたのだった。

 しかし、なぜか地面に激突する事はなく、誰かが受け止めてくれたおかげで地面に激突しなくて済んだようだ。


 「駆流クン……」

 「ちょっと~~~~僕たちの友達傷つけないでくれない?!!」

 「亮!!大丈夫か?!」


 少し地面に顔を擦り、頬がヒリヒリする……衝撃で眼鏡が吹っ飛んでしまった為、あまり周りもよく見えない。
 
 でも二人が駆け付けてくれて、彼らの優しさに胸がじんわり温かくなった。


 「クソがッ!!」

 「だめ!!!」

 
 結人が殴りかかりそうな雰囲気だったので、咄嗟に腕を掴んで止めた。


 「…………ッ!」

 「大丈夫だから」

 
 僕の腕を振り払ってしまいそうな勢いだったけれど、意外にも結人は思い止まってくれたので、僕はなんとか体を起こし、ぶつかってしまった相手へと向かっていった。

 あれ、そういえば眼鏡を拾っていないんだった。

 でも視界がボヤけているおかげで、あまり怖くないぞ。

 とにかく皆に迷惑をかけたくなかったので、その相手と思われる人物の手を握り、笑顔で謝罪をしたのだった。


 「すみません、ワザとじゃないんですけど痛かったですよね。並んで歩かないように気を付けます。結人と駆流クンは悪くないので」


 僕がそう言うと、相手の人からは随分動揺したような言葉が返ってきた。


 「え、あ……あの…………こちらもすみませんでしたッ!!!」

 「?!」


 どうして向こうが謝っているんだろう?

 ちょっと顔が赤いような……?

 でもこれで大丈夫そうだなと思った僕は、「こちらこそ!」と握った手を振り、笑顔で応えたのだった。

 ひとしきり挨拶が終わったので、結人のお友達はそのまま皆去っていったようだ。


 「結人も駆流クンも迷惑かけてごめんね。僕の為にお友達と仲悪くなったらごめん……」


 ぼんやりとした視界の中、2人の顔を見ながら謝る事しか出来なかった。


 「気にするな」

 「全然大丈夫~~特に友達でもないし」

 「そうなの?」

 「うん。クラブでちょっと話したことある程度だよ。それにしても……亮クン美人さん~~~~素顔がこんなに可愛いなんて知らなかった!!」


 駆流クンは僕の両頬を手で挟みながら、今まで言われた事のない言葉を並べてくる。

 美人?可愛い??


 「あいつらも動揺してたね~~凄い威力!可愛い!!」


 え、そうなの?

 なんで謝ってくるのかなって思っていたら……僕の顔?

 僕の頬を両手で挟みながらグリグリしてくる駆流クンに、結人がなぜだか辛辣な言葉を投げかける。
 

 「おい、触るな!菌がうつる」

 「ちょっと、ひっど~~菌扱い反対!」

 「あははっ」


 2人のやり取りに、思わず声を上げて笑ってしまうのだった。

 さっきまでの緊張した状況がウソみたいで、心からホッとする。
 
 そして眼鏡がないのでボヤける視界の中探そうとしたところ、どこからともなく結人が眼鏡を渡してくれたのだった。


 「ほら」

 「あちゃ~~これじゃあ眼鏡かけられないんじゃない?」


 駆流クンの言う通り、眼鏡はレンズも割れ、フレームも歪んでしまっている。

 
 「……ホントだ。でもなんとかこうすれば……」


 ほんの少し歪みを改善させ、かけて帰るくらいは出来そうだった。

 あまり視界はよろしくないけど……それに買い替え決定だし、母さんに怒られそうだ。

 どうしよう。


 「ん」

 「え?」


 突然結人が地面にしゃがみ、こちらに背を向けていたのだ。これは――――


 「おんぶ?」

 「さっき首が思い切り締められてたし、頭が揺さぶられただろ。頭は危険だからな」

 「おぶってもらった方がいいよ~~まだちょっとフラついてるんじゃない?」


 そう言われてみれば……頭がズキズキしているのを今さら自覚する。

 彼をおぶったことはあるけど、逆は初めてだ。
 
 心臓が尋常じゃないくらい脈打ってる。

 ちょっと恥ずかしい気持ちを抑えつつ結人のお言葉に甘え、駅に着くまで彼の背におぶってもらうことにしたのだった。

 
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