【完結】ままならぬ僕らのアオハルは。~嫌われていると思っていた幼馴染の不器用な執着愛は、ほんのり苦くて極上に甘い~

Tubling@書籍化&コミカライズ決定

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可愛いがすぎる ~結人Side~

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 路上での事件があった翌日、登校した後、亮のクラスに顔を出した。

 昨日の今日で登校しているかは分からなかったけど、頭が揺さぶられていたし足の痛みとかが気になったからだ。

 足を引きずっていたからな……守ってやれなかった事は今でも俺の胸に暗い影を落としていた。

 もうあんな事は起こさせねぇ……昨日おんぶした幼馴染は驚くほど細くて小さく感じ、酷く心もとなく感じたのだ。

 俺は、中学生の時にアイツが自分から離れていった事にいじけまくり、家の前で号泣する亮を見かけていたのに、変に拗らせていたせいで声をかける事もしなかった。

 連絡手段はいくらでもあったのに。

 そしてそのまま距離をおいて、再会しても冷たい態度をぶつけ――――俺って最低じゃね?

 ただでさえ小さい頃から亮に頼りっぱなし、助けられっぱなしだったのに。

 アイツが一番辛い時に離れていって…………どう考えても俺が悪い。

 自分がした事の罪深さにガックリと項垂れてしまう。

 よくこんな自分を追いかけて同じ高校に来てくれたな。

 でもそう思うと、スゲー嬉しい……喜んじゃいけないのに、顔が緩んじまう。

 なんであの時に亮が泣いていたのか、その理由は分からないけど、もうあんな風に泣かせたりしない。

 これから先、亮は俺が守る。

 胸に固い決意をしながら亮の教室へ行くと、すでに宝森が来ていたのか、2人で楽しそうに話している声が聞こえてきたのだった。

 
 「次は俺が守るからな!」

 「それは必要ねぇな」

 
 それはこれから俺の役目だ。

 宝森は亮を”推し”だと言っているし、亮に対して俺と同じ気持ちには見えないが、コイツを守るのは俺だ。


 「え、結人?!どうしてウチのクラスに?」

 「ん、昨日痛めたところ大丈夫かなって。違う眼鏡かけてるな」
 

 眼鏡越しだが大きな目を見開いているに違いない。

 驚く顔が可愛すぎるな……亮の白い肌がほんのり赤くなっているので、柔らかい頬をそっと触る。
 

 「うん、母さんが新しいの出来るまで古いの使えって。そういや晩御飯に誘えって言われちゃった」


 ”言われちゃった”

 小学生の時のままの話し方に可愛いが過ぎる。

 ここで断ればまた肩を落として落ち込んでしまうだろう……自分でもどうやって冷たくしていたのか分からないくらい、もうそんな姿は見たくないと思う。

 今日はバイトもないし、今日でもいいと言うと、


 「本当?!じゃあ今日一緒に帰ろう」


 嬉しそうに顔を紅潮させる幼馴染の顔に見惚れていた俺は、どうやって教室へ戻ったのか、気付けば自分の席に着いていたのだった。

 その日の帰り道――――


 「んふふっ」

 「なんだよ。気持ち悪ぃぞ(可愛すぎるから止めろ)」

 「なんでもいいんだ。今日も一緒に帰れるなんて思ってなかったから、嬉しくて」


 隣でニコニコしている幼馴染がピュアすぎて辛い……いきなりデレるのも自分が気持ち悪い感じがして、まだ悪態をついてしまう時がある。

 でもだんだんと自然と話せるようになってきていたので、ここぞとばかりに一緒に帰る約束を取り付ける。
 
 
 「バイトない日だったら、一緒に帰ってもいいぜ」

 「え!本当?!」


 嬉しそうに俺の手を握ってくる幼馴染。

 ダメだ、危険だ……このまま触れていたら腕を引き寄せて抱きしめてしまいかねない。
 

 「わ、分かった……分かったから手を離せ……」


 俺の言葉に渋々手を離す亮に、天然は怖いと思ったのだった。

 亮にとって俺は幼馴染で、こんなのは小学生の延長なのだろう……俺だって今はこの気持ちを告げる気はない。

 もっと意識してもらわないと彼を驚かすだけだし、俺としても大事な幼馴染との関係をこれ以上拗らせたくはないという思いがある。

 目の前の可愛い存在に対しての劣情はまだ胸にしまい、亮の自宅で、最近では感じた事のないほどの楽しい晩御飯の時間を過ごした。

 それなのに――――

 高嶺家の皆が俺の親父に挨拶をしたいと言い始めたのだ。

 ここの家の皆は俺にとっても特別な人達で、彼らを親父に……そしてあの女に会わせたくない。

 絶対嫌な思いをさせてしまうに決まってる。

 でもおじさんとおばさんは親父とも昔は交流があったし、結局断り切れなかった俺は、四人で自宅へと向かうことになったのだった。

 インターフォンを鳴らすとあの女の声が聞こえてくる。

 
 『はぁ~い』


 相変わらず気持ち悪ぃ声…………RINEを送っていたので、玄関には皆が揃っていて、親父が高嶺家の皆に挨拶をした横から弟の奏斗が嬉しそうに亮に挨拶をする。

 
 「亮クン、こんばんは!久しぶり~~」

 「奏斗くん!こんばんは!大きくなったね~~」


 そういや奏斗もしばらく亮に会っていなかったか。

 奏斗も昔から亮に懐いていて、おそらく俺と同じ気持ちを抱いているに違いないと思っていたが、中学二年生になり、ませてきた奏斗はさり気なく亮にアピールしていた。


 「亮くんに相応しい男になるんだ」

 
 やっぱりか……。
 
 家は嫌いだが、その中でも奏斗は俺の光でもあった。

 この家で弟と一緒にいる時間だけは自然でいられる。そんな可愛がっていた弟と好きな人が同じというのはすげー複雑だ。


 「おい、奏斗。亮が困ってるだろ」


 それでも2人がくっついているのを見るのは耐え兼ね、引き剥がすと、俺に向かって物凄い勢いでブーブー言ってくる。

 弟も亮も可愛すぎて、可愛いが渋滞してるな……なんなんだ、これ。

 そんな良い雰囲気をぶち壊すような、あの女の言葉が突如放たれた。


 「あのー……結人くんがいつもお世話になってます。何かご迷惑をおかけしてませんか?」


 親父と再婚した女……コイツの言葉におばさんが俺の事を必死に弁明していく。

 この女が来てから家には俺の居場所はなくなった。

 親父に取り入り、俺の事を悪く言い、わざと俺なしで仲良くする姿を見せつけてきたりする。

 こんな家に少しでも居たくなくて駆流の家にいさせてもらったり、外で時間潰したりしていた中学時代。

 高校生になり、亮と再会しておじさんおばさんとも再会し、昔のようにまたあの頃みたいに戻りたいと思い始めていたが…………おばさんにこんな事言わせて……俺ってダセェな。

 自分が惨めで嫌になる。

 高嶺家の皆にこんなとこ見せたくなかったのに――――
 
 
 「この通り素行が悪くて困っていたので……良かったね、正彦さん!」

 「あ、ああ」

 「このままいい子に育ってくれればいいんですけど。亮くんみたいな子がそばにいてくれたら安心です!」


 再婚女の口が止まらず、サラッと俺をディスっていく。

 もうやめろ……それ以上言わなくてもいいだろ……そろそろ高嶺家の皆を帰そうと思った瞬間。


 「あの!結人は昔から良いヤツですし、今も良いヤツですけど?僕たちの方が結人の事、よく知ってますし、そんな事言わなくても結人はちゃんと出来るヤツです!」


 亮が顔を赤くして反論した。

 普段は人に言い返したりしないのに。

 そして畳みかけるようにおばさんからも反論が放たれる。


 「もし彼の素行が悪くなってしまったのだとしたら、あなた方大人に原因があるのではなくて?加奈の子供を侮辱しないで。今もとても素晴らしい子よ」

 「それは家での彼を知らないからぁ……」

 「だから家が良くないって言ってるんです」


 おばさんがピシャリと言い、再婚女は黙ってしまった。

 俺はずっと自分の味方はどこにもいないと思っていたけど……自分で見ていなかっただけで、こんなに近くにいたんだな。

 泣きたくなる気持ちを堪え、誤魔化すように笑い飛ばした。

 本当に、高嶺家、サイコー…………。


 彼らが帰った後、俺の部屋に突然親父がやって来た。


 「結人、お前の口から聞きたい」

 「……なに」

 「お前と玲奈の間に何があるのか」


 今さらなんなの?

 でも俺の言葉に親父がどう思うのかなんてどうでもよくなっていた俺は、今までの事を務めて機械的に話した。

 親父は俺の話を聞きながらどんどん顔色が悪くなっていく……でもそれすらもどうでもよかった。

 亮が、おばさんが、俺の名誉を守ってくれたから。

 それだけで、これから何があっても耐えられる気がしたんだ。

 全てを話し終えた時、親父の肩はガックリとしていた。

 正直慰める気も起きねーし、さっさと部屋から出ていってほしい、ただそれだけだった。


 「結人…………すまない」


 ポツリと零すように呟いた親父のひと言に対して、俺が何かを返したりはしなかった。

 もっと苦しめばいいと思うし、それで許されたいと思ってるだけだろ、とか思ってしまう。

 あの時、俺の話を聞かずにあの女の味方をしたのは親父で、その後もずっとあの女の言葉だけど聞き、俺と向き合ってこなかった人間に対して何の期待もしていない。

 それでも母さんが亡くなって寂しさを抱えながら、俺たちの面倒を見つつ仕事をしなくてはならなかった親父にとって、あの女が一筋の光だったのだろうなと思ってやる事は出来る。

 だからと言ってすぐに許すとか、そんな話にはならないけど。


 「もう寝るから」


 俺がそう言うと、親父は肩を落としながら部屋を去って行った。

 まだ胸が少し痛む……でももう大丈夫だ。

 その夜、久しぶりに自宅でぐっすり眠る事が出来た。

 何年ぶりだろう――――いつかこんな事も笑い話に出来る日がくるといい。

 そんな事を思いながら大好きな幼馴染のいる学校へと登校したのだった。

 
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