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一口チョコは甘美なお菓子
しおりを挟む中間考査があと数日後に迫り、土曜日も家で黙々と勉強に励んでいた。
雫にテスト勉強の事で連絡を取っていると、彼も明日の勉強会に来たいとRINEがきたのですぐに【OK!】と返した。
結人と駆流クンとの3人はさすがに緊張して、勉強どころじゃなくなるかもしれない。
特に結人と一緒だと、近頃は心臓がうるさくて大変だった。
前はあれほど話したくて仲良くなりたくて仕方なかったのに、今は一緒にいると落ち着かないし、でも一緒にいたいし、自分の気持ちがよく分からない。
とにかく今はそんな事を考えている時期ではないから、色んな事を頭の片隅に追いやり、ノートと教科書に集中する事にした。
でもこの調子でいけばテストも何とか乗り切れそうだ。
僕は医療の道に進むという夢があるので、最低でも学年10番以内は確実に取らないと。
正直10番と言わず5番以内……出来れば1番を取りたい。
一年生の内に僕も塾に通うべきかなぁ。
雫も良い成績取りそうだし、ムクドでの勉強会の結人が凄すぎて彼も上位に食い込んできそうだなと考えていた。
結人と順位争いが出来るのは、とても嬉しい事だ。
だって彼は優秀なはずなんだから……おじさんと再婚した女性が結人を貶めるような事を言った時は本当に腹が立って、思わず言い返してしまったけれど。
あんな人に負けてほしくない。
そんな事を思ってしまう自分も大概性格悪いなと思いつつも、僕たち高嶺家は結人の味方だから仕方ないよね。
勉強の合間に色々と考えていたところに、スマホが振動する音が聞こえる。
電源切るの忘れてた……手を止めて通知を見てみたところ、送り主は結人だった。
【明日何の教科やんの?】
【予定としては数学と英語^^】
【おけ】
その後、可愛らしいスタンプが送られてきて、思わずクスリと笑ってしまう。
小学校卒業したばかりの時は頻繁にやり取りしていたRINEも、だんだんと疎遠になっていった時の事を思い出し、今は自然にやり取りが出来ることが本当に幸せで嬉しい。
僕はスマホを握りしめ、彼とのやり取りにニヤニヤしつつ、そんな自分に活を入れて勉強を進めていったのだった。
~・~・~・~・~
「亮~~お父さんとお出かけしてくるから。オヤツは色々ココに入ってるからお友達きたら盛り付けてね」
「分かった、ありがとう」
「「行ってきます」」
「行ってらっしゃい」
母さんは食器棚の中にお菓子が入ってると教えてくれて、ルンルンと嬉しそうに父さんと出かけて行った。
二人はこの年になっても仲が良く、毎週末二人で出かけている。
僕も昔は一緒に出掛けていたけれど、最近は親と一緒に行動は恥ずかしくて遠慮していた。
お菓子をチェックしているとインターフォンが鳴り、急いで玄関に駆け付ける。
「はーい!」
――ガチャッ――
「やほ~~一緒に来たよん」
「っす」
「亮~~ハヨっす!」
「みんないらっしゃい!どうぞ~」
「「お邪魔しゃす」」
結人と駆流クンの声が重なり、互いに顔を見合わせている。
「ちょっと~~真似しないで」
「俺のセリフだし。真似すんな」
「あはは」
楽しい会話をしながら皆を自室へと連れて行くと、駆流クンと雫が部屋を物色し始めた。
特に見られて困るものもないので放っておいたところ、僕の乙女ゲームのソフトを見つけ、駆流クンが喜々として語り始めたのだった。
「ねぇ、これ!僕も好きだったんだ~~」
「なぬ?!」
「え、乙春好きだったの?!今は2も出てるんだよ。絶対面白いからプレイした方がいいよ!」
僕と雫は思わず反応してしまう。
乙女ゲーム好きがここにもいたとは思わず、つい声を上げてしまったのだ。
「知らなかった~~2には蓮くん出る?」
「もちろん!」
僕たちが乙春2の話で盛り上がっていると、結人が突然ツッコミを入れてくる。
「でも駆流はやめた方がいいだろうな」
「なんでよ?」
「お前がゲームなんてやったら全く勉強しなくなるだろうが」
「そんな~~」
「やっぱりやめた方がいいかもね……」
「亮クンまで!酷い~~~」
駆流クンは僕たちのツッコミに嘆き、結人は容赦なくスルーするのだった。
「っし。じゃあ始めるか」
「うん」
「酷い~~~結人のバカ~~アホちん~~」
「っせーな、やるぞ!」
こんなやり取りも自然なんだから、二人は本当に仲が良いんだなと感じる。
僕も気合を入れなおし、テーブルに教科書とノート、ワークを広げ、皆で勉強を始めた。
僕の部屋に男4人はさすがに狭いように感じるけど、雫は結構スパルタで、駆流クンに対しては特に厳しかった。
「なんでそうなるかな。ちょっと貸して」
「もっと優しく教えてよ~~僕亮クンがいいな」
「亮だって自分の勉強あるんだから、迷惑かけない!」
「雫クンだって自分の勉強していいんだよ?」
「俺は亮(推し)の勉強を応援してるんだ。とにかくお前は俺に聞け」
「ひーん」
雫と駆流クンのやり取りって息がピッタリに感じるのは僕だけ?
雫も駆流クンには自然と話しているような……結人に対しての反応とも違うし。
なんだかんだで勉強をし始めて1時間半は経っていたので、休憩のためのオヤツを用意しに行こうと思い立った。
「少し休憩しよっか。お菓子と飲み物持ってくるね」
「「やった!」」
「ん。手伝う」
喜ぶ雫と駆流クン、結人は僕を手伝ってくれると言ってくれて、持ち物が多くなりそうだったのでお願いする事にした。
駆流クンは「僕も手伝う」と言ってくれたけれど、男3人がキッチンに入るとさすがに狭いのと、結人はウチをよく知っているので駆流クンは部屋に残ってもらう事になったのだった。
「あ、母さんが一口チョコ用意してくれてる。結人の好きなヤツじゃん」
「ホントだ。さすがおばさん」
昔から母さんは結人が来た時の為に必ず用意していたもんね。
その事を思い出したのか柔らかい表情をする結人に、一口サイズのピーナッツチョコを差し出す。
「はい」
「……ん」
そのチョコを見ながら結人が口を開ける。
口に入れろって事かな?
そう思い、手に持ってる個包装のチョコの包みを取り、指でつまんで口に運んであげた……ただそれだけなのに、心臓がやたらとうるさくて、胸が苦しくなる。
ただ口に入れるだけだから。
自分にそう言い聞かせていると、彼の唇に到達するかしないかまで近づいた時、突然手首をつかまれて口に運ばれてしまう。
「ちょっ……結人!」
「………………」
僕の指ごとピーナッツチョコを口に含んでしまい、人差し指が、口の中に…………。
彼の分厚い舌がチョコを舐めながら指も舐め上げ、柔らかな感触に背筋が粟立つ。
僕の指を綺麗にするように舌を這わせ、吸い上げると、ちゅっと音がして彼の唇が離れた。
「………………っ……結人……」
「んま。…………っあ、わり。これ、先に部屋に持って行くわ」
「ん……お願い」
今、全身発火するんじゃないかっていうくらい、真っ赤になっているに違いない……結人はなんであんなこと…………彼の舌の感触が人差し指にずっと残ってる。
でも全然嫌な感じじゃなくて……僕はどうしてしまったんだろう。
自分の気持ちに混乱し、力が抜けたようにキッチンにヘタリ込んでしまう。
とにかくこの熱を冷ましてから行かないと、絶対皆におかしく思われてしまうから……人差し指をギュッと握りしめ、気持ちが落ち着くのをひたすら待った。
その後も勉強会を続けたけど、結人が一口チョコを口に運ぶたびに彼の唇が気になってしまい、集中するのが大変だったのは言うまでもない。
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