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絶対離さない ~結人Side~
しおりを挟む亮が自宅に来てくれた日の翌日、学校に早めに着いて上靴に履き替えている最中に、幼馴染の元気な声が後ろから聞こえてくる。
「結人、おはよう!」
「はよ。朝から元気だな」
その姿が子犬のように見えて、ひたすら可愛い。
朝から眼福だな……このまま抱き締めてしまえばお前はどんな顔をするだろう。
まだ気持ちを伝える気はないから自分の中の妄想にとどめておく。
今は昔のように話せるようになる事が大事だ。
でも昔のような完全に友達という風に見られるのも困りものだな……俺の事を意識してほしいし、ただの幼馴染に戻る気はない。
そんな事を考えながら亮と会話していると、そこに宝森がやってきて、俺の顔を確認した瞬間に思い切り嫌な顔をする。
「げっ、久楽結人!」
「……お前…………チッ」
裏表がなさそうなので仲良くしようとすれば出来るだろうが、亮にべったりなので、どちらにしても気に入らねぇな。
離れがたいところだが教室に行くしかねーか……亮の柔らかくてサラサラの髪を撫でながら、別れを惜しんだ。
「じゃな」
「うん」
凄いサラサラだ……眼鏡で表情が分からないのが惜しまれるな。
でも可愛い幼馴染を他の男どもに見られるのはもっと嫌なので、学校ではこのままのスタイルでいてもらわなくては。
小さな頭から手を離したところ、少し名残惜しそうしているように見えるのは、俺の願望だろうか。
亮も離れがたいと思ってるといい、そうやって俺の事ばかり考えるようになればいいのに……煩悩を振り払いながら、自分の教室へと向かったのだった。
~・~・~・~・~
「…………なんで俺が……体育祭実行委員に……」
「わははっ!決める時に寝てるからだろー!」
駆流に思い切り笑われてしまい、放課後の委員会に頭を抱える。
これでますます亮と一緒に帰れねぇじゃねーか!
一番最初だけ出席して、あとはバックレるか。
全部出る必要なんかないだろ。
そんな軽い気持ちで出席した先に亮がいるなんて、この時の俺は思ってもいなかったのだった。
「結人~~委員会あるんだから帰らないでよ」
「わーってるよ…………チッ……」
「一緒に出席するんだから、拗ねないの~」
なんなんだ、この馴れ馴れしい女は……ほとんど話した事はない(と認識している)のに、彼女気取りかよ。
委員会に行く時も腕を絡ませきて、親し気な雰囲気を醸し出してくる。
はぁ…………亮はもう帰っただろうか……これがアイツなら嬉しいだけなんだけどな。
いや、もし亮が腕を組んできたら、そのまま引き寄せて我慢出来なくなるから危険だ。
委員会のある教室に着くと、すぐに幼馴染の頭を確認し(正確には亮の頭しか視界に入っていなかった)、すぐに声をかけた。
「亮?」
「結人!」
亮の周りだけ輝いて見えるのは俺の目にフィルターがかかっているからだろうか?
眼鏡をして前髪も長くしているので亮の目は見えないが、頬をほんのり赤く染め、喜んでくれているのだけは分かる。
一緒の委員会だったとは……ラッキー過ぎる!!
絶対休まず出席する決意を胸に刻もう。
体育祭実行委員はかなりの頻度であったので、バイトの日でも放課後に亮に会える機会がグッと増え、かなり浮かれている自分がいた。
もちろんそんな様子は見せなかったが、心の中では学校に行くのが楽しみになるほどだった。
しかし委員会では上級生に色々頼まれたり、一年生の作業では女子に囲まれる事が多く、なかなか亮と話す事が出来ない。
あまりにも会話出来ないので、プログラムを作成する作業でさり気なく話そうと試みた。
「亮、ここなんだけどデザインに悩んでて……」
しかし俺の気持ちはあえなく玉砕し、亮のクラスの女子を推されてしまう。
「それなら真衣の方が得意なんじゃない?」
「え、あ、なに言ってるの亮は!」
「だって絵とか得意でしょ」
真衣?亮?いつの間に名前呼びする仲になったんだよ。
それにそんな女の情報なんてどーでもいい……女を俺に推すな。
俺が好きなのはお前だ……!って言ってしまいそうになる。
「僕、こっちで作業してるから」
「…………分かった」
しかしそんな事を言えるはずもなく、愛する幼馴染は引っ込んでいってしまうのだった。
前はあんなに積極的に声をかけてきたのに、なんで引いちまうんだよ……また俺から離れていく気なのか?
それだけは絶対許さない。
お前が逃げるなら絶対に捕まえて、今度こそ離さねーから……――――……その後の作業の事は正直あまり覚えていない。
最愛の幼馴染は他のクラスの男子と笑いながら話していて、俺の気持ちはぐちゃぐちゃだった。
亮の肩に腕をまわしているヤツもいるし、捻り潰してやりたくなる。
仄暗い気持ちと煩悩に支配されながら作業を進めていると、いつの間にか終わりの時間になっていた。
帰る準備を進める俺の横を亮が通り過ぎて行くので、咄嗟に呼び止める。
「亮!……待てよ」
幼馴染は足を止め、こちらを振り返ってくれたが、周りが一緒に帰るってあまりにうるさく……黙らせる為とは言え、亮の肩を抱いて見せつけた。
「……無理、コイツと帰るから」
ひと言吐き捨てて、そのまま教室をあとにしたのだった。
”俺を置いて帰ろうとしたのか?”
喉から出てしまいそうな言葉を必死に飲み込んだ。
俺はこんなに一緒にいたいと思ってるのに、1㎜も伝わっていない事がもどかしい。
冷たい態度で拒絶していた過去の自分に対して、悔やんでも悔やみきれない。
でももう絶対離さないから……そんな願望が駄々洩れしていたのか、無意識に玄関まで幼馴染の肩を抱いたままだった俺は、慌てて自分の手を離し、亮を解放したのだった。
「あ……わりっ」
「ううん、大丈夫」
気まず……俺の方が大丈夫じゃない。
咄嗟に離したが、手には愛しい温もりが残っていて、あまりに名残惜しく離さなきゃよかったと後悔した。
チラリと亮を見てみると、ほんの少し耳が赤い。
少しはそうやって俺を意識すればいい。
全く意識されていないのなら、これから意識させればいいんだと思った俺は、ムクドに誘われたので意気揚々とついて行ったのだった。
少しでも多くの時間を一緒に過ごしていれば、そういうチャンスはめぐってくる。
それに他の男がいる場に一人で向かわせたくねぇ。
あの真司とか呼ばれてる男、階段で亮を助けた時、明らかに亮の素顔に見惚れてたからな。
アイツは要注意だ。
そいつを見張る為にもついて行ったのに、まさかムクドにもう一人の問題児がいるとは思ってもいなかったのだった。
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