【完結】ままならぬ僕らのアオハルは。~嫌われていると思っていた幼馴染の不器用な執着愛は、ほんのり苦くて極上に甘い~

Tubling@書籍化&コミカライズ決定

文字の大きさ
23 / 35

大人になってもほしかったもの ~駆流Side~

しおりを挟む

 学校帰りにムクドの前を通り過ぎると、偶然亮クンの友達がムクドにいるのが目に入り、僕はすぐに彼らのもとへと行ったのだった。

 
 「ねぇ、なんで財前が座ってんの?」

 「外を歩いていたら偶然君の顔がみえたから」

 「そのまま帰ればよくない?」

 「だってこの後亮クン来るだろうから、一緒に待ちたいじゃん~~」

 「なんで分かるんだよ!」


 この宝森雫クンというのは亮クンの親友ポジで、清々しいくらい裏表のない人間だった。

 ここまでハッキリ言いたい事を言う人は初めて見るかも。

 年齢を重ねれば重ねるほど人間関係は複雑になり、お世辞だったり、嘘でけむに巻いたり、本音とは程遠い態度をしてしまうものだ。

 彼にはあまりそういうところがない。

 正直好きなタイプじゃないけど、なぜか会話が途切れないんだよなぁ。

 そんな勉強する雫クンにちょっかいをかけていると、案の定亮クンと結人が現れたのだった。

 二人は一緒に食べ物を頼みに行き、勉強会もいい感じに進んで……いたと思ったのに。

 僕の目の前で結人が亮クンのほっぺに付いたソースを取ってあげたり、それに対して亮クンが顔を赤くさせたりして、イチャイチャし始めた。

 結人は亮クンが大好きだから分かるけど、亮クンはどうしてそんな表情――――

 嫌な予感がして、胸が騒めき、居ても立っても居られなくなり、トイレに行った亮クンを追いかけた。

 
 「亮クン、いた~~なかなか戻らないから大丈夫かと思って」

 「心配かけてごめんね。ちょっと時間かかっちゃって」


 ウソ、結人とのやり取りで物凄い動揺していたのがバレバレで、隠し切れてない。

 頬や首がまだ赤い。

 亮クンの白い肌は赤くなるとすぐに分かる。
 
 そんなところも可愛いんだよなぁ。

 でも……動揺させたのが自分じゃなくて、ちょっと気に入らないな。

 僕がじーっと見つめていると不安になったのか、その場を去ろうとする彼の腕を引き、トイレの個室に連れ込んで鍵を閉め、二人きりの状況を作ったのだった。

 このまま君を閉じ込めてしまえたらいいのに。

 
 「駆流クン……?」


 この状況が不安になったのか、上目遣いでこちらの顔色を窺ってくる亮クンが可愛い。

 結人に渡したくないよ。
 

 「亮クンは、結人の事、どう思ってる?」

 「どうって……大切な幼馴染だよ」

 「本当?」

 「うん」


 こんなに独占欲でいっぱいになるのが初めてで、まだ自分の気持ちを自覚していない彼の言葉を鵜呑みにする事にした。

 君がそう言うのならそれでいい。
 
 まだ誰のものにもならないでほしい。

 そうして取ってつけたように勉強会という約束を取り付け、亮クンの家で距離を縮めよう作戦に打って出たのだった。


 ~・~・~・~・~


 「なんでそうなるかな。ちょっと貸して」
 
 「もっと優しく教えてよ~~僕亮クンがいいな」

 「亮だって自分の勉強あるんだから、迷惑かけない!」


 亮クンの部屋に入って皆で会話したところまでは順調だったのに、勉強会が始まると雫クンにこれでもかと狙い撃ちされ、スパルタな勉強会に僕の心は半分折れかけていた。
 

 「雫クンだって自分の勉強していいんだよ?」

 「俺は亮(推し)の勉強を応援してるんだ。とにかくお前は俺に聞け」

 「ひーん」
 

 もうやだ。

 なんなのこの人。

 裏表ないのは分かるけど、ストレート過ぎて僕のガラスのハートがもたない……僕の癒しであるマイスウィートハニー(亮クン)は結人とオヤツを持ってきてくれるとかで一緒にキッチンに行っちゃうし!


 「僕も一緒に行きたかったな~~」

 「行けばいいんじゃん?」

 「え、でも迷惑になるし」


 君は何でもストレートでいいよねって言いそうになり、グッと堪える。

 そんな僕に雫クンが、本当に真っすぐに言葉を返してきたのだった。


 「自分の気持ちに正直になった方がいんじゃね?相手の為って引いても後悔するだけじゃん」

 「そうかな」

 「なんだ、財前って意外と可愛いところあるんだな~」


 そう言いながら僕の頭を撫でてくる雫クン。

 生まれて初めての頭撫で撫でに、僕の方が固まってしまう……こんなナチュラルに頭撫でられる人、いる?!

 僕はビックリして雫クンを見るけれど、彼には邪な気持ちが全くないのかニコニコ笑っていた。

 親にも撫でられた事ないのに……でもそのおかげで落ち着いた僕は、結人と亮クンのところに行ってみようと思えたのだった。


 「ちょっと行ってくる」

 「おう」
  

 でもキッチンに入る扉の前で、結人と亮クンが仲良さそうな姿に足が止まってしまう。

 亮クンが結人にチョコを食べさせていて……亮クンは全身真っ赤になってるに違いないと分かるくらい、耳も手も……肌が全部真っ赤に染まっていた。

 こんなの僕に入り込める余地なんてないじゃん。

 あの二人の雰囲気を見てすっかりショックを受けた僕は、トボトボと肩を落として雫クンの待つ部屋へと戻った。


 「あれ、早くね?」

 「うん……やっぱやめた」


 何とか取ってつけたように笑顔で返し、自分の場所へと座る。

 あーあ……失恋確定か…………カッコ悪。

 もっと足掻けば良かったんだろうけど、足掻いたところで生まれた時から染みついた諦める習性はなかなか消せないし、小さな頃からの絆に勝てるとも思えない。

 最初から勝ち目なんてなかったんだろうな……いつもそうだ。

 たいてい勝負は最初から決まっていて、自分は負け組。

 僕なりには頑張った方だと思うけど。

 相手が悪かったんだ。

 心の中で、必死に自分に言い聞かせる。

 雫クンに対して顔を上げられずにいると、彼の手が伸びてきて、またしても頭を撫でられたのだった。


 「………………なに……?」

 「いや、頑張ったなと思って」


 なんで……なんで一番してほしい事や言ってほしい言葉をお前がくれるんだよ。

 彼には何の忖度もないからこそ、泣きたくなってくる。

 くそ……カッコ悪過ぎる。

 本当は両親に自分の事をもっと見てほしかったし、期待されたかった、可愛がられたかった。
 
 大きくなってこんな気持ち誰にも言えないから、つまらない日常を埋めてくれる人間なら誰でも良かったんだ。
 
 亮クンなら僕に言ってくれそうな気がした。

 頑張ったねって頭を撫でてくれるんじゃないかなって、ほんの少し期待してたんだ。

 あのひたむきな瞳に僕だけを映してほしかった。

 なのに、なんでコイツが――


 「お前は俺を好きになれば良かったのにな」

 「はあ?!!」


 雫クンのとんでもない言葉に、思わず涙も引っ込み、大声を出してしまう。

 俺を好きになればって……はあ?!


 「ムリ無理!ならないから!!」

 「俺だったらイイ彼氏になれんのに」

 「自分で言うとかあり得ない」

 「まぁ、俺も付き合うならどっちかって言うと女子がイイしな」

 「そういうとこだよ!」

 「ははっ」
 

 僕のツッコミに笑った雫クンを見て、気持ちを軽くさせようと言ってくれたんだと気付き、不覚にもカッコいいなと思ってしまう。

 違う違う、僕の好みは亮クンのように可愛らしい美人さんで――――

 ていうか雫クンってどっちもいけるの?!

 この子、何者なんだろう……驚き戸惑う僕を真っすぐに見据えながら、本当にストレートな言葉を伝えてくる。


 「でも、まぁ、諦める必要はなくね?」

 「え……」

 「ダメだと思ったら諦めないとダメなん?」

 「そういうわけじゃないけど……頑張るだけ無駄じゃん!」


 無理だと分かっているのに努力して、結果ダメだった時のショックの方が大きい。

 そんな分かり切ってる努力なんてしたくないから、早々に諦めようと思っているのに。


 「無駄でも何でも、止められないのが恋ってもんじゃないの。別に気の済むまで好きでいたらいいんじゃね」

 「でもそんなの、カッコ悪過ぎるよ」


 無様で惨めになるだけなのに、勝手な事ばかり言って……だんだん雫クンの言葉に腹立たしく思い始めていたところに、思いもよらない言葉を返される。


 「なんで?そんなのめちゃくちゃカッコいいじゃん!乙春2でも海人がさ~~」


 僕の気持ちを余所に乙女ゲームの話を始める雫クン。

 呆気に取られる僕をそっちのけで、彼は恋に懸命になる人間は物凄くカッコいいのだと語り出した。


 「…………だから、そんなお前の姿を俺が見ててやるからな!」

 「~~~っ!」


 なんなんだよ、コイツ……僕の頭を三度撫でながら本気でカッコいいと思ってるし。

 長年両親や兄弟に抱いていた重たい気持ちも、コイツならカッコいいって言ってくれそうな気がしてしまう。

 甘えてしまいそうになる気持ちを振り払うように、雫クンの手を振り払った。


 「もう、いつまで撫でてるんだよ!」

 「駆流、何大声出してんだ?」

 「わあ!!」


 突然結人の声がしてきて、またしても大声を出してしまったのだった。

 この勉強会では僕の失恋が確定して落ち込んでしまったはずなのに、雫クンに言われた言葉が僕の中で根付き、もうひと頑張りしてみようかなという気持ちになったのは確かだった。

 彼に本音をぶちまけた事で気持ちが軽くなった気がして、思いの外実りの多い勉強会になったのだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小石の恋

キザキ ケイ
BL
やや無口で平凡な男子高校生の律紀は、ひょんなことから学校一の有名人、天道 至先輩と知り合う。 助けてもらったお礼を言って、それで終わりのはずだったのに。 なぜか先輩は律紀にしつこく絡んできて、連れ回されて、平凡な日常がどんどん侵食されていく。 果たして律紀は逃げ切ることができるのか。

幼馴染が「お願い」って言うから

尾高志咲/しさ
BL
高2の月宮蒼斗(つきみやあおと)は幼馴染に弱い。美形で何でもできる幼馴染、上橋清良(うえはしきよら)の「お願い」に弱い。 「…だからってこの真夏の暑いさなかに、ふっかふかのパンダの着ぐるみを着ろってのは無理じゃないか?」 里見高校着ぐるみ同好会にはメンバーが3人しかいない。2年生が二人、1年生が一人だ。商店街の夏祭りに参加直前、1年生が発熱して人気のパンダ役がいなくなってしまった。あせった同好会会長の清良は蒼斗にパンダの着ぐるみを着てほしいと泣きつく。清良の「お願い」にしぶしぶ頷いた蒼斗だったが…。 ★上橋清良(高2)×月宮蒼斗(高2) ☆同級生の幼馴染同士が部活(?)でわちゃわちゃしながら少しずつ近づいていきます。 ☆第1回青春×BL小説カップに参加。最終45位でした。応援していただきありがとうございました!

溺愛系とまではいかないけど…過保護系カレシと言った方が 良いじゃねぇ? って親友に言われる僕のカレシさん

315 サイコ
BL
潔癖症で対人恐怖症の汐織は、一目惚れした1つ上の三波 道也に告白する。  が、案の定…  対人恐怖症と潔癖症が、災いして号泣した汐織を心配して手を貸そうとした三波の手を叩いてしまう。  そんな事が、あったのにも関わらず仮の恋人から本当の恋人までなるのだが…  三波もまた、汐織の対応をどうしたらいいのか、戸惑っていた。  そこに汐織の幼馴染みで、隣に住んでいる汐織の姉と付き合っていると言う戸室 久貴が、汐織の頭をポンポンしている場面に遭遇してしまう…   表紙のイラストは、Days AIさんで作らせていただきました。

笑って下さい、シンデレラ

椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。 面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。 ツンデレは振り回されるべき。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

陰キャ幼馴染がミスターコン代表に選ばれたので、俺が世界一イケメンにしてやります

あと
BL
「俺が!お前を生まれ変わらせる!」

自己肯定感低めの陰キャ一途攻め×世話焼きなお人好し平凡受け

いじられキャラで陰キャな攻めが数合わせでノミネートされ、2ヶ月後の大学の学園祭のミスターコンの学部代表になる。誰もが優勝するわけないと思う中、攻めの幼馴染である受けは周囲を見返すために、攻めを大幅にイメチェンさせることを決意する。そして、隠れイケメンな攻めはどんどん垢抜けていき……?

攻め:逸見悠里
受け:佐々木歩

⚠️途中でファッションの話になりますが、作者は服に詳しくないので、ダサいじゃん!とか思ってもスルーでお願いします。

誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華
BL
 高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。  けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。  ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。  けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。  それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。 「大丈夫か?」  涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。

あなたのいちばんすきなひと

名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。 ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。 有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。 俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。 実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。 そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。 また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。 自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は―― 隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。

処理中です...