【完結】ままならぬ僕らのアオハルは。~嫌われていると思っていた幼馴染の不器用な執着愛は、ほんのり苦くて極上に甘い~

Tubling@書籍化&コミカライズ決定

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待ちに待った体育祭の開幕

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 準備に色々と大変だった体育祭実行委員会だったけれど、いよいよ明日は体育祭当日で、実行委員のメンバーは早めに集合となる。
 
 僕と結人は実行委員のメンバーなので一緒に行こうという話になり、RINEで連絡を取り合っていた。

 【明日、7時に迎えに行く】

 【OK!待ってるね】

 ぼくの返事にまたしても可愛らしいスタンプを送ってきたので、クスリと笑った。

 あんなにいかつい見た目なのに、こんなに可愛いスタンプ持ってるなんて。

 僕はベッドに寝転がりながらスマホ画面を見つめた。

 長かったように感じた体育祭実行委員の仕事も明日で最後か……好きな人と一緒だと時間もあっという間だし、色々苦しい事もあったけど結人と一緒で良かったな。

 実行委員で距離が縮まったし、今では普通に話して……話して…………そこまで考えたところで、先日の体育倉庫での出来事が頭を過っていった。

 ベッドにうつ伏せになり、足をバタつかせ、悶えた。

 『俺を好きになれ』

 もう好きなんだよ――――

 まだ告白はしてないけど、好きになっていいって事は分かったから、もの凄く気持ちが軽くなったんだ。

 体育祭でチャンスがあったら気持ちを伝えてみようかな。

 どういう反応をするだろう……その日の夜は夢見心地で、乙女ゲームの事など全く考える事もなく、寝る寸前まで結人のことばかり考えながら眠りに落ちた。

 そして体育祭当日…………家のインターホンが鳴ったのでモニターを見たところ、少し見た目に違和感のある結人が映っていた。

 
 「はーい。今出るから待ってて」

 「おう」


 返事が聞こえたのでインターホンを切り、鞄を背負い込む。


 「お弁当忘れてない?」

 「大丈夫!」

 「私も後から行くからね。行ってらっしゃい」


 母さんは体育祭を見に来てくれるらしく、体育祭には保護者も参加する玉入れがあるので、気合が入っているようだった。

 僕は靴を履き、「行ってきます!」と元気に扉を開いた。

 大好きな幼馴染が待っているので意気揚々と飛び出して行くと、そこにはジャージ姿で優しく微笑んでいる結人が立っていた。

 でも彼を見て、何か感じた違和感は髪の毛なのだとすぐに分かる。


 「結人……髪が、黒い!」

 「ああ、金パにし続けるのも面倒だから黒くした。変か?」


 金髪も綺麗でカッコ良かったけど、黒髪は……本当に小学生の結人が大きくなった感じがして、目頭が熱くなってくる。

 やっと再会出来たような、凄く懐かしいような、不思議な気持ち。

 でもどんな結人でも大好きだし、カッコいいし、僕の好きは変わらないんだけど。


 「凄く似合ってる。カッコイイよ」

 「そか。んじゃ行こうぜ」

 「うん!」


 僕の言葉に少しはにかんだ結人の顔を見て、僕も嬉しくなった。

 しっかり自分の仕事を全うして、体育祭楽しもう。
 
 二人で談笑しながら足早に学校へと向かったのだった。

 ~・~・~・~・~

 学校に着き、実行委員のメンバーが集まると、委員長が今日のスケジュールとそれぞれの仕事を確認し、用具の用意などに勤しむ。

 そこで綱引き用の綱を引っ張り出している真衣を見かけ、急いで駆け付けた。


 「これは男子の仕事だから、僕がやるよ」

 「え、そうなの?ごめん、勘違いしてた!」

 「線引きとかお願い」

 「分かった!」


 女子ではさすがに重くて動かないよね……真衣を違う仕事に行かせて綱引き用の綱を持っていこうとするも、僕のやさ腕ではあまり動いてくれない。

 マズいぞ、僕がやるとか言っておいて女子より非力とかカッコ悪過ぎる。

 とにかく一生懸命綱巻き取り器を押していると、さり気なく結人がやって来て一緒に押してくれたのだった。


 「大丈夫か?」

 「ありがとう!なかなか動かなくて焦ってた」

 「ふはっ。その腕じゃな」
 

 からかわれているのは分かるけど、結人の笑顔が見られてキュンとしてしまう。

 そんな笑顔、反則…………優しく微笑んだりする顔はよく見るけど、ここまでの笑顔はなかなか見られないから。

 体育祭実行委員のメンバーになって良かったなぁ。

 しみじみと感じながらバタバタと準備をしていると、あっという間に生徒が登校する時間になり、グラウンドに全生徒が集まったので順調に開会式が行われていく。

 タイムテーブル通りに進行している事にホッと胸を撫でおろし、皆と一緒にラジオ体操をしていった。

 今日は実行委員の仕事でも走り回らなきゃいけないし、僕自身体育会系じゃないからしっかり体をほぐしておかなきゃ。
 

 「亮、気合入ってんなー」

 「うん。こういう行事って無縁なんだけど、今年は仕事もあるしね」

 「そっか。俺たちの本番は午後の競技だよな!」

 「そうそう、計算競争リレーね!」


 午前の部には借り物競争や学年別の競技、綱引きや部活動対抗リレーなど色々な種目が目白押しで、午後は保護者と一緒の玉入れや計算競争リレー、最後はクラス対抗リレーなどが待っている。

 その中でも計算競争リレーは僕たちみたいな運動が得意ではない者でも勝てるような種目だ。

 何か所かに計算の紙が設置されていて、計算しながら走っていく。

 各学年の1組は特進クラスなので、計算競争こそは1位になるぞ、とクラス皆で意気込んでいるのだ。

 リレーに出るのは僕と雫と、その他に3名ほど。

 皆で話し合い、中間考査での順位によって決まったのだった。

 ちなみに僕はクラスで1位(学年では2番)だったのでアンカーだ……もの凄く緊張する。

 クラス皆の勝利を背負って走らなくてはならない。

 それもあってラジオ体操はめちゃくちゃ気合を入れたのだ。


 「他の種目は勝てる気しないけど、計算競争だけは勝つぞ!」

 「うん!」


 僕たちが意気込んでいるところに真司がやってきて、僕の手を取りながら、
 

 「俺がクラス対抗リレーも1位にしてみせるから」


 と意気込んだ。

 真司は野球部の期待の新人だし、足がとても速いのでリレーでは大活躍だろうな。


 「うん、期待してる!」

 「部活動対抗リレーも応援して」

 「任せて!」

 「おい、俺にはお願いしないのかよ」


 雫が真司にツッコミを入れると、真司が無言で首を振った。


 「宝森は大丈夫」

 「なんだと?!丁寧に言ってるけど、酷いぞお前!」

 「あははっ」


 いつものように皆で談笑しているとアナウンスが入り、実行委員が呼ばれたので急いで駆けて行った。

 ラジオ体操の後は1年生の借り物競争なので、指定された場所にお題のカードと借り物を置いていかなければならない。

 もちろんお題には用意した借り物じゃないもの、例えば人物の特徴とかも書いている。

 毎年盛り上がるので、今回も委員会でこの種目を入れる事はすぐに決まったのだった。

 僕は、お題カードや借り物を毎回もとに戻したりしなきゃいけないので、借り物競争には参加せず、実行委員のメンバー数人と共にグラウンドのすぐ近くで待機していた。

 僕のすぐ隣りには結人も立っている。


 「お、次は駆流が出るぞ」

 「ホントだ!」


 駆流クンの番がきたのを見付け、少し遠かったけれど手を振ってみたところ、僕に気付いたのか手を振り返してくれたのだった。

 こういうやり取りが出来る友達が出来たのが嬉しいなぁ。

 好きな人も出来て、暗黒時代だった中学時代を忘れさせてくれるくらい、高校は楽しくて仕方ない。


 「ぅわっ!」


 ふいに結人に髪をぐしゃぐしゃにされ、変な声が出てしまう。

 
 「な、なに……」

 「そんな応援しなくても駆流ならはえーよ」

 「え、でも6組は結人のクラスなんだから、応援したいし……」

 「………………そか」

 「わわわっ」
 

 正直な気持ちを伝えただけなのに、なぜかさらに髪をぐしゃぐしゃにされ、台風にさらされた人みたいになってしまったのだった。

 そんな僕を見て、実行委員のメンバーの男子にも笑われてしまう。
 
 
 「ぶはっ、久楽~~亮の髪凄い事になってんじゃん」

 「これはこれでいいんだって」

 「良くないよ!」

 「「はははっ」」


 結人含め皆に笑われたけど、中学時代とは全然違って嫌な感じはまったくない。

 そんなやり取りをしている内に借り物競争が始まり、いよいよ駆流クンの番になったので力いっぱい応援した。


 「駆流クン、ガンバ――!!」

 「駆流!1位取れよ!!!」


 結人もちゃっかり応援していて、やはり二人はなんだかんだ仲良しなんだなと感じる。

 自分のクラスだし、負けたくないもんね。

 駆流クンって足が速いのかな……スタートの合図が鳴り、駆流クンが走り始めると一番でお題のカードのところにたどり着いた。


 「駆流クン速いんだね!」

 「のらりくらりやってるけどな。クラス対抗リレーにも選ばれてるぞ」

 「そっかー」


 キラキライケメンで運動神経もいいなんて、凄くモテそう。
 
 心なしか女子の黄色い声も多いような……お題カードを読んだ駆流クンは何となくこちらを見ながらキョロキョロしていて、どうやら用意された道具の中には求めているものはない様子だった。


 「アイツ、何探してんだ?」

 「なんだろ……」
 

 すると、こちらをバッチリと見た駆流クンが猛然と走ってくる。


 「亮くーん!!」

 「え、え?」

 「僕と来て!!」

 「わ、分かった!」


 咄嗟に差し出された手を握り、僕は駆流クンと一緒に走り出した。

 実行委員の仕事で作成したので、借り物のお題に書かれていたものを把握していた僕は、駆流クンがやって来た理由が分かっていたのだ。

 僕たちは見事1位を獲得し、6組の順位に貢献したのだった。

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