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大好きな人の応援
しおりを挟む「亮クンありがとう~~1位取れたよ!」
駆流クンはよほど嬉しかったのか、思い切り抱きしめられながらお礼をされてしまう。
「ど、どういたしまして!お題は眼鏡の人?」
「そうそう、亮クンしか思い浮かばなかったから!役得~~」
駆流クンってこういうキャラなのか、僕を抱きしめていても周りの人があまり怪訝そうにしていないのが凄い。
あんまり離してくれないものだから抜け出そうともがいていると、大好きな人の匂いがふわっとしてきて、僕を駆流クンの腕の中から引き離した。
「駆流、よくやったな。でも亮は連れて行くぞ」
「ちょ、ちょっと~~」
「まだ仕事中だ」
結人が僕の腕を引きながらズンズン歩いていく。
駆流クンの声がどんどん遠ざかり、結人が何かブツブツ言ってるような気がするけど、体育祭の喧騒によってかき消されてしまっていた。
そしてまた持ち場へと戻っていくと、実行委員のメンバーたちが笑って迎えてくれたのだった。
「お疲れ!災難だったな」「びっくりしただろ」「眼鏡の人ってヤツ?」
皆で用意したからやっぱりお題が分かっていたらしくて、突然借り物にされた僕を面白がっていた。
「うん、でもこういうのも体育祭ならではで楽しいね!」
「亮~~お前ってホントにいいヤツ!!」
今度は3組の実行委員の男子に抱き着かれてしまう。
背が小さいからサイズがちょうどいいんだろうか……そしてまた結人に引き離されるという。
さっきのデジャヴみたいなやり取りに笑い、借り物競争は無事に終わりを迎えたのだった。
~・~・~・~・~
次は2年生の台風の目という種目が行われるので、その間にアナウンス席へと急いだ。
というのも台風の目の次は3年生の大縄跳びがあり、そのアナウンス係に僕と真衣が選ばれているのだ。
すでに待機していた真衣のそばに行き、大縄跳びが始まるまで待機だ。
「お疲れ!借り物にされてる姿、見ちゃった~」
「見られてたか……恥ずい」
「あははっ。大丈夫、きっと皆に見られてたから」
「ぐぅ……っ」
笑顔でなんて残酷な事を言うんだ……ガックリ項垂れる僕を余所に、真衣から結人についての話を振られてドキリとする。
「ねぇ、久楽くんの事なんだけど……」
「う、うん」
どうしたんだろう、あらたまって。
結人と何かあったんだろうか……告白したとかならあまり聞きたくないかも。
幼馴染への自分の気持ちを自覚したので、余計に心臓がうるさく脈打つ。
「色々と協力してくれてありがとう」
「へ?いや、なんもしてないし」
「ううん、久楽くんと話せたから色々と聞けて感謝してるの」
「何を、聞いたの?」
僕は恐る恐る真衣に聞いてみる。
「久楽くんにはどうやら好きな人がいるみたいで……アプローチする前から失恋してたなんてね」
「へ?そうなの?」
「うん……」
ウソ………………結人に好きな人が……そんな…………告白する前から失恋するなんて……ガックリと項垂れる僕に、彼女は言葉を続けていった。
「しかも小さな頃からの幼馴染なんだって!もう勝ち目なし!亮には協力してもらったから報告」
「あ、ありがとう……」
気丈に笑っているけど辛いだろうな。
でも小さな頃からの幼馴染って……結人の幼馴染って、誰?
ずっと一緒に育ってきたけれど、幼馴染と言える人間は、自惚れでなければ僕しかいないと思うんだけど。
女子の幼馴染っていたのかな?
いや、いないよな…………本当にずっと一緒にいたけど結人が女子と仲良くしているイメージが全くない。
まさか僕……?
いやいや、そんな…………結人はモテるからそういうのを避ける為に言ってるのかもしれないし。
体育祭終わったら聞いてみようかな。
この時の僕は、体育祭の最中に自分の予想を斜め上にいくような出来事が待っているとは、思ってもいなかったのだった。
~・~・~・~・~
無事アナウンスの仕事をやり遂げ、急いでクラスの中へと戻っていく途中、全学年の種目である障害物競走の準備をしている結人の姿が目に入ってくる。
障害物競走の次は綱引きだ。
確か一番後ろで引くんだよね……応援したいなぁ。
自分のクラスの応援をするべきなんだろうけど。
そんな事を考えながら走っていると、ふいに腕を引かれて振り返ったところ、少し汗をかいている幼馴染がいた。
金髪もカッコよかったけど、黒髪の結人はさらにカッコいい。
汗が滴る頬や首筋がやけに色っぽいし、真衣と話していた内容が頭を過ぎり、思わず目を逸らしてしまう。
「亮?」
「あ、結人。お疲れ様!」
「お前もアナウンスお疲れ。もう実行委員の仕事は終わりだろ?」
「うん!あとは閉会式後の片づけだけ」
「そか」
そう言えばそうだ、無事に実行委員の仕事をやり遂げたんだった。
実感した瞬間に、達成感がやってくる。
「結人もこの種目でお仕事終わりでしょ?頑張って」
「サンキュ。あ――……次の綱引きなんだけど」
「一番後ろで引くヤツ?」
「そうそれ」
目の前の幼馴染は何か言いたげで、上を向いたり明後日の方を見たりして何かを考えている様子だった。
どうしたんだろう……これは僕から聞いた方がいいのかな。
「何かあった?」
「いや……亮に応援してもらいたいなって」
「え」
突然の申し出に驚き、言葉に詰まってしまう。
再会した時は存在も消されていたぐらいだったのに、応援してほしいって言ってくれるくらいに、僕の事を必要としてくれているんだって思うと泣きたいくらい嬉しい気持ちになった。
僕の事を好きじゃなくても何でもいいや。
結人が僕を必要としてくれてるだけで、それだけで僕はとても幸せになれるんだから。
僕は最愛の幼馴染に笑顔を向けた。
「もちろん!」
「サンキュ。期待してる」
「へへっ。じゃあまた後で!」
僕が応援すると結人は嬉しいんだ……まるで小学生の頃に戻ったようだ。
あの頃はいつも必要とされていて、お互いにお互いがいれば何でも出来るような気持ちだったのを思い出す。
彼に対する自分の気持ちはあの頃の好きから、違う種類の好きに変わってしまったけれど、それでも溢れ出る喜びを隠しきれず、思わず何もないところでジャンプしたのだった。
一生懸命応援しよう。
そして綱引きの時間がやってきたので、雫と並びながら6組対7組の対戦を固唾を飲んで見守った。
「久楽は一番後ろか。様になってんじゃん」
「カッコいいよね」
「見惚れてんなよ~~応援しなきゃな!」
「だ、大丈夫だよ」
僕たちがそんな会話をしていると、ふいに誰かの腕によって視界が遮られてしまう。
「え、誰?!」
「亮は見なくていいんだよ」
「真司?でも応援してって頼まれてるからっ!」
早く腕を退けてくれないと結人が見えないと思い、焦りが増してくる。
いつもはこんな事しない真司なのに、どうしてこんな事を――――
「おい、間宮。推し(亮)の邪魔するなら……こうだ!」
「……ちょっ……なに……っ」
突然真司の腕が目の前からなくなり視界が開けたかと思うと、後ろから変な声が聞こえてくる。
恐る恐る振り返ったところ、真司は雫のくすぐり攻撃に遭い、必死に耐えていたのだった。
「ふふふっ」
ひとまず真司は雫に任せ、結人の綱引きが始まりそうだったのでそちらに視線を移す。
そしてスタートの合図が鳴ったので、力の限り声を張り上げた。
「結人――――!!ガンバレ――!!!!」
余った綱を体に巻き付け、大きな体を低姿勢にしながら引っ張る幼馴染……汗を散らせ、浮かび上がる筋肉や胸板に見惚れながらも一生懸命応援した。
そして見事6組は勝利してその勢いのまま決勝まで進み、優勝したのだった。
「凄かった……!!」
「久楽、かっけーじゃん!」
綱引きが終わり、こちらに駆けてきた結人に僕たちは感動の声をかけたけど、当の本人は微妙な表情をしている。
「亮に応援は頼んだが、宝森にかっけーって言われても嬉しくねーな」
「おい!差別だぞ!」
「日頃の行いじゃね?」
相変わらずの結人と雫のやり取りに苦笑していると、結人の後ろから駆流クンが顔を出し、本気で泣きつかれてしまうのだった。
「そんな事より、亮クン~~~僕の応援もしてほしかった~~」
そう言えば駆流クンも6組だったんだよね……すっかり忘れてたとは言えない。
「ごめん、ごめん。結人には頼まれてたんだけど、駆流クンには頼まれてなかったから……」
ちょっと言い訳が苦しいかな……気まずく思う僕の横から雫がバッサリとツッコんだ。
「それこそ日頃の行いじゃね?」
「雫は黙ってて!」
駆流クンが悲鳴のような声を上げ、周りは笑いに包まれた。
駆流クンって雫の事呼び捨てにするくらい仲良くなってたんだ。
その事に驚きながらも次は部活動リレーで真司が出場するので、そちらの方を応援するべくゴール付近で観戦する事にした。
ラジオ体操の時も頼まれたけど、綱引きの時も応援してって頼まれていたんだった。
僕の応援でいいのかって思いつつ、「亮に応援してほしい」って言われたんだよね。
なんだか小学校時代の結人を見てるみたいだなぁ。
とても懐かれている感じがするのも懐かしい幼馴染との記憶と重なり、少し嬉しかったのだった。
スタートの合図が鳴ると各部の第1走者がスタートを切り、文化部も入っているので運動部がどんどん引き離していった。
中でも野球部とサッカー部、バスケットボール部は速い。
バレーボール部も速いけど、意外にもバドミントン部も速かった。
足の速い部活動の中でもアンカーを任されるなんて、真司ってどんだけ足が速いんだろう……ドキドキしながら見守っていると、遂にアンカー勝負になる。
サッカー部との一騎打ちだ。
「真司――!!ガンバレ――!!!」
バトンを受け取ってからの動きもスムーズで、真司の圧倒的な速さに見事野球部が1位を飾って部活動リレーは終了した。
「やった――!!真司凄い!」
「間宮すげー!!」
僕たちは真司に駆け寄り、喜びを爆発させた。
いつもは笑わない真司が満面の笑みを見せるので、やっぱり優勝は嬉しいんだなと僕まで嬉しくなってしまう。
応援して良かった……。
「亮、応援ありがとう」
返事の代わりに首を振ると、僕の横から雫が得意げに「俺のおかげだよな」と言い放つ。
「いや、宝森には頼んでない」
「なんだよ!お前もか!」
「あははっ」
こうして色々あった体育祭の午前の部が終わり、皆が待ちに待った昼食の時間が訪れた。
各クラス毎にお弁当を食べるのだけど、なぜか結人と駆流クンは僕のクラスにやってきて、お昼も一緒に食べる事となったのだった。
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