契約師としてクランに尽くしましたが追い出されたので復讐をしようと思います

夜納木ナヤ

文字の大きさ
48 / 52
第3章~港町での物語~

ブリュンヒルデとの出会い

しおりを挟む
 戦乙女ヴァルキリーーは美しく、美しさゆえに人の欲望を掻き立てる。
 認められたい、己のモノにしたい。
 かつての人は、身の程も知らずに、ヴァルキリーに近づいた。そして彼女も、戯れの一つとして受け入れた。
 たった一瞬の、快楽を求めた軽率な行動は、いつしか、人とヴァルキリーの関係を歪めてしまった。
 ヴァルキリーの多くは、誰彼構わず相手にした。だが、中には一人だけを愛そうとしたヴァルキリーもいた。
 だが、その願いは叶わなかった。彼女は傷つき、ふさぎ込んだ。それはもう、何百年という長さで。
 ブリュンヒルデは今でこそ普通に話をしてくれるが、受け入れてもらうまでが大変だった。

 それはレッドラグーンができる前のこと。ヤマトにタケヤ、それからマヤと”まだ”普通に冒険をしていた時のことだった。
 俺たちは水竜ヨルムンガンドの討伐クエストを受け、海底にあるという神殿を目指していた。

 神殿はすぐに見つかったが、海に入れば呼吸が出来ない。対処法のない俺たちは困り果て、海の上から神殿を眺めていることしか出来なかった。本当を言うと、俺だけであれば水中に入ることは出来た。水の加護を得ていたのだ。だが、なんとなく気まずいので黙っていた。
 海の上で途方に暮れ始めて三日ほどたったある日、すすり泣く声が聞こえてきた。女の子のものだった
 声は足元か聞こえて来て、何事かと海を覗き込むと、水面が割れ、でかい口が現れた。口はそのまま水面に上がってきて、俺を飲み込んだ。あまりのことに反応することが出来なかった。水ごと飲み込まれた俺は、水流に流されるがままに謎の生物の体の奥へと進んでいく。
 視界は急に開け、体が硬いものにぶつかった。よく見れば石で出来た神殿で、あちこちがコケて汚れていて、わかめが転がっていた。

「しくしくしく」
 
 海の上で聞いた泣き声が、さっきよりも近くで聞こえた。部屋の奥に進んでいくと、女の子が見えてきた。後ろを向いていて表情は見えないが、綺麗な黒髪が印象的だった。彼女に見入っていたと気がついたのは、息が苦しくなったからだ。どうやら呼吸をするのを忘れていたらしい。すっと酸素を吸い込むと、女の子の肩がびくっと震えた。

「誰かいるのっ!?」

 怯えた声を上げると、少女を取り囲むように、水の薄い膜が生まれた。まるでシャボン玉のような見た目で、中心で揺れる女の子はまるで、お姫様のようだった。

「ごめん、驚かせるつもりはなかったんだ」

 俺が答えると、少女はまた肩を震わせた。ひたすら怯えていて、一向にこちらを見ようとはしない。このまま立ち去るのがいいのだろうが、なぜかそれではいけないという錯覚が襲ってくる。これはもう、脅迫まがいのものだ。
 それにしてもここはどこだろう。水の中から見えた口は、何かのモンスターのものだろうか?だったら俺は腹の中にいることになる。そのままずっといて、消化されるなんて勘弁だ。いやマテ、もしそうなるとしたら、女の子もなおさら放っては置けない。

「一緒にここを出ないか?」

 声をかけるが、反応は返ってこない。聞こえていないのか?
 疑問に思って、思いっきり息を吸うと、一気に吐き出した。

「逃げないかー」

 俺の声が反響して、何重にも響き渡った。これなら聞こえていないはずはない…のだが、少女は反応を示さない。
 いや、よくよく見れば耳のあたりはうっすらと膨らんでいる。もしら耳をふさいでいるのか?
 初対面でそこまで嫌われる心当たりがない。

「どうしてこんなところにいるんだー」

 やはり反応がない。うーん、ここに住んでいるのだろうか?だったら置いていっても問題ないか?
 悩んでいると、通ってきた道からやけに濁った液体が流れ混んできた。汚れた水かと思って気にせずいたら、足先が触れ、じゅわっと音を立てて痛みを感じた。

「うおっ!?」

 慌てて壁を掴んで上に上がると、液体に触れた昆布やらわかめやらが溶けている。これは消化液か!?そういえばここはモンスターの体内だった。
 女の子を囲んでいたシャボン玉にも液体は触れ、じゅわーっと煙を立てる。このままでは危ない。
 近づこうとしてシャボン玉に飛び込むと、意外に耐久のある表面を割ることが出来ず、弾力で押し返されてしまった。

 その間に、消化液はシャボン玉の表面に小さな穴を作り、中へと流れ込んでいく。その一部が少女の髪に触れ、煙を上げる。このままでは体が溶かされてしまう。だというのに、少女は動こうともしない。
 
「正気かよ!?来い、フレイムランス!」

 慌てて炎の魔法を発動すると、シャボン玉に向かってぶっ放した。それでも簡単には壊れてはくれない。くそっ、なんて耐久だ。
 その間にも、女の子から上がる煙は全身へと広がっていく。

「死ぬつもりか!?」

 こうなったらためらってはいられない。

「シャドウイート!!」

 闇魔法を発動すると、目の前の魔法ーシャボン玉を無効化する。そして、背中に翼を生やすと、上空から女の子を抱き上げた。消化液の効果はすぐには消えないようで、じゅわーっと、肉が焼けるみたいな音が腕の中で聞こえている。
 ここでようやく、女の子の顔が見えた。整った顔立ちで、お人形のようだ。いや、本当にお人形なのかもしれない。光を失った目からは、生気が感じられない。

「ちょっと、何をするのよ!」

 少女は人形ではなかった。俺に気が付くと暴れだす。
 見た目よりもずっと力が強く、俺の手はいとも簡単に振りほどかれた。女の子は髪を揺らしながら、消化液の海へと落ちていき、海面が少女の体の形に割れると同時に、泡がブクブクと湧きだし、そのまま海の底へと沈んでいく。

「自殺願望でもあんのかよ!」

 俺はただ、少女のいるはずの場所へと向かう。消化液の海に潜ると、全身が溶けるような感覚に襲われた。、肩が足が焼けるように痛い。だけど、このまま何もしないほうがよっぽど後悔する。
 ようやく見つけた少女は、見るからに危うい。元々白い肌は青白く、感情の失われた目は深く深く、まるで海の底のように暗くなっていた。
 なんとか腕をつかむと、その細さに驚いた。これが本当に、さっき俺の手を振りほどいたのと同じ相手のものだろうか?

 体を引き上げると、抵抗はされなかった。海面から出るころには、俺の体はドロドロだった。もう最悪だ。今すぐに帰って風呂にでも浸かりたい。
 だが、事は簡単には進まないようだ。消化液の表面は触手のように形を変えると、俺に向かって伸びてくる。くそっ、意地でも逃がさないつもりか。
 なんと避け続けるが、いかんせんスペースが狭すぎる。こうなったら、天井を突き破るしかない。

「アイスランス!」

 氷の矢を天井に投げつけると、上空には穴が開いた。だが、すぐに修復が始まっている。足元にに迫っていた触手は、悲鳴を上げるように左右に揺れた。
 それでも、すぐに穴はすぐに修復されはじめた。ゆっくりしている時間なんてないようだ。


「間に合えーーーー!」

 塞ぎつつある穴を、全力で翔る。表面は液体で光っている。多分、俺達を溶かして来た液体だろう。もし穴に捉えられれば、肉体が一瞬でスライムになるのは想像が出来た。
 そんなのは嫌だ。少なくとも俺はまだ、人でいたい。

「うりゃあああああああああああああ!」

 速度を上げるべく、気合を入れる。
 くそっ、道は確実に狭くなってきている。今は人が二人ぐらいギリギリと通れるぐらいのスペースしかない。
 それでも、俺の速さが勝った。徐々に狭くなっていく空間を抜けると、光が差し込んで来た。
 眼下に広がるのは見知らぬ大陸だった。ゆっくりと降り立つと、大陸は暴れるように揺れた。まるで生きている様だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

処理中です...