徳川慶勝、黒船を討つ

克全

文字の大きさ
52 / 56
第1章

49話

しおりを挟む
 一八五二年、徳川慶恕と徳川幕府は、準備万端整えて米国艦隊の来襲を待ち構えていた。
 国内の職人を総動員して、迎撃に必要な戦力を整えていた。
 交易利益を使って、蘭国と普国から大量の武器と軍艦を輸入した。
 英国と仏国を相手に清国内で戦い、米国と露国を仮想敵国としている徳川慶恕と徳川幕府は、普国のフリードリヒ・ヴィルヘルム四世を同盟相手と考えていた。

 一八四八年にフランスで起きた二月革命と、その一カ月後にベルリンで起きた三月革命で、普国は他の独逸諸国と共に混乱していた。
 そこに国内産業を支えるだけの莫大な武器発注があったのだ。
 徳川幕府から流れ込む銀は、普国にはなくてはならない物となり、最新式小銃ドライゼ銃を輸出するほどだった。

 徳川慶恕は、新たに交易相手となった普国と蘭国から、英国・仏国・米国・露国の情報を手に入れていた。
 米国艦隊が江戸にやってくるまでに、迎え撃つ艦艇を増産していた。
 江戸湾お台場を増やし、砲門数も増やしていた。

 特に期待していたのが、蘭国に発注し完成している七十四門プロペラスクリュー戦列艦だった。
 二隻で銀三六三五貫もの大金をつぎ込んだ、虎の子の戦列艦だった。
 この二隻が南蛮から到着すれば、遠征で補給の厳しい米国艦隊と戦う事も不可能ではなかった。

 蘭国から部品を輸入して蒸気機関を組み立てる方法も、順調に進んでいた。
 国産部品から蒸気機関を組み立てる方法も、徐々に成果を出していた。
 蘭国から部品を輸入して組み立てる方法では、八門カッターをプロペラスクリュー式の蒸気船に改造する事に成功していた。
 フリゲートや戦列艦のような、大型艦に使えるまでには至らなかったが、国難において資金を惜しむ事はできず、莫大な交易利益を投入した。

 キャンパーダウンの海戦で英国の破れた蘭国は、当時仏国に衛星国化されていいたこともあり、トラファルガーの海戦で敗れた仏国が弱腰になったせいで、植民地の大部分を英国に奪われていた。

 この恨みがあったのかもしれないが、蘭国は徳川幕府に味方して、幕府の注文で七十四門プロペラスクリュー戦列艦を建造している事を秘匿していた。
 建造自体は秘匿できないが、自国海軍用と偽っていた。
 徳川慶恕も蘭国に利を与えるため、更に新造戦列艦の建造を依頼した。
 
 排水量五七〇〇トン、八インチ砲 三十四門・三十二ポンド砲 五十六門・六十八ポンド砲一門の、九十一門二等プロペラスクリュー戦列艦を二隻、銀六四四三貫もの大金で発注していた。
 
「現有尾張藩艦隊」
八門カッター   :二百余隻
十門スクナー   :百余隻
二十四門フリゲート:七隻
三十八門フリゲート:七隻
七十四門戦列艦  :三隻
七十四門プロペラスクリュー戦列艦:二隻

「参考資料」
プロペラスクリュー式二等戦艦デファイアンス号建造費
(十一万九千四百二十二ポンド)
一ポンド二十シリング二百四十ペンス
クラウン銀貨:五シリング(銀二五・一五五二〇七グラム)
フローリン銀貨:二シリング(銀一〇・四六二一二グラム)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する

克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。

仇討浪人と座頭梅一

克全
歴史・時代
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。 旗本の大道寺長十郎直賢は主君の仇を討つために、役目を辞して犯人につながる情報を集めていた。盗賊桜小僧こと梅一は、目が見えるのに盗みの技の為に盲人といして育てられたが、悪人が許せずに暗殺者との二足の草鞋を履いていた。そんな二人が出会う事で将軍家の陰謀が暴かれることになる。

幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。

克全
歴史・時代
 西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。  幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。  北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。  清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。  色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。 一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。 印旛沼開拓は成功するのか? 蝦夷開拓は成功するのか? オロシャとは戦争になるのか? 蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか? それともオロシャになるのか? 西洋帆船は導入されるのか? 幕府は開国に踏み切れるのか? アイヌとの関係はどうなるのか? 幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

【読者賞】江戸の飯屋『やわらぎ亭』〜元武家娘が一膳でほぐす人と心〜

旅する書斎(☆ほしい)
歴史・時代
【第11回歴史・時代小説大賞 読者賞(読者投票1位)受賞】 文化文政の江戸・深川。 人知れず佇む一軒の飯屋――『やわらぎ亭』。 暖簾を掲げるのは、元武家の娘・おし乃。 家も家族も失い、父の形見の包丁一つで町に飛び込んだ彼女は、 「旨い飯で人の心をほどく」を信条に、今日も竈に火を入れる。 常連は、職人、火消し、子どもたち、そして──町奉行・遠山金四郎!? 変装してまで通い詰めるその理由は、一膳に込められた想いと味。 鯛茶漬け、芋がらの煮物、あんこう鍋…… その料理の奥に、江戸の暮らしと誇りが宿る。 涙も笑いも、湯気とともに立ち上る。 これは、舌と心を温める、江戸人情グルメ劇。

【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記

糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。 それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。 かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。 ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。 ※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。

処理中です...