53 / 63
第三章
52話ローガン王視点
しおりを挟む
「ルーク殿下。
本気でオリビア陛下に悪いと思っておられるのなら、素直に謝らなければいけませんし、二度と人を殺してはいけません。
それに何度も申し上げているように、口だけでなく態度で示さないと、オリビア陛下には伝わりません。
伝わらない状態で無理にオリビア陛下に会おうされると、またオリビア陛下が壊れてしまわれますぞ!」
ジェイデンがルーク殿を説得している。
いつ見ていても恐怖で全身が震えてしまう。
ジェイデンはよく震える事もなく、声も出せるモノだ。
例え声が出たとしても、余なら震えで誰にも理解できない声になっていただろう。
これが胆力の差だと言われればそれだけだが、正直自分が情けなくなる。
「殺さないって言っているだろ!
約束するって言っているだろ!
だからジェイデンを殺していないし、変化もさせてないじゃないか!
それをお姉ちゃんに言えばいいじゃないか!」
「それだけでは信じてもらえないから、こうして命を賭けて話しているのです。
ルーク殿下には怖くない事なのでしょうが、御優しいオリビア陛下には、目の前で人が弾け飛び、血と肉片となって自分に跳んでくるというのは、心が壊れるほどの恐怖なのですよ!
お忘れになられたのですか!」
「忘れてないよ!
忘れてないからこうして頼んでるじゃないか!
我慢してるじゃないか!
なんでも言う事聞くから、助けてよ!」
「なんでも言う事を聞くと言われながら、なにも言う通りにしてくださらないではありませんか!
オリビア陛下が安心して会えるように、服装を王族に相応しいモノに変えていただき、人間の女性を妻を迎え、その女性と一緒に来ていただきたいと、何度も何度も申し上げているではありませんか」
ジェイデンは命知らずとしか言いようがない。
ここ二年、何度も何度もこれと同じ現場に立ち会っているが、その度に歯の根が合わないほど激しく震えてしまう。
脚もガクガク震えている。
血が頭から引いて、この場で昏倒しそうになる。
頭では、もうルークが怒り狂って魔法攻撃しないというのは理解している。
この二年間で何十、いや、何百と繰り返された言い争いだ。
今更ルークが怒り狂わないのは分かっているのだ。
分かっているのだが、それでも恐ろしいモノは恐ろしいのだ。
「それは嫌だって言ったよ。
それ以外の事を考えてよ!」
「それ以外の方法など思いつかないと何度も申し上げているでしょう。
なにも本心から人間の女性を愛せと言っている訳ではありません。
オリビア陛下が安心出来るように、形だけ整えてくださいと、そう申し上げているのです。
それもできないと申されて、それでよくオリビア陛下を大切だと口にされますね」
もうやめてくれ、ジェイデン。
もう余の心の方がもたない!
本気でオリビア陛下に悪いと思っておられるのなら、素直に謝らなければいけませんし、二度と人を殺してはいけません。
それに何度も申し上げているように、口だけでなく態度で示さないと、オリビア陛下には伝わりません。
伝わらない状態で無理にオリビア陛下に会おうされると、またオリビア陛下が壊れてしまわれますぞ!」
ジェイデンがルーク殿を説得している。
いつ見ていても恐怖で全身が震えてしまう。
ジェイデンはよく震える事もなく、声も出せるモノだ。
例え声が出たとしても、余なら震えで誰にも理解できない声になっていただろう。
これが胆力の差だと言われればそれだけだが、正直自分が情けなくなる。
「殺さないって言っているだろ!
約束するって言っているだろ!
だからジェイデンを殺していないし、変化もさせてないじゃないか!
それをお姉ちゃんに言えばいいじゃないか!」
「それだけでは信じてもらえないから、こうして命を賭けて話しているのです。
ルーク殿下には怖くない事なのでしょうが、御優しいオリビア陛下には、目の前で人が弾け飛び、血と肉片となって自分に跳んでくるというのは、心が壊れるほどの恐怖なのですよ!
お忘れになられたのですか!」
「忘れてないよ!
忘れてないからこうして頼んでるじゃないか!
我慢してるじゃないか!
なんでも言う事聞くから、助けてよ!」
「なんでも言う事を聞くと言われながら、なにも言う通りにしてくださらないではありませんか!
オリビア陛下が安心して会えるように、服装を王族に相応しいモノに変えていただき、人間の女性を妻を迎え、その女性と一緒に来ていただきたいと、何度も何度も申し上げているではありませんか」
ジェイデンは命知らずとしか言いようがない。
ここ二年、何度も何度もこれと同じ現場に立ち会っているが、その度に歯の根が合わないほど激しく震えてしまう。
脚もガクガク震えている。
血が頭から引いて、この場で昏倒しそうになる。
頭では、もうルークが怒り狂って魔法攻撃しないというのは理解している。
この二年間で何十、いや、何百と繰り返された言い争いだ。
今更ルークが怒り狂わないのは分かっているのだ。
分かっているのだが、それでも恐ろしいモノは恐ろしいのだ。
「それは嫌だって言ったよ。
それ以外の事を考えてよ!」
「それ以外の方法など思いつかないと何度も申し上げているでしょう。
なにも本心から人間の女性を愛せと言っている訳ではありません。
オリビア陛下が安心出来るように、形だけ整えてくださいと、そう申し上げているのです。
それもできないと申されて、それでよくオリビア陛下を大切だと口にされますね」
もうやめてくれ、ジェイデン。
もう余の心の方がもたない!
21
あなたにおすすめの小説
婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。
三葉 空
恋愛
ユリナはバラノン伯爵家の長女であり、公爵子息のブリックス・オメルダと婚約していた。しかし、ブリックスは身勝手な理由で彼女に婚約破棄を言い渡す。さらに、元から妹ばかり可愛がっていた両親にも愛想を尽かされ、家から追放されてしまう。ユリナは全てを失いショックを受けるが、直後に聖女としての力に目覚める。そして、神殿の神職たちだけでなく、王家からも丁重に扱われる。さらに、お祈りをするだけでたんまりと給料をもらえるチート職業、それが聖女。さらに、イケメン王子のレオルドに見初められて求愛を受ける。どん底から一転、一気に幸せを掴み取った。その事実を知った元婚約者と元家族は……
捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています
h.h
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。
自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。
しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━?
「おかえりなさいませ、皇太子殿下」
「は? 皇太子? 誰が?」
「俺と婚約してほしいんだが」
「はい?」
なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。
「君の代わりはいくらでもいる」と言われたので、聖女をやめました。それで国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。
木山楽斗
恋愛
聖女であるルルメアは、王国に辟易としていた。
国王も王子達も、部下を道具としか思っておらず、自国を発展させるために苛烈な業務を強いてくる王国に、彼女は疲れ果てていたのだ。
ある時、ルルメアは自身の直接の上司である第三王子に抗議することにした。
しかし、王子から返って来たのは、「嫌ならやめてもらっていい。君の代わりはいくらでもいる」という返答だけだ。
その言葉を聞いた時、ルルメアの中で何かの糸が切れた。
「それなら、やめさせてもらいます」それだけいって、彼女は王城を後にしたのだ。
その後、ルルメアは王国を出て行くことにした。これ以上、この悪辣な国にいても無駄だと思ったからだ。
こうして、ルルメアは隣国に移るのだった。
ルルメアが隣国に移ってからしばらくして、彼女の元にある知らせが届いた。
それは、彼の王国が自分がいなくなったことで、大変なことになっているという知らせである。
しかし、そんな知らせを受けても、彼女の心は動かなかった。自分には、関係がない。ルルメアは、そう結論付けるのだった。
捨てられた聖女は穢れた大地に立つ
宵森 灯理
恋愛
かつて聖女を輩出したマルシーヌ聖公家のソフィーとギルレーヌ王家のセルジュ王子とは古くからの慣わしにより婚約していたが、突然王子から婚約者をソフィーから妹のポレットに交代したいと言われる。ソフィーの知らぬ間に、セルジュ王子とソフィーの妹のポレットは恋仲になっていたのだ。
両親も王族もポレットの方が相応しいと宣い、ソフィーは婚約者から外されてしまった。放逐された失意のソフィーはドラゴンに急襲され穢れた大地となった隣国へ救済に行くことに決める。
実際に行ってみると、苦しむ人々を前にソフィーは、己の無力さと浅はかさを痛感するのだった。それでも一人の神官として浄化による救助活動に勤しむソフィーの前に、かつての学友、ファウロスが現れた。
そして国と民を救う為、自分と契約結婚してこの国に留まって欲しいと懇願されるのだった。
ソフィーは苦しむ民の為に、その契約を受け入れ、浄化の活動を本格化させる。人々を救っていく中でファウロスに特別な感情を抱きようになっていったが、あくまで契約結婚なのでその気持ちを抑え続けていた。
そんな中で人々はソフィーを聖女、と呼ぶようになっていった。彼女の名声が高まると、急に故郷から帰ってくるように、と命令が来た。ソフィーの身柄を自国に戻し、名声を利用とする為に。ソフィーとファウロスは、それを阻止するべく動き出したのだった。
辺境伯聖女は城から追い出される~もう王子もこの国もどうでもいいわ~
サイコちゃん
恋愛
聖女エイリスは結界しか張れないため、辺境伯として国境沿いの城に住んでいた。しかし突如王子がやってきて、ある少女と勝負をしろという。その少女はエイリスとは違い、聖女の資質全てを備えていた。もし負けたら聖女の立場と爵位を剥奪すると言うが……あることが切欠で全力を発揮できるようになっていたエイリスはわざと負けることする。そして国は真の聖女を失う――
捨てられた私が聖女だったようですね 今さら婚約を申し込まれても、お断りです
木嶋隆太
恋愛
聖女の力を持つ人間は、その凄まじい魔法の力で国の繁栄の手助けを行う。その聖女には、聖女候補の中から一人だけが選ばれる。私もそんな聖女候補だったが、唯一のスラム出身だったため、婚約関係にあった王子にもたいそう嫌われていた。他の聖女候補にいじめられながらも、必死に生き抜いた。そして、聖女の儀式の日。王子がもっとも愛していた女、王子目線で最有力候補だったジャネットは聖女じゃなかった。そして、聖女になったのは私だった。聖女の力を手に入れた私はこれまでの聖女同様国のために……働くわけがないでしょう! 今さら、優しくしたって無駄。私はこの聖女の力で、自由に生きるんだから!
【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
妹に裏切られた聖女は娼館で競りにかけられてハーレムに迎えられる~あれ? ハーレムの主人って妹が執心してた相手じゃね?~
サイコちゃん
恋愛
妹に裏切られたアナベルは聖女として娼館で競りにかけられていた。聖女に恨みがある男達は殺気立った様子で競り続ける。そんな中、謎の美青年が驚くべき値段でアナベルを身請けした。彼はアナベルをハーレムへ迎えると言い、船に乗せて隣国へと運んだ。そこで出会ったのは妹が執心してた隣国の王子――彼がこのハーレムの主人だったのだ。外交と称して、隣国の王子を落とそうとやってきた妹は彼の寵姫となった姉を見て、気も狂わんばかりに怒り散らす……それを見詰める王子の目に軽蔑の色が浮かんでいることに気付かぬまま――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる