幼い頃に魔境に捨てたくせに、今更戻れと言われて戻るはずがないでしょ!

克全

文字の大きさ
15 / 26
第一章

第15話:ご機嫌・カチュア視点

しおりを挟む
 今日の金猫ちゃんは特に楽しそうです。
 別に不機嫌な日があると言っているわけではありません。
 何時私と遊んでいても楽しそうにしてくれているのですが、その楽しそうな態度が、今日は特に目を引くだけです。
 私はそんな金猫ちゃんを見ていると、自分までワクワクと愉しくなるのですが、フェアリーは違うようで、とても不審な眼で金猫ちゃんを見ています。

「金猫、あんたなんか悪巧みしているでしょう?
 さっき魚を獲りに行っていたけど、その時に他の事もやったわね!?」

 フェアリーが金猫ちゃんに詰め寄って怒っています。
 金猫ちゃんが私とフェアリーに内緒で何かやったのでしょうか?
 もし本当にそうだとしたら、少し寂しくなります。
 ここには私とフェアリーと金猫ちゃんしかいないのです。
 内緒にされると哀しくなってしまいます。

「うみゃああああああ!」

「まあ!」

 少しびっくりして声をあげてしまいました。
 金猫ちゃんは誇り高い性格のようで、普段はベタベタとひっついたりはしません。
 なのに、急に近づいてきて身体を摺り寄せてくれました。
 フワフワモコモコした毛並みは、とても柔らかく肌触りがいいのです。
 私より大きな体に包まれると、とてもいい香りがして、幸せな気分になります。

「お、こら、ひっつくんじゃない、カチュアを独り占めするな、こら!」

 フェアリーがカンカンに怒って文句を言っています。
 私を巡って取り合いが起こるなんて、フェアリーが教えてくれたお話のお姫様になった気分です。
 私は公爵令嬢で、お姫様でもあるとフェアリーが言いますが、公爵令嬢というのもお姫様というのも、全然実感がありません。
 でも、こんなに幸せを感じられるのがお姫様なら、私は確かにお姫様です。
 お話のお姫様も、二人の王子にきゅうこんされて、同じように幸せをかんじたのでしょうか?

「うみゃああああああ!」

「あああああ、狡い狡い狡い、狡いぞ金猫!
 カチュアの復讐をする時は、私にもやらしてくれると言ってたじゃないか。
 それじゃあ約束違反だぞ、こら!」

 金猫ちゃんとフェアリーが話をしていますが、私には意味が分かりません。
 いえ、全然分からない訳ではないのですが、ふわっとしか分かりません。
 こんな時、私は自分が人間であることが哀しくなります。
 金猫ちゃんと同じだったら、この護られた場所から出ても平気なのに。
 金猫ちゃんと一緒に、大魔境という所を思いっきり駆けまわれたのに。

 金猫ちゃんと同じでなくても、フェアリーと同じだったら、三人で仲良くお話ができたのに、今はフェアリーが教えてくれないと、金猫ちゃんの言葉が分かりません。
 そん風に思ってしまうと、哀しくて涙がポロポロと零れ落ちてしまいました。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結】『妹の結婚の邪魔になる』と家族に殺されかけた妖精の愛し子の令嬢は、森の奥で引きこもり魔術師と出会いました。

夏灯みかん
恋愛
メリルはアジュール王国侯爵家の長女。幼いころから妖精の声が聞こえるということで、家族から気味悪がられ、屋敷から出ずにひっそりと暮らしていた。しかし、花の妖精の異名を持つ美しい妹アネッサが王太子と婚約したことで、両親はメリルを一族の恥と思い、人知れず殺そうとした。 妖精たちの助けで屋敷を出たメリルは、時間の止まったような不思議な森の奥の一軒家で暮らす魔術師のアルヴィンと出会い、一緒に暮らすことになった。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

妹に婚約者を奪われたけど、婚約者の兄に拾われて幸せになる

ワールド
恋愛
妹のリリアナは私より可愛い。それに才色兼備で姉である私は公爵家の中で落ちこぼれだった。 でも、愛する婚約者マルナールがいるからリリアナや家族からの視線に耐えられた。 しかし、ある日リリアナに婚約者を奪われてしまう。 「すまん、別れてくれ」 「私の方が好きなんですって? お姉さま」 「お前はもういらない」 様々な人からの裏切りと告白で私は公爵家を追放された。 それは終わりであり始まりだった。 路頭に迷っていると、とても爽やかな顔立ちをした公爵に。 「なんだ? この可愛い……女性は?」 私は拾われた。そして、ここから逆襲が始まった。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

【完結】私が愛されるのを見ていなさい

芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定) 公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。 絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。 ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。 完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。  立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

戻る場所がなくなったようなので別人として生きます

しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。 子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。 しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。 そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。 見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。 でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。 リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。

処理中です...