持参金が用意できない貧乏士族令嬢は、幼馴染に婚約解消を申し込み、家族のために冒険者になる。

克全

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第二章貴族偏

凱歌

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 強く、とても強く死を意識しましたが、私は死にませんでした。
 ドウラさんが、遠距離から魔法書の回復魔法をとばしてくれたのです。
 イヴァンとダニエルまで左手に魔法書を持ち、回復魔法を飛ばしてくれています。
 貴男達は何をしているのですか?
 そんな余裕があるのなら、属性竜を追撃しなさい!

 私は二人の行動に怒りを感じましたが、そのお陰で死を免れたのも事実です。
 しかたく怒声を飲む込みました。
 まあ、今怒鳴れば吐血してしまうのですがね。
 私はまだ完治していない左腕を諦めて、槍を一旦魔法袋にしまい、属性竜素材の回復薬をがぶ飲みしました。

 王都に広大な屋敷が買えるような高価な回復薬です。
 騎士領の小城程度なら、簡単に買えるほどの金額でもあります。
 ですが、命には代えられません。
 いえ、属性竜の止めを刺せる機会を得るためなら、全財産を使っても構いません!
 その栄誉を目指して、ジョージ様とマルティン様が獅子奮迅の戦いをしています。
 私も負けてはいられません。

 さすがに属性竜素材の回復薬です。
 肺や肋骨が急速に回復していくのが分かります。
 ですが、強力な分、副作用も強いのが属性竜素材の回復薬です。
 治す場所もないのに飲んでしまうと、身体に負担がかかり死んでしまう事もあるのが、属性竜素材回復薬の恐ろしい所です。

 ですが、今はそんな事を言っている場合ではありません。
 半生タイプの丸薬を口に含んで戦線復帰です。
 この後無傷で斬り抜けられるなどと思ってはいません。
 死と隣り合わせの戦いを再開するのです!

 ジョージ様とマルティン様が血反吐を吐きながら跳ね飛ばされます。
 イヴァンとダニエルが慌てて回復魔法をとばします。
 エマとニカが再度シンクロ攻撃魔法を放ちます。
 今が最大のチャンスです。
 シンクロ攻撃魔法が属性竜の防御魔法を突破すれば、属性竜を狩れます。

 でも、属性竜が防ぎ切った時は、延々と戦いが続きます。
 人間の体力しかない私達の方が断然不利です。
 だから、味方撃ちなど恐れはしません!
 シンクロ攻撃魔法をこの身に受けることになっても、丸薬の効果で死ぬ事はないでしょう。

 私は、属性竜とシンクロ攻撃魔法が激突している瞬間に、属性竜の後頭部に再度近づき、渾身の一撃を叩き込みました。
 過剰攻撃になって多くの素材を失うことになろうと、ここで属性竜を斃すのです。
 狩るのではなく殺すだけとなっても、これで決着をつけるのです。
 長槍をダメにすることになろうと、最初から魔法書の攻撃魔法を長槍に付与して、後頸部から脳に槍を叩き込みました!

 勝利を、属性竜を斃した手応えと共に、属性竜が展開していた防御魔法が消失して、シンクロ攻撃魔法の余波が私を圧し包みました。
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