持参金が用意できない貧乏士族令嬢は、幼馴染に婚約解消を申し込み、家族のために冒険者になる。

克全

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第二章貴族偏

告白合戦

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「ダメだ、ダメだ、ダメだ。
 皇子殿下であろうと、後からしゃしゃり出てきてもらっては困ります。
 俺はずっとラナの事が好きだったのだ。
 ラナと結婚するのは俺だ。
 ラナ、もう知ってくれているとは思うが、ずっと好きだった。
 どうか俺と結婚してくれ」

 誰が知っていたというのですか?
 そんな事は全然知りませんでした!
 急に変な事を言うのは止めてください、ダニエル!

「そういうお前も、弟のくせにしゃしゃり出てくるんじゃない。
 ラナの事だから、私やダニエルの気持ちには気がついていなかったんだろ?
 ラナが気付いてくれるまでは、自然に任せるつもりだった。
 自分から告白するつもりはなかったのだが、ヨジップ殿下がプロポーズされた以上、もう黙っているわけにはいかない。
 私もラナの事がずっと好きだった。
 真剣に結婚の事を考えてくれないか」

 イヴァン!
 貴男もですか?!
 貴男も私の事を好きだったというのですか?
 私は、イヴァンの気持ちも、ダニエルのアピールも、全く気がつかない鈍感だったというのですか?

 なにか、落ち込んでしまいます。
 私はそんなに鈍感なのでしょうか?
 とても女子力が低いのでしょうか?
 それで乙女心が疼くと考えていたなんて、恥ずかし過ぎます。
 でも、それでも、そう簡単に恋する気持ちを諦めたくはありません。
 だって、婚約者に別れを告げてまで冒険者になったのですから。
 命を賭けて、我儘を言っても許されるだけの、努力をしてきたのですもの。

「待ってください。
 私が鈍感だという事はよくわかりました。
 ですから、イヴァンとダニエルの告白には、とても驚いています。
 ヨジップ殿下の告白にも、いえ、皇室の意向にも驚いています。
 正直、直ぐに答えを出せません。
 どうか家族と相談する時間をください」

 時間稼ぎをしても、どうなるものでもないのは、分かっています。
 家族に相談するとはいっても、頼りになるのは母上だけでしょう。
 独身で恋愛経験のない妹達に相談しても、役に立つ話を聞けるとは思えません。
 まあ、母上に相談できるのは、身分に関係ない純粋な恋愛話ですね。
 皇室と城伯家の縁組の大変さ、政略結婚については、母上には分からない事です。

 でも、それでいいと思うのです。
 私は政略決婚がしたくて、命懸けで戦ってきたわけではありません。
 皇族になりたくて、属性竜を狩ったわけではないのです。
 最初は、家族にお腹一杯の食事をさせたくて、冒険者になったのです。
 ある程度稼げるようになってからは、妹達に好きな男性と結婚できるようにしてあげたくて、頑張ってきたのです。
 そう考えたら、私の選ぶべき道がはっきりしました!
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