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第二章貴族偏

割り切り

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「殿下、ここはラナの判断に任せましょう。
 何を選ぼうとも、ラナが皇室に逆らう事はありません。
 ゲイツ家とゲイツ一族も、皇室に逆らう事はありません。
 だから追い込むようなことは止めてください。
 皇室に逆らう事はなくても、見限る事はあるのですから」

 ジョージ様がヨジップ殿下に諫言されています。
 その通りです。
 私は亡き父上の名を穢すつもりはりません。
 ホセイ家が、ペタル・ホセイの娘が皇室に謀叛を起こしたなどと、史書に残すことは絶対に嫌なのです。

「殿下、私が皇室に刃を向ける事は絶対にありません。
 亡き父の名に誓って約束いたします。
 私は鈍感な女なのかもしれませんが、それでも女なのです。
 心から愛する人と結ばれたいと思っているのです。
 それを分かっていただけませんか?」

 嘘偽りのない、私の本心を訴えました。
 王侯貴族の常識からすれば、噴飯モノなのかもしれません。
 結婚は政略で行い、恋は跡継ぎを作ってから愉しむ。
 それが貴族の結婚だと教わりました。
 徒士の時も、家格の合うラル徒士家のニコラと婚約していました。

 今思えば、本当にニコラを愛していたわけではありません。
 両家の両親が話し合って、許婚に決まってから、ラル徒士家を守り盛り立てていく結婚相手として、互いを理解しようとしていただけです。
 それが全部悪いとは思いませんし、王侯貴族も同じだと思います。

 ただ力を得たら、多少の我儘を言ってもいいのではないでしょうか?
 その我儘が、弱い者達を苦しめる事ならば、絶対に許されないと思います。
 家臣領民を不幸にするような我儘は、悪だと思います。
 でも、素敵な恋愛をしたいというのは、家臣領民を不幸にする事でしょうか?
 政略決婚をしなければ、家臣領民を不幸にしてしまのでしょうか?

 少なくとも私の場合は違うと思うのです。
 力を持っているのは私の方で、政略決婚をお願いされている立場です。
 皇室が相手だと微妙ですが、断っても家臣領民はもちろん、皇国の民も不幸にならないと思うのですが、間違っているでしょうか?

「分かった。
 ラナが鈍感な乙女だと言うのがよく分かった。
 少なくともラナを怒らせる事だけは止めた方がいいだろう。
 ゲイツ城伯は大丈夫だと言うが、女を怒らせると怖いというのは、結婚しているから骨身に染みて知っている。
 それに、ラナが敵に回らなくても、逃げてしまっては元も子もない。
 ヤイツ城伯やライツ城伯にまで逃げられてしまったら、光明を失ってしまう。
 皇帝陛下と皇太子殿下には私から伝える。
 だから今まで通り狩りを続けてくれ」
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