最優秀な双子の妹に婚約者を奪われました。

克全

文字の大きさ
40 / 48
第二章

第40話:命懸け

しおりを挟む
「呪術師団長殿、皇太子殿下の眼を治す方法はありませんか。
 どのような犠牲を強いる呪術でも構いません。
 術士の命を代償とする呪術でも構いません。
 方法があるのなら教えていただけませんか」

 マチルダ嬢は本気だった。
 本気で命を代償にしてもいいと考えていた。
 自分の命を代償にして皇太子殿下の失明を治せるのなら本望だった。

「どうやら本気のようですね。
 方法がないわけではありません。
 それに命まで代償にするわけではありません。
 ただ失明を治すためには自分の視力を代償にする必要があります。
 マチルダ嬢にはその覚悟があるようですね」

 ルーサン皇国の呪術師団長はマチルダ嬢の事を聞いていた。
 皇太子が無理を押し通して婚約した外国の令嬢だ。
 皇国に仕える者なら興味を持って情報収集するのは当然だった。
 情報を収集して事情を知っているからといって、マチルダ嬢が自分の命や視力を代償にして皇太子殿下の治療をするのが当然とは、全く考えていなかった。

 長年ルーサン皇国に仕えてきた呪術師団長だからこそ、皇族に取り入る者の多くが品性下劣な邪欲に満ちた屑だと言う現実を見てきた。
 噂ではマチルダ嬢は淑やかで私欲のない令嬢だとは聞いてはいたし、遠征中の動向も邪悪なモノを感じていなかったが、それが仮面ではないとは言い切れない。
 だが今こうして決意に満ちた目を見れば分かる、マチルダ嬢の高潔な魂が。

 しかし全く何も問題がないわけではなかった。
 当然だが情報を集めていた呪術師団長は知っていた。
 サーニン皇太子がマチルダ嬢を溺愛している事を。
 マチルダ嬢が失明するような呪術を教えたら、サーニン皇太子に逆恨みされてしまい、どのような罰を受けるか分からない事を。

「ただその呪術をお教えする訳にはいきません。
 何故ならその呪術は禁呪なのです。
 術士の命や身体の一部を代償とするような呪術は、皇国の法で禁止されています。
 権力者が自分や家族の為に術士や民を生贄にするような術は、魔術であろうと呪術であろうと禁止されているのです。
 皇太子殿下もそのような事は望んでおられないでしょう。
 だからマチルダ嬢のお教えする訳にはいかないのです」

 マチルダ嬢はこれ以上呪術師団長に頼んでも無理だと理解した。
 だからと言って皇太子殿下の失明を治す事を諦めた訳ではなかった。
 呪術師団長が教えてくれないのなら、他に教えてくれる人を探せばいい。
 探しても誰もいなかったら、自分で書物を調べて探し出せばいい。
 マチルダ嬢はそう考えたのだ。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

【完結】忌子と呼ばれ婚約破棄された公爵令嬢、追放され『野獣』と呼ばれる顔も知らない辺境伯に嫁ぎました

葉桜鹿乃
恋愛
「よくもぬけぬけと……今まで隠していたのだな」 昨日まで優しく微笑みかけてくれていた王太子はもういない。 双子の妹として産まれ、忌子、とされ、王家に嫁がせ発言力を高めるための『道具』として育てられた私、メルクール。 一つ上の姉として生きてきたブレンダが、王太子に私たちが本当は双子でという話をしてしまった。 この国では双子の妹ないしは弟は忌子として嫌われる。産まれたその場で殺されることもある。 それを隠して『道具』として育てられ、教育を施された私はまだ幸せだったかもしれないが、姉が王太子妃の座を妬んで真実を明かしてしまった。 王太子妃教育も厳しかったけれど耐えてきたのは、王宮に嫁ぎさえすればもうこの嘘を忘れて新しく生きることができると思ったからだったのに…。 両親、そして婚約していた事すら恥とした王室により、私は独身で社交性の無い、顔も知らない『野獣』と呼ばれる辺境伯の元に厄介払い、もとい、嫁ぐ事となったのだが、辺境伯領にいたのは淡い金髪に青い瞳の儚げに見える美青年で……? ※感想の取り扱いについては近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも別名義にて掲載予定です。

【完結】猫を被ってる妹に悪役令嬢を押し付けられたお陰で人生180度変わりました。

本田ゆき
恋愛
「お姉様、可愛い妹のお願いです。」 そう妹のユーリに乗せられ、私はまんまと悪役令嬢として世に名前を覚えられ、終いには屋敷を追放されてしまった。 しかし、自由の身になった私に怖いものなんて何もない! もともと好きでもない男と結婚なんてしたくなかったし堅苦しい屋敷も好きでなかった私にとってそれは幸運なことだった!? ※小説家になろうとカクヨムでも掲載しています。 3月20日 HOTランキング8位!? 何だか沢山の人に見て頂いたみたいでありがとうございます!! 感想あんまり返せてないですがちゃんと読んでます! ありがとうございます! 3月21日 HOTランキング5位人気ランキング4位…… イッタイ ナニガ オコッテンダ…… ありがとうございます!!

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。 味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。 ――けれど、彼らは知らなかった。 彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。 すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、 復讐ではなく「関わらない」という選択。 だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。

聖女で美人の姉と妹に婚約者の王子と幼馴染をとられて婚約破棄「辛い」私だけが恋愛できず仲間外れの毎日

佐藤 美奈
恋愛
「好きな人ができたから別れたいんだ」 「相手はフローラお姉様ですよね?」 「その通りだ」 「わかりました。今までありがとう」 公爵令嬢アメリア・ヴァレンシュタインは婚約者のクロフォード・シュヴァインシュタイガー王子に呼び出されて婚約破棄を言い渡された。アメリアは全く感情が乱されることなく婚約破棄を受け入れた。 アメリアは婚約破棄されることを分かっていた。なので動揺することはなかったが心に悔しさだけが残る。 三姉妹の次女として生まれ内気でおとなしい性格のアメリアは、気が強く図々しい性格の聖女である姉のフローラと妹のエリザベスに婚約者と幼馴染をとられてしまう。 信頼していた婚約者と幼馴染は性格に問題のある姉と妹と肉体関係を持って、アメリアに冷たい態度をとるようになる。アメリアだけが恋愛できず仲間外れにされる辛い毎日を過ごすことになった―― 閲覧注意

婚約者と家族に裏切られたので小さな反撃をしたら、大変なことになったみたいです

柚木ゆず
恋愛
 コストール子爵令嬢マドゥレーヌ。彼女はある日、実父、継母、腹違いの妹、そして婚約者に裏切られ、コストール家を追放されることとなってしまいました。  ですがその際にマドゥレーヌが咄嗟に口にした『ある言葉』によって、マドゥレーヌが去ったあとのコストール家では大変なことが起きるのでした――。

婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない

nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

処理中です...