仇討浪人と座頭梅一

克全

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第一章

第十一話:御用改め

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 藤壺を始めて相方にした日から二十日が過ぎていた。
 賭場にいる時間が極端に短くなったことで、梅一の連勝記録は途切れた。
 だがそれでも梅一の賭け方は変わらなかった。
 賭場の勢いを悪くしないように、丁方と半方の駒がそろうようにした。
 それが評価されているのか、賭場での扱いはとてもよかった。

 その日も梅一は木戸が締まるずっと前、昼八ツに賭場屋敷を出た。
 そのまま隠れ家の一つに行って仮眠をとった。
 暁九ツ(午前零時)に賭場屋敷前に行くと、直ぐに助っ人が集まった。
 ひとり働きの梅一なら気にしなくてもいいのだが、普通の盗賊は辻番所や木戸番所を避けて盗み先まで行き、同じように人目を避けて無事に逃げなければいけない。

 そこは養父の大盗賊が取り仕切っただけに完璧だった。
 麹町永田町外神田にある賭場屋敷に盗みに入るには、亀有丁代地にある盗人宿、小さな小間物屋を利用できるのが凄かった。
 養父は江戸御府内に幾つもの盗人宿を持っている。
 それも木戸番所や辻番所の眼を盗むことを前提に用意してあるのだ。

「全員御門は通らないようにしてくれ。
 日本橋にある盗人宿まで気をつけるように」

 助っ人を差配している兄貴分が配下を注意をしていた。
 盗みに入った賭場屋敷がある場所は完全な武家地にある。
 もし江戸が戦場になる時には、総構えの役目を果たす武家地だ。
 相手が相当に力のある旗本ならば、全ての御門で厳しい改めがあるだろう。
 それを避けるには、御門を通ることなく日本橋にある盗人宿に入る必要があった。

 二十五人の助っ人達は、礼金も含めて二十一個の千両箱を置いていった。
 万が一にも身体改めがあった場合には、百両もの大金を持っている事は危険だ。
 だから二万千両は、亀有丁代地にある盗人宿の地下蔵に隠しておくことになった。
 二十五人は振り売りや担ぎ商人に変装して盗人宿を出た。
 元々彼らは堅気の商人に変装する事に離れていた。
 飴売り、呉服売り、小間物売り、膏薬売りなどに変装して日本橋を目指した。

「臨時の御用改めである。
 それぞれが持っている物を改める」

 三々五々に分かれて旗本屋敷の集まる武家地を出ようとしていた盗賊達だが、そう簡単に事は進まなかった。
 賭場屋敷の旗本は、最悪の想定を上回る事をやってきた。
 御門だけではなく、辻番所で臨時の御用改めを行えるだけの権力者だったのだ。
 刻限と方角を変えて日本橋を目指した盗人達は、何とか御用改めを誤魔化すことができたが、問題は小間物屋に偽装した盗人宿だった。

「御上の御用改めである、抵抗することなく全てを明らかにせよ」
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