仇討浪人と座頭梅一

克全

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第二章

第四十三話:引き込み役

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 熊の旦那こと大道寺長十郎は、梅一に会うために正宝寺の賭場に来ていた。
 浪人者の姿となり、編笠は外していたが、内部に鎖帷子を縫い込んだ頭巾を被って眼だけが出るようにしていた。
 最初はいかさまを博打に加わる気などなかったのだが、全く参加しないのも疑われるので、負けるのを承知で参加することにした。

 だが長十郎が負ける事はなかった。
 明らかに狙われていると分かる御家人がいたからだ。
 その御家人と反対の目に賭ければ、ほぼ間違いなく勝てるのだ。
 御家人を熱中させるために、時には御家人に勝たせるのだが、そんな時には壺振りの気配が変わるので、長十郎には簡単に見分けがついた。

 長十郎がほぼ負ける事無く五十両ほど稼いだ時に、梅一が現れた。
 直ぐに話をするのも疑われるし、一緒に賭場を出るのも疑われる。
 だから長十郎はほんの少し梅一に視線を送った。
 梅一が誰にも分からないようなわずかな動きをする。
 それから五度の勝負をして、長十郎は賭場を出て行った。

「お待たせいたしやした」

 半刻ほど過ぎて、梅一が浅草寺の境内にやってきた。
 この界隈で一番賑わっていて、目立たない所といえば浅草寺だった。
 盗みの技術を反復するために飛び跳ねるのも、刀を抜いて型の鍛錬を繰り返すにしても、浅草寺の広い境内はうってつけだった。
 そして何より、何かあった時に落ちあう約束をしていた場所でもあった。

「いや、それほど待ってはいないぞ」

「で、何か大事なお話でもあるのですか」

「先日分けてもらった金なのだが、屋敷に置いておくのも不安でな。
 どこか安全に保管できる場所はないか」

「金蔵でも建てられてはいかがですか。
 あれほどの金があれば、少々の普請をしても大金が残るでしょう」

「そんな事をすれば家人に不審がられてしまう。
 それに、お前のような者が相手だと、どれほどの蔵を建てても意味はあるまい」

「そうでもありませんよ、内蔵を建て増しして、腕自慢の侍を何人か召し抱えて、四人一組で見回りさせたら、あっしでも盗むのには苦労いたします。
 まあ、そんな時には手引きしてくれる者を入り込ませますがね。
 旦那が千代田のお城に忍び込まれる時も、手引きしてくれる仲間を御城勤めの中に紛れ込ませるんですよ。
 今からその準備をしておいてくださいよ」

 梅一が言う役割を引き込みという。
 盗みに入る商人の家や武家屋敷に、何年も前から仲間を住みこませるのだ。
 住み込む人間は、正体がばれないように常に細心の注意を払わなければならない。
 並の人間ではとても務まらないくらいの緊張を強いられる。
 気骨が折れる役目なのだ。

「ふむ、紹介状を書いた人間も疑われるだろうから、正直難しいな。
 だが今から徐々に準備するしかあるまい。
 入り込む人間はお前が手配してくれるのだろうな」

「旦那が紹介状を書いてくださるのなら、とびっきりの人間を紹介します」
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