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第三章
第五十二話:一橋屋敷の密談
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巳之介は大名家の上屋敷に忍び込む危険を十分に理解していた。
だから後をつけるのではなく、池原雲伯がどこに案内されるかを予測した。
大名家の当主や家族が住む母屋に入る事はないと考えた。
同時に中間部屋や下級藩士のお長屋に行く事もないと判断した。
何があっても当主に責任が及ばず、それでいて重要な話しをしても問題のない場所、それは上級家臣の家が並ぶ一角だと判断した。
表門からずっと後をつけるような真似をすれば、必ず見つかる。
そう判断した巳之介が、予測をつけて先回りしたのだ。
そしてその予測は見事に的中した。
細心の注意を払って選んだ場所から、池原雲伯が中間に案内されて、上級家臣屋敷が立ち並ぶ一角にやってきた。
巳之介はだからといって油断しなかった。
一橋家の家臣にも上級家臣の陪臣にも見つからないように、細心の注意を払って時間をかけ、安全を確認したうえで池原雲伯が案内された家の屋根裏に忍び込んだ。
慌てず細心の注意を払って天井裏を移動した。
池原雲伯が会っているのが誰なのか、どんな話をしているのかを確かめるために、でも見つからない事を最優先に、ゆっくりと居場所を探した。
「立石殿、これでは約束が違いますぞ。
わたくしに無料で御家人娘を抱かせてくれると言っていたではないですか。
事が上手した暁には、大奥の娘や旗本の姫を抱かせてくれると、証文まで書いて約束してくれたではないですか。
水谷殿がお腹をめされたからと言って、今更なかった事にはできませんぞ。
お恐れながらと訴え出れば、一橋公や若君まで処刑されるのですぞ」
「うかつな事を口にされるではない、雲伯殿。
壁に耳あり障子に目ありと申しますぞ」
聞き捨てならない内容だと思われる話が、巳之介の耳に聞こえてきた。
苛立つ池原雲伯は自制心が無くなっているのか、大きな声で訴えていたが、相手の立石という者が注意をすると、急に静かになった。
何かを話しているのか、それともにらみ合っているのか、天井裏に潜む巳之介には分からない事だった。
もう少し近づいて話を聞こうとした巳之介が、安全だと判断していた場所からわずかに近づいてしまったのだが、それを立石という者が気づいてしまった。
立石はなおも言いつのろうとする池原雲伯を手で制して、何の音も気配もたてずに、鴨居の槍かけに置かれていた槍を手に取った。
更に音も気配も立てずに部屋を移動して、巳之介が潜んでいる辺りを突き刺した。
百戦錬磨の巳之介だからこそ、直前に勘が働いた。
完全のさけることはできなかった、急所を外すことには成功した。
逃げるのに必要な脚を突かれるのも避けたが、その分左上腕を深々と貫かれてしまい、急いで天井裏を移動して外に出て、一橋家上屋敷からも逃げようとした。
「であえっ、狼藉者じゃ、必ず斬って捨てよ。
何も口にさせる事無く斬り殺すのじゃ。
雲伯殿、後をつけられましたね。
この失態、必ず償ってもらいますぞ」
だから後をつけるのではなく、池原雲伯がどこに案内されるかを予測した。
大名家の当主や家族が住む母屋に入る事はないと考えた。
同時に中間部屋や下級藩士のお長屋に行く事もないと判断した。
何があっても当主に責任が及ばず、それでいて重要な話しをしても問題のない場所、それは上級家臣の家が並ぶ一角だと判断した。
表門からずっと後をつけるような真似をすれば、必ず見つかる。
そう判断した巳之介が、予測をつけて先回りしたのだ。
そしてその予測は見事に的中した。
細心の注意を払って選んだ場所から、池原雲伯が中間に案内されて、上級家臣屋敷が立ち並ぶ一角にやってきた。
巳之介はだからといって油断しなかった。
一橋家の家臣にも上級家臣の陪臣にも見つからないように、細心の注意を払って時間をかけ、安全を確認したうえで池原雲伯が案内された家の屋根裏に忍び込んだ。
慌てず細心の注意を払って天井裏を移動した。
池原雲伯が会っているのが誰なのか、どんな話をしているのかを確かめるために、でも見つからない事を最優先に、ゆっくりと居場所を探した。
「立石殿、これでは約束が違いますぞ。
わたくしに無料で御家人娘を抱かせてくれると言っていたではないですか。
事が上手した暁には、大奥の娘や旗本の姫を抱かせてくれると、証文まで書いて約束してくれたではないですか。
水谷殿がお腹をめされたからと言って、今更なかった事にはできませんぞ。
お恐れながらと訴え出れば、一橋公や若君まで処刑されるのですぞ」
「うかつな事を口にされるではない、雲伯殿。
壁に耳あり障子に目ありと申しますぞ」
聞き捨てならない内容だと思われる話が、巳之介の耳に聞こえてきた。
苛立つ池原雲伯は自制心が無くなっているのか、大きな声で訴えていたが、相手の立石という者が注意をすると、急に静かになった。
何かを話しているのか、それともにらみ合っているのか、天井裏に潜む巳之介には分からない事だった。
もう少し近づいて話を聞こうとした巳之介が、安全だと判断していた場所からわずかに近づいてしまったのだが、それを立石という者が気づいてしまった。
立石はなおも言いつのろうとする池原雲伯を手で制して、何の音も気配もたてずに、鴨居の槍かけに置かれていた槍を手に取った。
更に音も気配も立てずに部屋を移動して、巳之介が潜んでいる辺りを突き刺した。
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