仇討浪人と座頭梅一

克全

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第四章

第七十五話:会津松平家

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「長十郎殿は何を申しているのだ。
 一橋家も田安家も否定し、更に尾州家と紀州家まで否定する。
 ではどこの誰に将軍家を継がせると言うのだ」

「会津松平家でございます。
 会津様の御家系は二代様の御血筋です。
 恐れながら八代様よりも宗家に近い御血筋なのではありませんか。
 
 大道寺長十郎の狙い目は盲点だった。
 徳川家治も田沼意次も、徳川秀忠が隠し子としていた会津松平家は、将軍家の後継候補から外していた。
 将軍家を継承するのは、東照神君の定められたご定法では尾州家か紀州家。
 八代徳川吉宗公が定められた法でも御三卿までだ。
 臣籍降下した血筋は将軍家の継承権を失うのだ。

 だがそれを厳密に解釈すれば、既に松平定国と松平定信に継承権はない。
 御三卿で残るのは一橋家だが、徳川家基を暗殺した黒幕にほぼ間違いのない、一橋治済の子弟を後継者にするのは、余りにも徳川家治に申し訳なさ過ぎる。
 だからと言って会津松平家から将軍家の後継者を迎えていいのか、田沼意次は急いで幕臣や三百諸侯が納得するか考えた。

 紀州徳川家も尾州徳川家も、次期将軍とすべき人間は分家から本家に入っている。
 厳密にいえば一度は臣籍降下しているのだ。
 それに、そこを厳しくとらえれば、そもそも一度分家して藩を興した八代様自体の将軍就任が無効になってしまう。
 八代様を例にとるのなら、一旦分家して臣籍降下した者も、御三家や御三卿の当主に就任した後なら、将軍を継ぐことができる事になる。

 田沼意次は会津松平家の系図を思い出していた。
 最初は隠し子として育てられていたが、三代様と駿河大納言が弟と認め、将軍家の連枝と認められている。
 初代保科正之は有能さと奥ゆかしさを買われ、幼くして将軍を継がれた四代様の後見人を見事に勤められ、会津松平家の名を大いに高められている。
 今なら二代様が隠された事は痂疲にならない可能性が高い。

 最初から将軍を出す事が認められていない水戸徳川家や、八代様と争って一度取り潰された形になっている尾州徳川家よりは筋目がいいかもしれない。
 会津松平家で思い出した範囲で問題なのは、夭折する者が多い事だが、今は四人が生き残っていて、子供のいない清水家や、後継者に不安な尾州家よりは血が厚い。
 だが今直ぐこの場で決めるのは早計だと田沼意次は考えた。

「悪い考えではありませんが、軽々しく決めていい事ではありません。
 幕府の全力を傾けて今一度後継者候補を調べるべきだと思われます」

 田沼意次の言葉を受けて、三人はもう一度真剣に考えることになった。

「次期将軍候補」
清水重好:清水徳川家初代当主
誕生:延享2年2月15日(1745年3月17日)
松平容頌:陸奥国会津藩五代藩主
誕生:寛保4年1月9日(1744年2月22日)
松平容詮:松平容頌の従弟で次期当主
誕生:寛延3年4月6日(1750年5月11日)
松平容住:松平容詮の長男
誕生:安永7年11月20日(1779年1月7日)
松平容章:松平容頌の叔父
誕生:享保12年
(松平容序:誕生予定)
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