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第四章
第八十四話:密談
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「何の用だ梅吉、いや、桜小僧と言うべきか」
大道寺長十郎は屋根裏に向かって言葉をかけた。
剣術の達人であり、忍び込みの技も習得しようとしている長十郎だ。
梅一が天井裏に入り込んだ事にいち早く気がついていた。
三千石に加増された事で、親類縁者から腕自慢の部屋住みや陪臣子弟を召し抱え、屋敷の警備を厳重にしていたのだが、全く役に立たなかった。
「旦那の目を欺くのは無理なようですね」
天井の板をずらして梅一が顔を出した。
何の屈託もない笑顔を見せている。
だが梅一は長十郎の名前も屋敷の場所も知らないわずだ。
それなのに何故この場所に忍び込むことができたのかと言えば、盗賊団の力を総動員して、徳川家基に忠誠を尽くしている幕臣を探したからだった。
盗みに入る先は事前に徹底的な調査をするのが梅一の盗賊団だ。
その能力があるからこそ、巳之介を助けることができたのだ。
武鑑や寛永諸家系図伝を読み調べ、口入屋から徳川家基の近臣だった旗本を聞き出し、旗本屋敷に出入りしている振り売りからも丁寧に話を聞きだしたのだ。
その集大成として、徳川家基の死後役目を辞して無役になったただ一人の旗本、大道寺長十郎直賢を見つけ出し、その屋敷に忍び込んだのだ。
「いったいなんのようなのだ、梅吉」
「今旦那の周囲がどうなっているのか確かめさせていただこうと思いましてね。
何と言っても一緒に盗みを働き人殺しをした仲ですからね。
今まで通り一緒に人殺しをしていただけるのか、それとも約束を反故にされるのか、旦那の口から直接お聞かせ願いたいと思いましてね。
それとも、旦那ではなく殿様と呼ばないとお答えくださいませんか」
梅一はわざと長十郎が怒るような話し方をした。
完璧に調べ上げた梅一は、長十郎が大目付に大抜擢された事を知ってた。
出入りの魚屋が、まるでわがことのように自慢していたからだ。
梅一としても長十郎と約束を交わした時とは立場が変わっていた。
気楽なひとり働きの盗賊から、大盗賊団の次期頭目になってしまっていた。
だから長十郎が縁を切ると言うのならそれでもよかった。
「ふん、旦那でも殿様でも好きな方で呼べばいい。
梅吉の事だから、もう全て調べ上げているのだろう。
どうせ某などは剣術以外は何の役にも立たない男よ。
大納言様の仇を討ちたくても、政の駆け引きなど全く分からず、天下万民の為といわれれば刀を抜く事もできぬ。
今までの働きで一時的に栄職に与えられだけだ。
直ぐに儀礼に失敗して役目を辞すことになる」
長十郎は吐き捨てるように言った。
結局長十郎の一橋治済を討つという願いは叶えられなかった。
徳川家基殺しに係わった者を全員見つけ出すためと言われてしまうと、勝手に一橋治済を討つこともできなくなってしまった。
そんな事をすれば、徳川家基殺しに手を染めながら、何の罰も与えられない者が現れるかもしれないからだ。
大道寺長十郎は屋根裏に向かって言葉をかけた。
剣術の達人であり、忍び込みの技も習得しようとしている長十郎だ。
梅一が天井裏に入り込んだ事にいち早く気がついていた。
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「旦那の目を欺くのは無理なようですね」
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何の屈託もない笑顔を見せている。
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それなのに何故この場所に忍び込むことができたのかと言えば、盗賊団の力を総動員して、徳川家基に忠誠を尽くしている幕臣を探したからだった。
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武鑑や寛永諸家系図伝を読み調べ、口入屋から徳川家基の近臣だった旗本を聞き出し、旗本屋敷に出入りしている振り売りからも丁寧に話を聞きだしたのだ。
その集大成として、徳川家基の死後役目を辞して無役になったただ一人の旗本、大道寺長十郎直賢を見つけ出し、その屋敷に忍び込んだのだ。
「いったいなんのようなのだ、梅吉」
「今旦那の周囲がどうなっているのか確かめさせていただこうと思いましてね。
何と言っても一緒に盗みを働き人殺しをした仲ですからね。
今まで通り一緒に人殺しをしていただけるのか、それとも約束を反故にされるのか、旦那の口から直接お聞かせ願いたいと思いましてね。
それとも、旦那ではなく殿様と呼ばないとお答えくださいませんか」
梅一はわざと長十郎が怒るような話し方をした。
完璧に調べ上げた梅一は、長十郎が大目付に大抜擢された事を知ってた。
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梅一としても長十郎と約束を交わした時とは立場が変わっていた。
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だから長十郎が縁を切ると言うのならそれでもよかった。
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結局長十郎の一橋治済を討つという願いは叶えられなかった。
徳川家基殺しに係わった者を全員見つけ出すためと言われてしまうと、勝手に一橋治済を討つこともできなくなってしまった。
そんな事をすれば、徳川家基殺しに手を染めながら、何の罰も与えられない者が現れるかもしれないからだ。
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