私はどうしようもない凡才なので、天才の妹に婚約者の王太子を譲ることにしました

克全

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第一章

第32話:誤解・フローラ視点

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「お姉様怖いです、側を離れないでください」

 エレノアがそう言うと私の腕を取ってきます。
 ここまでされたら私にも分かります。
 エレノアが私の事を慕ってくれている事を。
 ずっと私が誤解してしまっていたのだと。
 私は随分と視野が狭くなってしまっていたのですね。
 母上様の愛情すらイザベルに教えてもらうまで気が付けませんでした。

 それに私も学院に来てから徐々に視野は広くなっています。
 ロイド君のお陰で学友に自分から話しかける事もできるようになりました。
 そんな学友から色々な話も聞けています。
 そんな話の中にはエレノアがウィリアム王太子を半殺しにしたという、とんでもない話もありました。
 そんな話まで聞いては、いつまでも過去に囚われてはいられません。

「ええ、絶対にはエレノアの側から離れないわ。
 でもあまり引っ付き過ぎると結印ができなくなってしまうわ。
 魔術を発動する時だけは少し離れましょうね」

「大丈夫です、お姉様。
 お姉様が無理をなされなくても、私が全部やって差し上げます」

 ようやく「好きです」とか「お姉様」とか以外の長い言葉を話してくれるようになりましたが、これでは少々困ります。
 私が好き過ぎて緊張して話せなかったというのは、ロイド君が言ったのでなければい信じられない事ですが、本当の事かもしれません。
 ここで厳しい事を言ってしまったら、また元の強張った関係に戻ってしまうかもしれませんが、私も魔術の鍛錬がしたいのです。
 私は魔境の中でしか十分に魔術が使えないので、この時間がとても大切なのです。

「ああ、ダメだぞ、それは止めておけ、エレノア嬢。
 フローラ嬢が努力家なのは妹のエレノア嬢が誰よりも知っているだろう。
 今フローラ嬢は魔術を覚えようと必死なのだ。
 エレノア嬢が肩代わりすると言うのはフローラ嬢の邪魔をすることになる。
 ここはフローラ嬢が魔術を使いやすいように少し離れた方がいい」

 私が言いたくても言えなかった事を、ロイド君が代わりに言ってくれました。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
 お姉様ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

 エレノアがまた単語しか口にしなくなりました。
 表情も昔のように睨みつけているような怖い顔つきですが、今なら分かります。
 泣きそうなのを必死でこらえているのですね。
 私に申し訳ないと思うとこんな表情になってしまうのでしょうね。
 でも昔と違うのは、私に余裕があるという事です。

「大丈夫よエレノア、大丈夫。
 私が魔術を勉強したいのは本当だけど、エレノアを嫌いになったりしないわ。
 エレノアが見守ってくれていたら、安心して魔術を放てるわ。
 だから私が失敗した時に備えて、ほんの少しだけ離れて見守っていて。
 結印ができる幅だけ作ってくれていたらいいのよ」
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