美人な姉と『じゃない方』の私

LIN

文字の大きさ
3 / 11
じゃない方の私

タクマさん

しおりを挟む
私は大学を無事卒業して社会人になった。姉も私も自宅から通っている。


こんな私にもお付き合いしてくれる人ができたんだ。

取引先に勤めているタクマさん。

タクマさんと休日に偶然会ってから話すようになって、それが切っ掛けで付き合うようになった。


ある日、タクマさんと会社終わりに夕食に行って、ちょっとお洒落なバーに行った。

「もしかしてサキ?サキもこんなところ来るんだ?」

バーには姉がいた。姉は身長の高い、格好良い男の人と一緒だった。

(なんでいつもお姉ちゃんがいるんだろう…?きっと、タクマさんもお姉ちゃんを好きになっちゃうんだろうな…)

私は不安に思った。

「サキのお友達?サキがいつもお世話になってます。姉のエリです。じゃぁ、サキまたね」

そんな私の不安を姉がわかるはずもなく、いつものように優しい笑顔でそう言って、姉達は店の奥に消えていった。

(どうせまた「サキのお姉さんキレイだな」って言われるんだろうな…)

「サキにお姉さんいたんだね」

タクマさんはそう言っただけで、それ以上姉については触れなかった。


- 数日後 -

タクマさんが唐突に私に聞いてきたんだ。

「サキとお姉さんって仲良いの…?」

(やっぱり興味持ったんだ。お姉ちゃん美人だもん。私なんかより魅力的だもんね…)

私は悲しく思いながらも、タクマさんに答えた。

「仲良い方だと思うよ…お姉ちゃんはいつも優しいし。なんで…?」

「いや、ちょっと気になっただけ。気にしないで」

そう言ってタクマさんは何か考え込んでいた。

(お姉ちゃんを好きになっちゃったのかな…?)


- それから暫くして -

「サキ、一緒に住まない?もっとサキと一緒にいたいし、サキも実家を出た方がいいと思うんだ」

いきなり信じられない事を言い出すタクマさんに、私は嬉しく思ったけど、疑問にも思った。

「嬉しいけど…なんでそんなこと言うの…?」

「あんまりサキの家族のこと悪く言いたくないけど…あのお姉さんから離れた方がいいと思って…」

私は姉の事をよく思わない人に会うなんて初めてで、言葉の真意がわからなかった。

「どういう事…?お姉ちゃんはすごく優しいんだよ?私なんかよりも美人で明るいし、いつも色々してくれるし…みんな私なんかよりお姉ちゃんを好きになるの。そんな人なんだよ?」

「やっぱり家を出た方がいいよ。サキってよく『私なんか』って言うけど、そんなこと言わないで欲しい。サキはサキで、お姉さんと比べる必要ないよ」

私の言葉にタクマさんは少し焦ったように言った。


「でも…私なんて『じゃない方』だし…」

「は…?なにそれ…」

タクマさんの声が少し怖かったから、私は明るい口調で言ったんだ。

「子供の時の話だよ!大した事じゃないの!」

「大した事じゃなくてもいいから話して?」

タクマさんは優しい口調に変えて、私に聞いてきた。

「うーん…何ていうのかな…?お姉ちゃんはあの通り昔からキレイだったから、美人じゃない方の妹とか?そんな感じで言われてたの。昔の話だよ?」

エヘヘと笑っていう私に、すごく真面目な顔をしてタクマさんは聞いてきた。

「両親はなんて…?」

「何も知らなかったんじゃないかな?親に向かって美人じゃない方の妹なんて言わないだろうし、お父さんもお母さんも、お姉ちゃんの方が……好き……だから……」

私は明るく喋っていたのに、自分の言葉に涙が出てきてしまった。


(お父さんもお母さんもお姉ちゃんの方が好きなんだ…)

ずっとそう思っていたけど、言葉にしてしまったら本当にそうなってしまう気がして、私は必死に目を逸らしてたんだ。

(私、寂しかったんだ…もっと私の事も褒めて欲しかったんだ…)

一度自分の気持ちに気が付いてしまったら、涙が止めどなく溢れてきた。


「家を出るのはまだ良いからさ、暫くうちに泊まりなよ。ゆっくりで良いから考えてみてよ」

タクマさんは、私の頭を撫でながら、優しく言ってくれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたの1番になりたかった

トモ
恋愛
姉の幼馴染のサムが大好きな、ルナは、小さい頃から、いつも後を着いて行った。 姉とサムは、ルナの5歳年上。 姉のメイジェーンは相手にはしてくれなかったけど、サムはいつも優しく頭を撫でてくれた。 その手がとても心地よくて、大好きだった。 15歳になったルナは、まだサムが好き。 気持ちを伝えると気合いを入れ、いざ告白しにいくとそこには…

お姉様、わたくしの代わりに謝っておいて下さる?と言われました

来住野つかさ
恋愛
「お姉様、悪いのだけど次の夜会でちょっと皆様に謝って下さる?」 突然妹のマリオンがおかしなことを言ってきました。わたくしはマーゴット・アドラム。男爵家の長女です。先日妹がわたくしの婚約者であったチャールズ・ サックウィル子爵令息と恋に落ちたために、婚約者の変更をしたばかり。それで社交界に悪い噂が流れているので代わりに謝ってきて欲しいというのです。意味が分かりませんが、マリオンに押し切られて参加させられた夜会で出会ったジェレミー・オルグレン伯爵令息に、「僕にも謝って欲しい」と言われました。――わたくし、皆様にそんなに悪い事しましたか? 謝るにしても理由を教えて下さいませ!

どうやら私は不必要な令嬢だったようです

かのん
恋愛
 私はいらない存在だと、ふと気づいた。  さようなら。大好きなお姉様。

【完結】婚約破棄中に思い出した三人~恐らく私のお父様が最強~

かのん
恋愛
どこにでもある婚約破棄。 だが、その中心にいる王子、その婚約者、そして男爵令嬢の三人は婚約破棄の瞬間に雷に打たれたかのように思い出す。 だめだ。 このまま婚約破棄したらこの国が亡びる。 これは、婚約破棄直後に、白昼夢によって未来を見てしまった三人の婚約破棄騒動物語。

【完結】真実の愛のキスで呪い解いたの私ですけど、婚約破棄の上断罪されて処刑されました。時間が戻ったので全力で逃げます。

かのん
恋愛
 真実の愛のキスで、婚約者の王子の呪いを解いたエレナ。  けれど、何故か王子は別の女性が呪いを解いたと勘違い。そしてあれよあれよという間にエレナは見知らぬ罪を着せられて処刑されてしまう。 「ぎゃあぁぁぁぁ!」 これは。処刑台にて首チョンパされた瞬間、王子にキスした時間が巻き戻った少女が、全力で王子から逃げた物語。  ゆるふわ設定です。ご容赦ください。全16話。本日より毎日更新です。短めのお話ですので、気楽に頭ふわっと読んでもらえると嬉しいです。※王子とは結ばれません。 作者かのん .+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.ホットランキング8位→3位にあがりました!ひゃっほーー!!!ありがとうございます!

【完結】私の妹を皆溺愛するけど、え? そんなに可愛いかしら?

かのん
恋愛
 わぁい!ホットランキング50位だぁ(●´∀`●)ありがとうごさいます!  私の妹は皆に溺愛される。そして私の物を全て奪っていく小悪魔だ。けれど私はいつもそんな妹を見つめながら思うのだ。  妹。そんなに可愛い?えぇ?本当に?  ゆるふわ設定です。それでもいいよ♪という優しい方は頭空っぽにしてお読みください。  全13話完結で、3月18日より毎日更新していきます。少しでも楽しんでもらえたら幸いです。

可愛い姉より、地味なわたしを選んでくれた王子様。と思っていたら、単に姉と間違えただけのようです。

ふまさ
恋愛
 小さくて、可愛くて、庇護欲をそそられる姉。対し、身長も高くて、地味顔の妹のリネット。  ある日。愛らしい顔立ちで有名な第二王子に婚約を申し込まれ、舞い上がるリネットだったが──。 「あれ? きみ、誰?」  第二王子であるヒューゴーは、リネットを見ながら不思議そうに首を傾げるのだった。

隣国の王子に求愛されているところへ実妹と自称婚約者が現れて茶番が始まりました

歌龍吟伶
恋愛
伯爵令嬢リアラは、国王主催のパーティーに参加していた。 招かれていた隣国の王子に求愛され戸惑っていると、実妹と侯爵令息が純白の衣装に身を包み現れ「リアラ!お前との婚約を破棄してルリナと結婚する!」「残念でしたわねお姉様!」と言い出したのだ。 国王含めて唖然とする会場で始まった茶番劇。 「…ええと、貴方と婚約した覚えがないのですが?」

処理中です...