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じゃない方の私
なんだか怖い
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両親には「仕事が暫く忙しいから職場の近くの友達の家に泊まる」って嘘をついて、私はタクマさんの家に行った。
両親にはタクマさんの事をまだ言ってなかったし、反対されると思ったから本当の事は話せなかった。
姉にも、言いたくはなかった。
実家に戻らなくなったら、どこか体が軽くなった気がした。
両親の顔色も伺わなくていい。
お姉ちゃんに嫉妬することもない。
近所の人に比べられることもない。
タクマさんは『じゃない方』の話をしてから「サキは可愛いよ」って言ってくれるようになった。私の心は暖かくなったんだ。
あっという間に1週間が経った。
「サキが居たいだけ居ていい」
そうタクマさんが言ってくれたから、私は着替えを取りに一度実家に帰ることにした。
(やっぱり、お姉ちゃんには言っておこう…)
私は洋服をカバンに詰めて、姉の部屋に行った。
コンコン
「お姉ちゃん、今大丈夫?」
ドアをノックをして、姉の部屋に入った。
「久しぶりだね。仕事忙しいんだって?サキって要領悪いから職場に迷惑かけてない?」
優しい姉はいつも私の心配をしてくれる。
「仕事は順調だよ。会社の人も良くしてくれるしね」
「そう…」
「実は今付き合ってる人がいるの。お姉ちゃんもこの間あった人、タクマさんっていうんだけど、今はその人の家に泊まってるの」
「そうなんだ…良かったね…」
姉の声が少し低く聞こえた気がした。
「恥ずかしいからお母さん達にはまだ言わないでね。反対するかもしれないし…」
「わかったよ。もういい?悪いけど、ちょっと忙しいから…」
私のことを見ずに、姉は言った。
「忙しいのにごめんね…」
私は大きなカバンを持って、タクマさんの家に帰った。
(お姉ちゃん忙しいのに、邪魔しちゃったな…)
それからまた1週間が経って、私は再び実家に荷物を取りに帰った。
(お母さんにも言っておかないと心配するかな…?)
私は母にも伝えることに決めた。
「おかえり。サキ大丈夫なの?仕事ってそんなに忙しいの?」
母が心配そうに私に聞いた。
「仕事は頑張ってるよ。みんな優しく教えてくれるし。忙しいっていうのもあるんだけど…実はいま付き合ってる人がいて、その人の家が職場の近くって言うのもあって、泊めさせて貰ってたの」
「そうなのね。嘘つかなくても良かったのに…でもサキみたいな娘でも良いって言ってくれる人がいて良かったわね。お姉ちゃんみたいに美人さんじゃないから心配してたのよ」
笑いながら言う母に、私は何も返せなかった。
「お母さん、そんなこと言ったらサキが可哀想だよ。サキにだっていい所はなにかしらあるんだから。ねぇ?」
そう言って庇ってくれた姉の顔が、私はなんだか怖く感じてしまった。
そして、姉は続けて私に言ったんだ。
「でも、サキなんかと付き合ってくれるタクマさん?だっけ…?飽きられないようにしないとね。サキは私と違って話下手だし」
「うん…そうだね。気を付けるよ…」
私は二人の言葉に悲しくなってしまって、予定していたよりも多めの荷物をスーツケースに詰めた。
(お姉ちゃん、私を庇ってくれたんだよね…?それなのに勝手に傷付いて、何も言えずに家を出ちゃった…)
姉の優しさを無下にしてしまったこと、勝手に被害妄想をしてしまった自分に、嫌気が差した。
両親にはタクマさんの事をまだ言ってなかったし、反対されると思ったから本当の事は話せなかった。
姉にも、言いたくはなかった。
実家に戻らなくなったら、どこか体が軽くなった気がした。
両親の顔色も伺わなくていい。
お姉ちゃんに嫉妬することもない。
近所の人に比べられることもない。
タクマさんは『じゃない方』の話をしてから「サキは可愛いよ」って言ってくれるようになった。私の心は暖かくなったんだ。
あっという間に1週間が経った。
「サキが居たいだけ居ていい」
そうタクマさんが言ってくれたから、私は着替えを取りに一度実家に帰ることにした。
(やっぱり、お姉ちゃんには言っておこう…)
私は洋服をカバンに詰めて、姉の部屋に行った。
コンコン
「お姉ちゃん、今大丈夫?」
ドアをノックをして、姉の部屋に入った。
「久しぶりだね。仕事忙しいんだって?サキって要領悪いから職場に迷惑かけてない?」
優しい姉はいつも私の心配をしてくれる。
「仕事は順調だよ。会社の人も良くしてくれるしね」
「そう…」
「実は今付き合ってる人がいるの。お姉ちゃんもこの間あった人、タクマさんっていうんだけど、今はその人の家に泊まってるの」
「そうなんだ…良かったね…」
姉の声が少し低く聞こえた気がした。
「恥ずかしいからお母さん達にはまだ言わないでね。反対するかもしれないし…」
「わかったよ。もういい?悪いけど、ちょっと忙しいから…」
私のことを見ずに、姉は言った。
「忙しいのにごめんね…」
私は大きなカバンを持って、タクマさんの家に帰った。
(お姉ちゃん忙しいのに、邪魔しちゃったな…)
それからまた1週間が経って、私は再び実家に荷物を取りに帰った。
(お母さんにも言っておかないと心配するかな…?)
私は母にも伝えることに決めた。
「おかえり。サキ大丈夫なの?仕事ってそんなに忙しいの?」
母が心配そうに私に聞いた。
「仕事は頑張ってるよ。みんな優しく教えてくれるし。忙しいっていうのもあるんだけど…実はいま付き合ってる人がいて、その人の家が職場の近くって言うのもあって、泊めさせて貰ってたの」
「そうなのね。嘘つかなくても良かったのに…でもサキみたいな娘でも良いって言ってくれる人がいて良かったわね。お姉ちゃんみたいに美人さんじゃないから心配してたのよ」
笑いながら言う母に、私は何も返せなかった。
「お母さん、そんなこと言ったらサキが可哀想だよ。サキにだっていい所はなにかしらあるんだから。ねぇ?」
そう言って庇ってくれた姉の顔が、私はなんだか怖く感じてしまった。
そして、姉は続けて私に言ったんだ。
「でも、サキなんかと付き合ってくれるタクマさん?だっけ…?飽きられないようにしないとね。サキは私と違って話下手だし」
「うん…そうだね。気を付けるよ…」
私は二人の言葉に悲しくなってしまって、予定していたよりも多めの荷物をスーツケースに詰めた。
(お姉ちゃん、私を庇ってくれたんだよね…?それなのに勝手に傷付いて、何も言えずに家を出ちゃった…)
姉の優しさを無下にしてしまったこと、勝手に被害妄想をしてしまった自分に、嫌気が差した。
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