愛するということ

緒方宗谷

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2.有紀子と加奈子 

1.渡辺有紀子

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 渡辺有紀子は美少女であるとはいえ、ありきたりの女子高生だった。光沢のある黒髪は長く、前髪は眉にかかるくらい。特別スタイルが良いわけではないが、悪いわけでもない。着痩せするのか、実際よりもスレンダーに見える。
 制服はエメラルドグリーンの可愛くないブレザーでネクタイ、夏は半袖のワイシャツに3つボタンのベストだ。
 もう少し可愛い制服の学校に入りたかった。だが、東京といっても近くには畑がある立川市だから、他の高校となるとなに 長い時間電車に乗らなければならない。通学時間が伸びてしまうのは嫌だった。
 通っても良いと思える距離で、自分の学力で入れるであろう偏差値が一番高い学校は、今通っているここだった。この学校は国分寺にあって、偏差値は都内の公立で20位前後の進学校。全国で上から数えた方が早いから、有紀子はそこそこ頭が良い。
 ティーンエイジャー向けの文庫を読むのが趣味。ライト文芸とかいわれる同年代が主人公の日常を描いたものを読む。
 内気ではないものの外交的でもない。友達は普通にいたが、親友の村上加奈子といる時間がとても長く、大抵は2人で遊んでいた。
 遊ぶといっても都心ではないから、高校のある国分寺駅周辺のショッピングモールにいるか喫茶店でおしゃべりするかのどちらかだ。お小遣いをもらったばかりのときは、カラオケに行ったりランチをしたりもする。
 渋谷や原宿に行くこともあるが、お目当ての洋服のお店で買い物をするだけで長居はしない。「あー、やっぱり地元が落ち着くね」、と2人して笑っていた。
 彼氏いない歴17年だ。夢に出てくる幼馴染みの陸とは子供ながらに結婚の約束をしていたから、強引にいない歴10年と言っても嘘にならないだろうか。それなら、意外に大人だと有紀子は思った。
 どうして今になって、陸のことを思い出したのだろうか。忘れていたわけではない。今でも好きなのだから、毎日陸のことは考えている。
 当然、今17歳の陸の姿を知らないから、考える陸の姿は7歳当時のままだ。おかしな話だが、有紀子の想像の中では、17歳の自分と7歳の陸が平然と恋人同士のシチュエーションで会話をしていた。
 17歳の陸を漠然と想像したことがあるが、陸を想ってこのかた、今まで一度も恋愛経験のない有紀子にとって、恋愛について何をどう想像して良いものか分からない。そもそも何も思い浮かばないのだから、想像しようもないし想像しようともしない。
 自分が可愛いという自負はない。中学の時に何度か告白されたこともあるが、それを以て自分はモテるとは思わなかった。 
 有紀子にとって、男子は陸だけだ。陸以外を男子と思ったことが無い。だから、恋愛対象として男子を見たことがないし、これといって異性と認識していなかった。
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