愛するということ

緒方宗谷

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17.尾行 

2.間接キス 

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 陸は、今出てきたショップを振り返って、コーラを飲んでいる。誰かを待っているようだ。
「誰だろ? 隠れて見てようか、萌愛?」柚奈が、高揚した頬に笑みを浮かべて、楽しそうに言った。
「やめときなよ、興味ないよ、私」
 そうこうする内に相手が出てきた。加奈子だ。学校にいる時よりも距離が近い。しかも有紀子は不在だ。2人きりで遊んでいるようだった。柚奈と萌愛は、示し合せることもなく歩みをスローダウンさせて後を追う。
「すごい楽しそうだね」柚奈がつばを飲む。
「うん」
「村上さんて、あんな風に笑うんだ」
「うん」
 柚奈が何を言っても、萌愛は「うん」としか答えない。顔を見ると、ムスッとしている。
 何を話しているか聞こえない。時々、加奈子が二の腕で陸を小突く。恋人という感じではないが、加奈子の性格なら、こういう恋人同士になるのかな、と柚奈達は思った。
「あっ! 飲んだ、村上さん、上条君のコーラ飲んだよ‼」
 小さな声で柚奈が叫ぶ。2人ともドキドキしてきた。間接キスだ。特別な好意を寄せていない男子の飲みかけのジュースなんて、普通飲むだろうか。初めの内は2人の行動を実況中継していた柚奈だったが、間接キス以降は黙ってしまった。
 コーラを一気飲みした加奈子を笑って怒る陸に「めんご、めんご」と言いなが自動販売機に駆け寄って、加奈子はモモの甘いジュースを買った。あんなの飲むんだ。もっとシブいものを飲んでいる、と柚奈達は思っていた。
 笑いながら陸が言う。
「よく飲むね」
「うん」
 受け取ろうと出された陸の手を拒んで、加奈子はジュースを開けた。
「あっ!」(柚奈と萌愛)
 ゴクゴクとそれを飲んだ加奈子は、それを陸に渡す。陸は呆れ顔で受け取ってそれを飲む。キャッキャ、とはしゃぐ加奈子の姿を見て、柚奈達は意外に思った。いつも大人びた気の強い姿しか見たことが無い。それなのに今日はとても子供の様に楽しそうだ。
 隙を見て陸に渡したジュースを奪い取った加奈子は、またも一気飲みをしてしまった。冗談で怒った陸が、拳を振り上げる。加奈子は笑いながら缶をひっくり返して、全部飲んでしまった、とジェスチャーした。
 繁華街から大分離れた交差点で、陸と加奈子は別れた。
 柚奈は羨ましかった。
(今度陸君と遊ぼうかな? 里美のための情報収集ってことで)
 そんなことを考えながら、萌愛と一緒に陸の後をつけた。

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