愛するということ

緒方宗谷

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59.有紀子と加奈子と里美の食事会

3.拡大? 分裂? 変態同盟

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 料理が口に運ばれる度に、皿の模様が徐々に姿を現す。普段接することのない不思議な花の模様に、里美は幻想の世界に迷い込んだかのように感じた。2人にそう言うと、「わたし達もそう思う」と言う。
 嬉しそうな表情を見せる里美は、有紀子に訊いた。
「こんど、柚奈と萌愛にも教えてあげていい?」
「いいよー、教えてあげて。私も気に入ってくれてうれしい」
 里美と有紀子がきゃぴきゃぴしているのを見て、加奈子が言った。
「お、いいね、急に同盟の人数が増えた」
 ビックリした里美は、飲んでいた水を気管に入れてしまい咳き込む。
「ちょっとやめてよ、私達をそっちに引き込まないで! それはそっちで勝手にやっててよ!」
 里美は、自分と2人との間に両手で何度も線を引いて言った。
「ええ⁉ 私も違いますからね!」
 有紀子も同じように、自分と加奈子の間に両手で線を引いた。
「あはははは」と大きく口をあけて笑う加奈子は、「もうおそい」と言って、デザートを持ってきたお姉さんからケーキを受け取り、2人の前においた。
 ケーキを一口「あーん」とする里美は、チラリと加奈子を見て言った。
「よくブラックなんて飲めるね」
 黒い色をしたただの水でしかない缶コーヒーではない。加奈子は、店で焙煎して淹れる直前に挽いた豆を使った黒真珠色の苦いコーヒーをそのまま飲む。有紀子にはもう見慣れた光景だったが、ブラックコーヒーを飲む女子を初めて見た里美は心底驚く。当然自分も飲んだことが無い。
「そう? アメリカ育ちなのに意外」と、加奈子がケロッと言った。
「アメリカ人だからブラックってことないよ。そもそもアメリカンって薄いもん」
「そうなの?」2人は驚いて口をそろえた。
「うん、それにペットの緑茶にだってお砂糖が入ってるのが当たり前なんだから」
 最近は、有名ブランドの無糖の緑茶が飲まれるようになってはいるが、アメリカの食べ物や飲み物は、日本のものよりもとても甘い。
 3人がそれぞれのティーカップを見やる。有紀子と里美が時を同じくしてミルクティーを飲み終えた。それを見た加奈子が最後の一口を飲んで、「ニシシ」と笑った。
「今日はいい1日だったね。寺っちと栗ちーにいいお土産話ができました」
「だから私を巻き込まないでよ(笑)。渡辺さんだけにしてよね」と、里美が流すように言うと、有紀子が続けて、
「私もやーよ、変態同盟なんて」と、里美のトスをよけて言った。
「そうだ、今度から私達だけで食事しようよ。なんなら柚奈と萌愛も誘って」
 加奈子の様に「ニシシ」と笑う里美に、有紀子も「ニシシ」と笑顔で答える。
「良いね、そうしよう」
 加奈子がショックを受けた様子で、「えぇ~⁉ そんなぁ‼」と叫んだ。

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