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二年生の二学期
🐿️
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無言の絶叫を発したかのように愕然とした奈緒と南が、「はぁっ? 冗談でしょっっ」と口を揃える。
「ううん。ほんとらしいのぉ。夏休みの間から噂になっていたのよぉ。廣飯さんのうちのほうに住んでいる子がぁ、救急車で運ばれていく廣飯さんを見たんですってぇ」
興奮気味にこぶしを握って続ける。
「飛び降りたらしいよぉ。ビルの屋上からぁ。よく生きてたよねぇ」
野次馬の間を縫って、奈緒が教室をのぞいてみると、杏奈は廊下側から三列目三番目の席に、一人で肘をついて座っていた。
奈緒の頭の後ろから、瑠衣の声が蕩尽する。
「すごい痛々しいよねぇ。おでこには包帯とかあるしぃ、左頬のガーゼとかぁ、両手もところどころ包帯があってぇ、左手の薬指と人差し指も包帯が巻かれているでしょ? 折れているのかしら、あれぇ。なんか可哀想。自殺したから近寄りがたいっていうのは分かるけど、みんなあからさまに避けてない? あそこだけ台風の目みたいになっているでしょう? なんかぁみんなぁ、少し離れたところから廣飯さんを中心に輪になって囁き合ってるぅ」
後ろから誰か男子の会話が聞こえる。
「手首切ったらしいって」
「マジで?」
「なんでまた」
「報復が苛烈だったんじゃねーの。一学期の終わりに、ウィップスとか標的にされてたじゃん。不良系はだいたいなんか指摘受けてるだろ。スカートの丈とかズボンのタックとかやり玉に挙げられてさ」
噂話は所々で沸いている様子だったが、うるさくはなかった。二年生のフロア中が、騒然さを内在させた静けさの中に沈んでいた。
聞き耳を立てていた奈緒が、教室へと視線を戻す。廊下のどこか少し離れたところから、女子たちの声が聞こえる。
「すんごい目が虚ろ。もともと冷たい感じの顔だったけど、もう表情ないじゃん」
「わたし、親が成績にうるさいから、今の環境変化には好感もってたけど、協力しなくてよかった。風紀改善キャンペーンとか打つ予定だったみたい」
後方の圧に押されて、右肩をドア枠にあてがい前のめりになっていた奈緒が左後ろに目をやると、今まで喋っていた女子が後頭部の髪をすいた腕[かいな]の奥に、処理されたわきが見える。
朧気に聞こえるひそひそ話しか聞こえなかった教室に、一人の女子の声が普通に聞こえた。
奈緒が視線を戻すと、ちょうど勇気のある女子が話しかけたところ。
一瞬の閑暇。彼女の視線の先にいる包帯の少女は、これといった反応も見せない。どこを見るでもない瞳は虚ろで、表情のない顔をしたその表層は、霜を纏う凍ったバラのようだった。
「ううん。ほんとらしいのぉ。夏休みの間から噂になっていたのよぉ。廣飯さんのうちのほうに住んでいる子がぁ、救急車で運ばれていく廣飯さんを見たんですってぇ」
興奮気味にこぶしを握って続ける。
「飛び降りたらしいよぉ。ビルの屋上からぁ。よく生きてたよねぇ」
野次馬の間を縫って、奈緒が教室をのぞいてみると、杏奈は廊下側から三列目三番目の席に、一人で肘をついて座っていた。
奈緒の頭の後ろから、瑠衣の声が蕩尽する。
「すごい痛々しいよねぇ。おでこには包帯とかあるしぃ、左頬のガーゼとかぁ、両手もところどころ包帯があってぇ、左手の薬指と人差し指も包帯が巻かれているでしょ? 折れているのかしら、あれぇ。なんか可哀想。自殺したから近寄りがたいっていうのは分かるけど、みんなあからさまに避けてない? あそこだけ台風の目みたいになっているでしょう? なんかぁみんなぁ、少し離れたところから廣飯さんを中心に輪になって囁き合ってるぅ」
後ろから誰か男子の会話が聞こえる。
「手首切ったらしいって」
「マジで?」
「なんでまた」
「報復が苛烈だったんじゃねーの。一学期の終わりに、ウィップスとか標的にされてたじゃん。不良系はだいたいなんか指摘受けてるだろ。スカートの丈とかズボンのタックとかやり玉に挙げられてさ」
噂話は所々で沸いている様子だったが、うるさくはなかった。二年生のフロア中が、騒然さを内在させた静けさの中に沈んでいた。
聞き耳を立てていた奈緒が、教室へと視線を戻す。廊下のどこか少し離れたところから、女子たちの声が聞こえる。
「すんごい目が虚ろ。もともと冷たい感じの顔だったけど、もう表情ないじゃん」
「わたし、親が成績にうるさいから、今の環境変化には好感もってたけど、協力しなくてよかった。風紀改善キャンペーンとか打つ予定だったみたい」
後方の圧に押されて、右肩をドア枠にあてがい前のめりになっていた奈緒が左後ろに目をやると、今まで喋っていた女子が後頭部の髪をすいた腕[かいな]の奥に、処理されたわきが見える。
朧気に聞こえるひそひそ話しか聞こえなかった教室に、一人の女子の声が普通に聞こえた。
奈緒が視線を戻すと、ちょうど勇気のある女子が話しかけたところ。
一瞬の閑暇。彼女の視線の先にいる包帯の少女は、これといった反応も見せない。どこを見るでもない瞳は虚ろで、表情のない顔をしたその表層は、霜を纏う凍ったバラのようだった。
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