FRIENDS

緒方宗谷

文字の大きさ
636 / 838
二年生の二学期

☕️

しおりを挟む


 まだ中身がずいぶんと残っていることに気をとめる様子を見せない奈緒がコーヒーカップに紅唇を添えて、ミルクと砂糖で薄茶色に色づいた液体を口に含んで何度も頷く。
「わたしのおかずまで食べちゃうくらいだもんね」
「変なこと言わないでよ。サバだのイワシだのをわたしのお皿に放り込んでくるんでしょ?」
「結局わたしが食べさせられる」奈緒が顔面をしわくちゃにして、春樹と務に訴えた。
 レジを済ませて外に出ると、奈緒の歩速に合わせた二人と行動を同じくしない務が、心なしか立ち止まろうとしているのかと思えるほど、歩みを遅くする。
「成瀬さん――」
 声をかけられた奈緒が、道路の真ん中で振り返る。大きな瞳をぱちくりさせて見つめるこの子に、緊張した面持ちの彼が口をもごもごさせた。
「その……僕も用意してあるんだ、誕生日プレゼント」
 ぱあぁっと奈緒の表情が明るくなる。それを見て余計に緊張した様子の務が生唾を飲んで、焦せ焦せとコートの内側に隠れていた黒いシート織りの生地で縁を補強されたブラウン色したボディバッグを背側からわきに引っ張り出すと、その中から奇麗な紙包みを取り出す。差し出されたそれは、春樹が用意したプレゼントよりも大きな包みだった。
 待ちきれない様子で奈緒は、瞳から期待を横溢させながら歩み寄って受け取ると、間髪入れずに封を開けて包みを広げる。中にはフォックス毛皮のような色つやをした毛足が短めのモコモコとした塊が入っていた。
 歩道と車道の間に走る白線に分け隔てられた奈緒に対して、務がしどろもどろ言葉を紡ぐ。
「本当は結構前に買っていたんだけれど、渡す機会がなくて。それ、マフっていって、日本語では手套っていうのかな? 手袋の親戚みたいなもの。確か去年のいつだったか、手袋の話になった時に、成瀬さん言っていたよね。つけたいけどすぐに片っぽ落として失くしてしまうからつけないって。思い返すと冬の成瀬さんってあかぎれが結構ひどかったし、つらいだろうなって思ったことを思い出して、なんとかできるものはないかなって色々考えた結果、これになった。ポーチみたいに首からかけられるようになってるでしょ。平織りの紐だから、肌に負担かけないと思う。筒状の部分をおなかの前にもってきて、そこに手を入れるの。両手を入れると転んだ時に危ないから、右手だけを入れて。これなら落として失くすことはないでしょ? これでだいぶ楽になるんじゃないかな?」








しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

妹の仇 兄の復讐

MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。 僕、寺内勇人は高校三年生。妹の茜は高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。 その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

ぼっち陰キャはモテ属性らしいぞ

みずがめ
ライト文芸
 俺、室井和也。高校二年生。ぼっちで陰キャだけど、自由な一人暮らしで高校生活を穏やかに過ごしていた。  そんなある日、何気なく訪れた深夜のコンビニでクラスの美少女二人に目をつけられてしまう。  渡会アスカ。金髪にピアスというギャル系美少女。そして巨乳。  桐生紗良。黒髪に色白の清楚系美少女。こちらも巨乳。  俺が一人暮らしをしていると知った二人は、ちょっと甘えれば家を自由に使えるとでも考えたのだろう。過激なアプローチをしてくるが、紳士な俺は美少女の誘惑に屈しなかった。  ……でも、アスカさんも紗良さんも、ただ遊び場所が欲しいだけで俺を頼ってくるわけではなかった。  これは問題を抱えた俺達三人が、互いを支えたくてしょうがなくなった関係の話。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

アルファポリスとカクヨムってどっちが稼げるの?

無責任
エッセイ・ノンフィクション
基本的にはアルファポリスとカクヨムで執筆活動をしています。 どっちが稼げるのだろう? いろんな方の想いがあるのかと・・・。 2021年4月からカクヨムで、2021年5月からアルファポリスで執筆を開始しました。 あくまで、僕の場合ですが、実データを元に・・・。

讃美歌 ① 出逢いの章              「礼拝堂の同級生」~「もうひとつの兆し」

エフ=宝泉薫
青春
少女と少女、心と体、美と病。 通い合う想いと届かない祈りが織りなす終わりの見えない物語。

処理中です...