FRIENDS

緒方宗谷

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二年生の二学期

第二百二十六話 廃屋

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 二日後、ここ最近の日課である南の捜索をしていた奈緒が、中延スキップロードをそぞろ歩いていると、夕飯を買い求める厚い群層の向こうに、見覚えのあるいがぐり頭を発見した。
「南ちゃん」
 思わず呟くと、彼女の背中を追って人混みをかき分けていく。すぐに見失って途方に暮れるも諦める様子を見せずに、いがぐり頭が進んで行った方向へと歩んでいく。そして、十字路を過ぎてすぐに立ち止まると、数歩だけ後退りをして、左のわき道を見やった。
 そこには、明らかに傷んだ茶色いソバージュボブの女が歩いている。羽織っていたスカジャンの背中には、真っ赤なベタの刺繍が優雅に泳ぐ。その姿には見覚えがあるといった確信の眼差しでその後頭部を見た奈緒が、左隣りを並んで歩く懐かしい後ろ姿に目を奪われた。
 同じくらいの背丈のいがぐり頭を凝視すると、この子は無我夢中で走って追いかけていく。そして、二人が消えて行った建物の前で立ち止まって、三階建てのマンションを見上げた。
 それは、エントランスに木板が打ちつけられた廃墟だった。入り口のドアも、一階の窓もガラスが割られていて、枠しか残っていない。この子は、「ごくり」と生唾を飲み込んだ。真っ暗なエントランスドアの奥を見やってから、一歩二歩と後退る。
 瞬間、「おい」という声が左の耳元で響いて、背中に柔らかい何かが当たった。驚いた奈緒が振り向くと、そこには、ふたえで笹の葉のように鋭い瞳で冷たく睨む柏木萌音がいた。
 思わず、大きくえぐれたスクエアネックに視線が落ちる。その胸元には柔らかそうな胸があって、深い陰影を帯びた谷間があった。
「あ、あ」と、吃音気味に言葉の粒を落とす奈緒が視線を戻して、白いチビティ―に黒いパーカーを着た萌音から離れようとすると、右ひざでドスッとおしりをけられて、よたよたとバランスを崩す。怯えながら見上げたこの子を顎を上げて見下ろす彼女は、言葉なく顎骨だけをしゃくって、廃墟に入るように促した。
 奈緒は、仕方なさそうにおずおずと割れたガラスの破片の上を歩いていき、木板の下をくぐって、内側の影で身を染める。ある一室の扉を開いた萌音が、先に入るように視線で指図した。この子が一歩部屋に入ると、奥からヘリュウムが混じった低いだみ声が響く。
「あん? あんだぁ、そのガキ。誰連れてきてんだよ、柏木さんよぉ」
 眼前に屹立する女が向けてきた、その魁偉な顔貌に息を飲んだ奈緒の後ろから、萌音が鳴らした喉の音がごくりと聞こえる。
「いや、入り口の前にいたんで。この子、南の友達です。ばれたみたいなんで、連れ込みました」





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