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二年生の二学期
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部屋にいたのは、人とは思えない様相の女だった。いや、女に見える男かもしれない。
九十年代の渋谷系カリスマみたいにセンター分けにしたまだらの茶色いセミロング。眉は無く骨が出っ張っていて、卵を口から吐きそうな両生類風。目は楕円でぎょろりとしている。ひしゃげた鼻は、穴が上を向いていて、口は裂けているように大きくて唇は薄い。
肌色は、日焼けサロン通いで失敗したように思えるほどに汚れた煤竹色。あたかも轢かれて潰れたヒキガエルのような風貌をしている。よく言えば八つ頭、悪く言えば土くれのひと塊のような顔だ。
段々腹みたいな腰丈のダウンジャケットの下は、レーヨン製でへそが出た、クロップ[クロップド]なのかサイズが合わないのか分からない黒い血の色をしたTシャツ。腰は、くびれのない緩んだボンレスハム型。黒いデニムのミニスカートを穿いていて、そこから伸びる生足は、太腿から足首まで同じ太さに見える。
その全貌は、豚とカバを足してプロレスラーにしたようだ。いや、豚とカバとプロレスラーに悪いと思えるくらいの見た目であった。
女らしきその物体が、「ん」と右手を出すと、萌音がしわくちゃになった数枚の一万円札を差し出す。
「三万でした」
「はぁ? 三万? もッと値をつけてこいっていつも言ってんだろ。今はもう体もクスリも好きに売り歩ける状況じゃねぇんだぞ」
「はい。すいません」
二人の会話を、奈緒が呆然と見ていた。
「奈緒、どうしてここに」
聞こえてきた声にこの子が顔を向けると、影の中から怯えた表情の南が出てきた。気がつくと、自分の右側にある部屋の角に、青いスカジャンを着たセーラー服姿の伊奈波理沙の姿も見受けられる。
この子はそれを一瞥してから、南に向かって歩を進めた。
「心配してたんだよ、なにしてたの? こんなところで。もう帰ろう。みんなが心配してるから」そう言って彼女の手を取る。
吐息がかかるくらい接近した二人は、お互いの存在を確認するように肌をさすって声を掛け合う。
薄明りにさらされた姿を見た奈緒が、眉を八の字に歪めた。
「この服装、バスケの応援の時のまんまじゃん?」
「うん、あのあと荏原中延まで戻ってきて、その……あれだったから……」
「汚れちゃってかわいそう」
久しぶりの再会で泣き出しそうな親友同士は、しばらく小声で話していた。それが途切れると、奈緒が鼻で大きく息を吸って、口を開く。
「もうこんなところにいないで、早く帰ろう。お父さんも心配してた。お金ないようって」
そう言ってこの子が玄関へ振り返ると、「おい」、と唸るようなだみ声が後ろから響くと同時に、正面に立ち塞がった萌音がこの子の首元を押し戻す。
💴浜田美怜💉
作画:緒方宗谷
九十年代の渋谷系カリスマみたいにセンター分けにしたまだらの茶色いセミロング。眉は無く骨が出っ張っていて、卵を口から吐きそうな両生類風。目は楕円でぎょろりとしている。ひしゃげた鼻は、穴が上を向いていて、口は裂けているように大きくて唇は薄い。
肌色は、日焼けサロン通いで失敗したように思えるほどに汚れた煤竹色。あたかも轢かれて潰れたヒキガエルのような風貌をしている。よく言えば八つ頭、悪く言えば土くれのひと塊のような顔だ。
段々腹みたいな腰丈のダウンジャケットの下は、レーヨン製でへそが出た、クロップ[クロップド]なのかサイズが合わないのか分からない黒い血の色をしたTシャツ。腰は、くびれのない緩んだボンレスハム型。黒いデニムのミニスカートを穿いていて、そこから伸びる生足は、太腿から足首まで同じ太さに見える。
その全貌は、豚とカバを足してプロレスラーにしたようだ。いや、豚とカバとプロレスラーに悪いと思えるくらいの見た目であった。
女らしきその物体が、「ん」と右手を出すと、萌音がしわくちゃになった数枚の一万円札を差し出す。
「三万でした」
「はぁ? 三万? もッと値をつけてこいっていつも言ってんだろ。今はもう体もクスリも好きに売り歩ける状況じゃねぇんだぞ」
「はい。すいません」
二人の会話を、奈緒が呆然と見ていた。
「奈緒、どうしてここに」
聞こえてきた声にこの子が顔を向けると、影の中から怯えた表情の南が出てきた。気がつくと、自分の右側にある部屋の角に、青いスカジャンを着たセーラー服姿の伊奈波理沙の姿も見受けられる。
この子はそれを一瞥してから、南に向かって歩を進めた。
「心配してたんだよ、なにしてたの? こんなところで。もう帰ろう。みんなが心配してるから」そう言って彼女の手を取る。
吐息がかかるくらい接近した二人は、お互いの存在を確認するように肌をさすって声を掛け合う。
薄明りにさらされた姿を見た奈緒が、眉を八の字に歪めた。
「この服装、バスケの応援の時のまんまじゃん?」
「うん、あのあと荏原中延まで戻ってきて、その……あれだったから……」
「汚れちゃってかわいそう」
久しぶりの再会で泣き出しそうな親友同士は、しばらく小声で話していた。それが途切れると、奈緒が鼻で大きく息を吸って、口を開く。
「もうこんなところにいないで、早く帰ろう。お父さんも心配してた。お金ないようって」
そう言ってこの子が玄関へ振り返ると、「おい」、と唸るようなだみ声が後ろから響くと同時に、正面に立ち塞がった萌音がこの子の首元を押し戻す。
💴浜田美怜💉
作画:緒方宗谷
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