FRIENDS

緒方宗谷

文字の大きさ
703 / 838
二年生の二学期

🖼️

しおりを挟む
 部屋にいたのは、人とは思えない様相の女だった。いや、女に見える男かもしれない。
 九十年代の渋谷系カリスマみたいにセンター分けにしたまだらの茶色いセミロング。眉は無く骨が出っ張っていて、卵を口から吐きそうな両生類風。目は楕円でぎょろりとしている。ひしゃげた鼻は、穴が上を向いていて、口は裂けているように大きくて唇は薄い。
 肌色は、日焼けサロン通いで失敗したように思えるほどに汚れた煤竹色。あたかも轢かれて潰れたヒキガエルのような風貌をしている。よく言えば八つ頭、悪く言えば土くれのひと塊のような顔だ。
 段々腹みたいな腰丈のダウンジャケットの下は、レーヨン製でへそが出た、クロップ[クロップド]なのかサイズが合わないのか分からない黒い血の色をしたTシャツ。腰は、くびれのない緩んだボンレスハム型。黒いデニムのミニスカートを穿いていて、そこから伸びる生足は、太腿から足首まで同じ太さに見える。
 その全貌は、豚とカバを足してプロレスラーにしたようだ。いや、豚とカバとプロレスラーに悪いと思えるくらいの見た目であった。
 女らしきその物体が、「ん」と右手を出すと、萌音がしわくちゃになった数枚の一万円札を差し出す。
「三万でした」
「はぁ? 三万? もッと値をつけてこいっていつも言ってんだろ。今はもう体もクスリも好きに売り歩ける状況じゃねぇんだぞ」
「はい。すいません」
 二人の会話を、奈緒が呆然と見ていた。
「奈緒、どうしてここに」
 聞こえてきた声にこの子が顔を向けると、影の中から怯えた表情の南が出てきた。気がつくと、自分の右側にある部屋の角に、青いスカジャンを着たセーラー服姿の伊奈波理沙の姿も見受けられる。
 この子はそれを一瞥してから、南に向かって歩を進めた。
「心配してたんだよ、なにしてたの? こんなところで。もう帰ろう。みんなが心配してるから」そう言って彼女の手を取る。
 吐息がかかるくらい接近した二人は、お互いの存在を確認するように肌をさすって声を掛け合う。
 薄明りにさらされた姿を見た奈緒が、眉を八の字に歪めた。
「この服装、バスケの応援の時のまんまじゃん?」
「うん、あのあと荏原中延まで戻ってきて、その……あれだったから……」
「汚れちゃってかわいそう」
 久しぶりの再会で泣き出しそうな親友同士は、しばらく小声で話していた。それが途切れると、奈緒が鼻で大きく息を吸って、口を開く。
「もうこんなところにいないで、早く帰ろう。お父さんも心配してた。お金ないようって」
 そう言ってこの子が玄関へ振り返ると、「おい」、と唸るようなだみ声が後ろから響くと同時に、正面に立ち塞がった萌音がこの子の首元を押し戻す。




💴浜田美怜💉
作画:緒方宗谷
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

讃美歌 ① 出逢いの章              「礼拝堂の同級生」~「もうひとつの兆し」

エフ=宝泉薫
青春
少女と少女、心と体、美と病。 通い合う想いと届かない祈りが織りなす終わりの見えない物語。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」 かつて、私は信じていた。 優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な── そんな普通のお兄ちゃんを。 でも── 中学卒業の春、 帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、 私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった! 家では「戦利品だー!」と絶叫し、 年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、 さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!? ……ちがう。 こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない! たとえ、世界中がオタクを称えたって、 私は、絶対に── お兄ちゃんを“元に戻して”みせる! これは、 ブラコン妹と 中二病オタク姫が、 一人の「兄」をめぐって 全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──! そしていつしか、 誰も予想できなかった 本当の「大好き」のカタチを探す、 壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ
青春
神童と言われた天才サッカー少年は中学時代、日本クラブユースサッカー選手権、高円宮杯においてクラブを二連覇させる大活躍を見せた。 将来はプロ確実と言われていた彼だったが中学3年のクラブユース選手権の予選において、選手生命が絶たれる程の大怪我を負ってしまう。 サッカーが出来なくなることで激しく落ち込む彼だったが、幼馴染の手助けを得て立ち上がり、高校生活という新しい未来に向かって歩き出す。 そんな中、高校で中学時代の高坂修斗を知る人達がここぞとばかりに部活や生徒会へ勧誘し始める。 サッカーを辞めても一部の人からは依然として評価の高い彼と、人気な彼の姿にヤキモキする幼馴染、それを取り巻く友人達との刺激的な高校生活が始まる。

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。 高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。 「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」 そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。 彼女の名は、立石麻美。 昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。 この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。 その日の放課後。 明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。 塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。 そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。 すべてに触れたとき、 明希は何を守り、何を選ぶのか。 光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。

処理中です...