FRIENDS

緒方宗谷

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二年生の二学期

🍄

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 奈緒は立ち止まって、
「こ う よ」
 と、母親が幼子を諭すように口を酸っぱくした。
 左手で指し示す帽子の後ろを南が見ると、赤い安全ピンでつまんでとめてある。
「Sサイズがなかったのよ。M だ・か・ら」奈緒がいじけたように言う。
「ああ、なるほどね。夏のもあるの?」
「ある。あるけどださい」
 奈緒は鼻で笑って、「かぶると、あちゃちゃちゃちゃ~、あららっー――」声高に叫んで、最後に低く「――てなる」、と言った。
「ふーん。この間のワッチも似合ってたけど、こっちのビーニーも可愛いよ。なんか、セガール[日本が誇る世界的ゲームソフトの名前、スーパーセガールブラザーズ]のタケボー[敵キャラ。しいたけみたいなやつだが、実は栗。元栗王国の兵士]みたい」
 笑顔の南が褒めながら話し続けていたが、この子は全く聞こえていない様子でそっぽを向く。はじめは左後ろを向いていたが、不意に右後ろを向いて、右目の狭い視界になにかを入れようとするかのように、頭を更に後方へと向ける。
 一瞬間があって「あっ、危ないっっ!!」と、奈緒が叫んだ。その刹那、車道へと駆け出す。
 直後、強烈なブレーキ音が響いた。ヘッドライトの真ん前に倒れ込むようにして飛び込んだしいたけ少女の眼前には、小学四年生くらいの男の子が走って行くところだった。
 ドスンという重い衝撃音と共に跳ね飛ばされた奈緒が、ゴロゴロと転がって、ゴチンと後頭部をアスファルトに打ち付ける。腕の中に抱えられていた子供が勢い余って右にひと一回転し、横一文字に伸びた奈緒の右手を枕に天を仰ぐ。
 びっくりして呆然としていた子供の顔に、不安の影が落ちた。取り乱した様子で駆け寄ってきた母親らしき女性に向かって、仰向けになったまま両手を掲げる。
 子供を抱き上げる母親に続いて、南も駆け寄って膝をついた。
「奈緒、大丈夫」
「大丈夫、大丈夫」この子はそう言って、南に背を支えられながら身を起こす。そこに、車から降りた男性が駆けつけて、怪我の具合を確認する。
 子共を助けた奈緒を顧みようともしない母親から、するりと地に下りた男の子が、天使のような驚きと喜びに満ちた顔をして、女子二人のほうを見てきた。
「あ、やだー」
 そう叫んで駆け寄ってくると、胸の前で両手の指を絡めて少しもじもじしながら、首を傾げて笑顔を向ける。
「知ってる。あなたのこと知ってる、ますよ。あの、あれ。スズちゃんハルちゃんのやつ。歌。見てこれ」そう言って、奈緒が一年の時に踊った踊りを真似てみせた。
 跪坐して子供と目線の高さを合わせたこの子が照れくさそうに笑う。
「一年の時の見てくれたんだ、うれしー。君も、上下青いお洋服でかわ いいよ」
「そうでしょ。見て。コート、青」
「お船の絵が描いてある」


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