822 / 838
三年生の一学期
第二百六十二話 発見
しおりを挟む
数日の間、ちょっとしたピラミッドを彷彿とさせる七階建ての教室棟をそぞろ歩いていた奈緒と南が、三年の教室がある四階に戻ってきた時のことだった。本日の捜索をあきらめた様子のこの子が、3‐Cの教室に足を踏み入れた瞬間、勢いよく廊下に頭を出し戻して、A組とB組がある方向を凝視した。
A組の壁に面する突き当りの談話コーナーには、団子状に集まった男子たちの塊がいる。その中で、周りにいる男子たちの頭部を見下ろす位置に飛び出た一つの頭に、奈緒の視線がくぎ付けになっていた。
黒髪でかきあげられた髪がふわりと後頭部へ向かって流れているそのさまは、先日この子が見た男子の後ろ姿と酷似しているように見える。
「あ、ちょっと、すいません。あなたが、わたしでしょうか」
奈緒が叫んで、廊下をばく進していく。その声が聞こえたのか、D組に入った直後に再び顔を出した南が、走るこの子の後ろ姿を追いかけてくる。
「あの、あの。わたしは、身 体 障 がい 者 で ごめんなさい」
息を切らした奈緒が大きな背中に向かって、上ずり声で言葉をかける。他の男子と共に前の入り口からA組の教室に入ろうとした男子が一人立ち止まって、何気に振り向く。
この子は、その相貌を見上げて、一瞬息を飲んだ。
ツーブロックで七三のゆるふわオールバック。艶やかに光沢があって、微かにムスクっぽい煙たくて甘い香りがする。相貌は瓜実顔でふたえの目は奇麗なひし形。アイラインを引いたようにくっきりとした目尻をしている。ゆで卵のようにきれいな肌合いで、清潔感のある涼しげな笑顔。軽やかな身のこなしで、いつの間にか隣にいそうな好青年に見える。ものおじする様子がなく、雲の上にいるような爽やかさがあった。
「あの……あの……」
奈緒が吃音気味になって、言葉を喉に引っかけると、この男子はにこやかに微笑んで、両手をボトムスのポケットに入れこちらを向いた。そして、この子を見守る。
奈緒は、なんとか言葉を唇から零す。
「この間は、おうちまで 送って くださり、ありがとう ござい ました。あなたは、どちら様 でしょうか?」
言い終わって「うん」と頷くこの子に向かって、子の男子は瓜実の頬を緩ませ、白い歯を見せる。
「あ、覚えていてくれたんだ――ですね。なんか眠そうだったから、俺のこと覚えていないかと思ってました」
A組の壁に面する突き当りの談話コーナーには、団子状に集まった男子たちの塊がいる。その中で、周りにいる男子たちの頭部を見下ろす位置に飛び出た一つの頭に、奈緒の視線がくぎ付けになっていた。
黒髪でかきあげられた髪がふわりと後頭部へ向かって流れているそのさまは、先日この子が見た男子の後ろ姿と酷似しているように見える。
「あ、ちょっと、すいません。あなたが、わたしでしょうか」
奈緒が叫んで、廊下をばく進していく。その声が聞こえたのか、D組に入った直後に再び顔を出した南が、走るこの子の後ろ姿を追いかけてくる。
「あの、あの。わたしは、身 体 障 がい 者 で ごめんなさい」
息を切らした奈緒が大きな背中に向かって、上ずり声で言葉をかける。他の男子と共に前の入り口からA組の教室に入ろうとした男子が一人立ち止まって、何気に振り向く。
この子は、その相貌を見上げて、一瞬息を飲んだ。
ツーブロックで七三のゆるふわオールバック。艶やかに光沢があって、微かにムスクっぽい煙たくて甘い香りがする。相貌は瓜実顔でふたえの目は奇麗なひし形。アイラインを引いたようにくっきりとした目尻をしている。ゆで卵のようにきれいな肌合いで、清潔感のある涼しげな笑顔。軽やかな身のこなしで、いつの間にか隣にいそうな好青年に見える。ものおじする様子がなく、雲の上にいるような爽やかさがあった。
「あの……あの……」
奈緒が吃音気味になって、言葉を喉に引っかけると、この男子はにこやかに微笑んで、両手をボトムスのポケットに入れこちらを向いた。そして、この子を見守る。
奈緒は、なんとか言葉を唇から零す。
「この間は、おうちまで 送って くださり、ありがとう ござい ました。あなたは、どちら様 でしょうか?」
言い終わって「うん」と頷くこの子に向かって、子の男子は瓜実の頬を緩ませ、白い歯を見せる。
「あ、覚えていてくれたんだ――ですね。なんか眠そうだったから、俺のこと覚えていないかと思ってました」
0
あなたにおすすめの小説
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う
もぐのすけ
青春
神童と言われた天才サッカー少年は中学時代、日本クラブユースサッカー選手権、高円宮杯においてクラブを二連覇させる大活躍を見せた。
将来はプロ確実と言われていた彼だったが中学3年のクラブユース選手権の予選において、選手生命が絶たれる程の大怪我を負ってしまう。
サッカーが出来なくなることで激しく落ち込む彼だったが、幼馴染の手助けを得て立ち上がり、高校生活という新しい未来に向かって歩き出す。
そんな中、高校で中学時代の高坂修斗を知る人達がここぞとばかりに部活や生徒会へ勧誘し始める。
サッカーを辞めても一部の人からは依然として評価の高い彼と、人気な彼の姿にヤキモキする幼馴染、それを取り巻く友人達との刺激的な高校生活が始まる。
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。
高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。
「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」
そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。
彼女の名は、立石麻美。
昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。
この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。
その日の放課後。
明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。
塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。
そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。
すべてに触れたとき、
明希は何を守り、何を選ぶのか。
光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。
妹の仇 兄の復讐
MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。
僕、寺内勇人は高校三年生。妹の茜は高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。
その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。
みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される
けるたん
青春
「ほんと胸がニセモノで良かったな。貧乳バンザイ!」
「離して洋子! じゃなきゃあのバカの頭をかち割れないっ!」
「お、落ちついてメイちゃんっ!? そんなバットで殴ったら死んじゃう!? オオカミくんが死んじゃうよ!?」
県立森実高校には2人の美の「女神」がいる。
頭脳明晰、容姿端麗、誰に対しても優しい聖女のような性格に、誰もが憧れる生徒会長と、天は二物を与えずという言葉に真正面から喧嘩を売って完膚なきまでに完勝している完全無敵の双子姉妹。
その名も『古羊姉妹』
本来であれば彼女の視界にすら入らないはずの少年Bである大神士狼のようなロマンティックゲス野郎とは、縁もゆかりもない女の子のはずだった。
――士狼が彼女たちを不審者から助ける、その日までは。
そして『その日』は突然やってきた。
ある日、夜遊びで帰りが遅くなった士狼が急いで家へ帰ろうとすると、古羊姉妹がナイフを持った不審者に襲われている場面に遭遇したのだ。
助け出そうと駆け出すも、古羊姉妹の妹君である『古羊洋子』は助けることに成功したが、姉君であり『古羊芽衣』は不審者に胸元をザックリ斬りつけられてしまう。
何とか不審者を撃退し、急いで応急処置をしようと士狼は芽衣の身体を抱き上げた……その時だった!
――彼女の胸元から冗談みたいにバカデカい胸パッドが転げ落ちたのは。
そう、彼女は嘘で塗り固められた虚乳(きょにゅう)の持ち主だったのだ!
意識を取り戻した芽衣(Aカップ)は【乙女の秘密】を知られたことに発狂し、士狼を亡き者にするべく、その場で士狼に襲い掛かる。
士狼は洋子の協力もあり、何とか逃げることには成功するが翌日、芽衣の策略にハマり生徒会に強制入部させられる事に。
こうして古羊芽衣の無理難題を解決する大神士狼の受難の日々が始まった。
が、この時の古羊姉妹はまだ知らなかったのだ。
彼の蜂蜜のように甘い優しさが自分たち姉妹をどんどん狂わせていくことに。
※【カクヨム】にて編掲載中。【ネオページ】にて序盤のみお試し掲載中。【Nolaノベル】【Tales】にて完全版を公開中。
イラスト担当:さんさん
俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件
こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。
・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。
・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。
・物静かで儚げな美術部員。
・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。
・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。
拓海の生活はどうなるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる