エスパー&ソーサラー

緒方宗谷

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2 村

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 暖かく優しい陽の光が、ミリィを包む。寝ているような、寝ていないような、まどろんでいるこのときが一番気持ちいい。笑みを浮かべながら、フトンを抱きしめている。ミリィは、この時間が好きだった。朝という空間の匂いは、誰にとっても心地よいものだ。
 コンコン・・・。テーブルを叩く音がする。不快に思ったミリィは、顔をフトンにうずめた。
 「ミリィさん・・・、ミリィさん、・・・ムカッ!・・・えいっ!!」
 ガバッ
サラにフトンをはがされ、夢見ごこちの幸せから、突然地獄に叩き落された。
 「ひぇぇ~っ、さっ寒い!!」
小動物のように縮こまって、未練がましくシーツに包まる。
 「朝ですよ、ミリィさん。そろそろ外に繰り出しましょう」
 そういえば、昨日からこの大ボケ娘と一緒だったのをすっかり忘れていた。あの後すぐに宿を取り、いつも以上に食べ、いつも以上に長湯し、いつも以上に・・・、サラに起こされ寝られなかった。
 寝ぼけ眼で窓を見やると、太陽は真上にある。ミリィは、ゆっくりと支度をしながら気がついた。こんなに急かして村の見物に出たがるところを見ると、この村の住人じゃないようだ、と。
 「こんな小さな村で、何を見ろって言うのよ。行きたければ、1人で行けばいいでしょう?」
 あんまりしつこく急かすものだから、ちょっと苛立った口調でサラに言い放った。
 「あっ、そんなこと言うんですか? いいですよ、迷子だったことと、3日もお風呂に入らなかったから、すごく臭かったこと、バラしても・・・」
 こんな小さな村でバラされようものなら、一気にうわさは広がりいい笑い者、もうここに滞在できなくなる。しぶしぶ鏡台の前に座り、鏡を見た。3日もお風呂に入っていなかったわりに、ミリィの長いストレートの黒髪は傷みを見せず美しい。
 瀕死の状態で、高度なサイキック(ミリィにとって)を何発も使ったわりに生きていたし、結構生命力があるみたいだ。
 「まだですかぁ?」
 サラは、ベットの上でゴロゴロしながら、ミリィの身支度が終わるのを待ちきれない様子でぼやく。
 鞣し革で作られた青いミニスカートに、そこから覗くスパッツ、お腹の出る薄いピンク色の袖なしチビティ、その上に太い網状になった袖のないシャツ、背中側がお尻まで長い青いジャケットを着て、最後に青いマントを羽織る。これがミリィのお気に入りのファッションだ。この服装はサイコラークの軍服に似ている。
 「なんか、薄くてか細いサーベルですね、ミリィさん」
 懸策についた金色のリングにサーベルの鞘についたリングをはめ込んでいるところを見ながら、サラは訊いた。
 「あぁ、これ? レディソードっていって、レイピアより軽くて扱いやすいのよ」
 扱いやすければいいというわけではない。切れ味はいいが頑丈ではないため、あまり実戦には向かない。霊力を扱えない者にとっては、ただのでかいペーパーナイフのようなものだ。肉は切れても、鎧を着られると歯が立たない。
 ミリィは剣を抜いて見せた。その剣身は、いくつもの曲線を描くフォルムで、薄いピンク色の峰と白色の刃でできている。その名のとおり、女性的な剣だ。
 ミリィのように兵士ではない者が持つレディソードは、たいてい銅製か鉄製なのだが、ミリィのは違った。サイコラークで将軍の地位にいる父に、15歳の誕生日に授けてもらったオリハルコン製の本物だ。もちろんオーダーで、世界に一本しかない。
 オリハルコンは日緋色金と並んで希少価値の高い金属で、そうそう手に入るものではない。軍隊においてもごく一部の人間しか持っておらず、たいていの剣はプラチナ製かシルバー製だ。
 金属の中では柔らかいほうだが霊力を乗せやすく、霊力キャパシティ次第で鋼よりも強力な刀剣にできる。
 世界三大細剣である、サムライブレード、レイピア、レディソード、と三本の中に数えられるだけあって短所ばかりではない。最高級品(霊剣)に限ったことだか、サムライブレードは霊が宿り、強度・切れ味共にピカイチ。レイピアは魔力を持ち霊的加工がしやすく、レディソードは霊力を注ぎやすくなっている。ちなみに、レディソードはサイコラークの標準装備になっているライトソードの女性版として造られた。ミリィの母国では、女性兵士が多いのだ。
 サラは、気に入った様子でレディソードを褒めて言った。
 「ピンクい剣っていうのがウケますね、でも、なんか可愛いし格好いい」
 ミリィ自身もそう思っていたので、すごく嬉しかった。

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