エスパー&ソーサラー

緒方宗谷

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1 出会い

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 太陽は、もう空を赤く染め始めている。森の中は、だいぶ暗くなっていた。走り続けたこともあって、あれほど暑いと感じた昼間とは違い、ずいぶんと涼しくなった。そのせいか、ミリィの気分も少しはよくなってきて、表情もだいぶ明るくなった。
 しかし、肉体的疲労はあまり変わらない。疲れに回復能力が追いつかないほど、歩速を上げて進んでいる。理由は、陽が沈む前に村に着かなければ、4日目の野宿になるからだ。季節は春だが、北国の一歩手前的なこの国では、深夜になると凍えるほど寒い。それに、もうケダモノに怯えて寝るのは嫌だ。
 ミリィには、もう1つ村へ急ぐ理由があったが、人権尊重とプライバシー保護のため言えない。
 「そういえばミリィさんって、3日も樹海をさ迷っているんですよね?」
 ギクッ!!
 「いっ、いきなり何を言うのかしら? サラったら、可笑しな娘!ほほほほほ・・・」
 ミリィは遠くを見ながら、無理やり笑った。
 「ミリィさんって、お風呂入ってないでしょ? 分かるよ、だって少し臭いもん」
 ガ~ン!!
 体中の血の気が引いていく。気づかれたくない、まして言われたくない一言を言われ、ミリィの人権とプライバシーは傷つけられた。
 「そ、そんなに臭う? わたしの体・・・(毎日、寒風摩擦で、全身の垢は落してたのに)」
 魂が抜けてしまいそうだ。抜け殻のようにフラフラしている。
 「あっ、でも大丈夫ですよ、わたしの鼻って、人一倍利くんです。普通の人には分からないですよ」
 しかし、臭うのには変わりがない。ミリィは泣き出しそうなのを我慢して、先をいそうだ。
 陽の光は、木々の間から燃える弓矢のように射すだけで、既に辺りはだいぶ暗い。これ以上臭くなりたくない、という思いと、邪霊獣のはびこる古代樹の森の中で野宿する恐怖に胸を支配されながら必死で歩き通したが、無常にも完全に日没を迎えてしまった。
 真っ暗な闇の中、基本的に夜行性の邪霊獣たちが起きだし、低い唸り声をあげている。遠くのほうに微かに見える村の明かりを頼りに、ミリはなんとか南に進むことが出来た。
 サラが言うよりもだいぶ長く感じる道のりを歩きとおして、ミリィはようやく小さな村に着くことができた。
 後ろには、サラが顔色一つ変えずについてくる。彼女の場合、このまま放っておいても死なないだろうが、ミリィは、やっとの思いでようやく命を繋ぎとめることができて、ホッと胸を撫で下ろすことができた。
 3日ぶりの食事、10日ぶりのお風呂、10日ぶりのベッド。寂れた村であったが、ミリィにとっては天国だった。
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