猫のモモタ

緒方宗谷

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世界の中心、揚羽蝶の話

言葉の接着剤

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 突然アゲハちゃんが言いました。
 「そこの紋黄蝶ちゃん、その花の蜜を味わってみたいの、退いてくれるから?」
 「え?私?どうして?いやよ」
 強引なアゲハちゃんに、紋黄蝶は渋々花を譲りました。
 「あら、そっちの花の蜜もおいしそうね、代わってくれるかしら?」
 今度は、紋黄蝶が返事をする前に花に舞い降りて、交代してもらってしまいました。
 困り顔の紋黄蝶たちに気が付いたモモタは、何があったのかと見に行きました。すると、アゲハちゃんは、こんなことを言っています。
 「揚羽蝶は、虫の女王様なのよ、私は揚羽蝶でしょう?だから、私は女王様なのよ」
 「そーなの?」
 「そうよ、虫じゃない人間ですら言っているんだもの。
  だから、きっとそうなのよ」
 「・・・そうかも」
 強引に説得されてしまった紋黄蝶が、みんなの所に飛んでいます。業を煮やした紋黄蝶たちは、遂にアゲハちゃんのところに行きました。
 「あなたさ、ちょっと調子に乗り過ぎなんじゃない?」
 「あら、どうして?」
 「別の子が楽しんでる花の蜜を強引にとっちゃうなんて、失礼だと思わないの?」
 「熊や人間は、揚羽蝶のことを捕まえたがるでしょう?紋白蝶や紋黄蝶のことはあまり捕まえようとしないじゃない?揚羽蝶は、虫界のスターなのよ。
  だから、私はスターなのよ」
 「なーにそれ?」
 紋黄蝶たちは分からない様子です。
 「私はスターとして振る舞わなきゃいけないってこと。
  そうしなきゃ、みんなが悲しむのよ。
  あなたたちはみんなが悲しんでも良いの?そんなひどいことできるの?」
 「うーん・・・」
 紋黄蝶たちは顔を見合わせて、相談し始めました。
 「あの子、本当にスターなのかしら?」
 「初めて聞いたわ、それに、あの子に追っかけがいるとこなんて見たことないもん」
 「でも、揚羽蝶はとても人気があるわ、見る人見る人みんな声をあげてびっくりするわ」
 結局結論が出ません。ずっと相談している紋黄蝶をよそに、アゲハちゃんは別の花に飛んで行ってしまいました。
 モモタは、アゲハ君に訊いてみました。
 「アゲハちゃんってすごいんだね、僕知らなかったよ。
  まさか、アゲハちゃんがここの女王様だったなんて!しかもスターなんだ」
 アゲハ君は、困った様子で答えました。
 「こじ付けだよ」
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