猫のモモタ

緒方宗谷

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世界の中心、揚羽蝶の話

想う相手は誰のこと?

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 いつもの様に、2匹の揚羽蝶がお花の上をヒラヒラしています。
 モモタは、誰もいない別荘のバルコニーでゴロゴロしながら、お花の上を舞う2匹の話を聞いていました。
 「このお花の蜜より、あっちのお花の蜜のほうが美味しいでしょう?」
 「そ・・・、そうだね」
 「このお花、色が悪いわね、向こうのお花に行きましょう」
 「うーん・・・、そうだね」
 アゲハ君は乗り気ではありません。ですが、アゲハちゃんはそれに気が付かずに、勝手に行ってしまいます。アゲハ君は仕方がないので、付いていきました。
 通りすがりに紋黄蝶たちの話が聞こえてきます。
 「ねえ、みんな、あっちのお花がきれいだよ、とまりに行こうよ」
 1匹の紋黄蝶が言うと、みんなもそうね、そうねと言って、飛び立とうとします。
 「あら、あんなお花の蜜は、あまりおいしくないんじゃないかしら。
  すこし色がくすんでいるじゃない?あのお花より、そのお花にした方が良いわよ」
 アゲハちゃんにそう言われた紋黄蝶たちは仕方なく、言われるがままにとまる花を選んでいきます。
 「そこのあなたたちはあの花が良いわ、そっちのあなたたちはこの花ね」
 たまりかねた1匹の紋黄蝶が言いました。
 「私が好きな花は私が決めるわ、お世話してくれなくても結構よ」
 「どうしてそういうこと言うの?私はあなたたちのことを想って言っているのよ。
  どうして、そんな傷つくこと言うのかしら。
  あなた、そんなこと言われた私の気持ちが分かる?とても悲しい気持ちなのよ」
 ヨヨヨヨヨと泣き出しそうな表情に、紋黄蝶は申し訳ない気持ちになりました。
 アゲハちゃんは言いました。
 「分かち合うって大切なことなのよ。
  分かち合うには相手を想ってあげないといけないの、分かるでしょう?自分ばっかりのことを考えてちゃだめよ」
 紋黄蝶は納得がいきませんが、言い返せずにいます。モモタは居た堪れなくなって、紋黄蝶を背中で休ませてあげました。
 「紋黄蝶さんが思ってることは間違っていないよ。
  アゲハちゃんが言ってることはもっともだけど、アゲハちゃんは相手のことを思っていないもの。
  相手のことを想っているんじゃなくて、自分の思ってることを想っているんだよ、きっと」
 しばらくして、お腹がいっぱいになった揚羽蝶の2匹が、休憩しにモモタの所にやってきました。
 「アゲハちゃん、ご苦労様、みんなのお世話をして大変だね」
 「そうでもないわ、私、頑張って、みんなのお友達になりたいの」
 努力しているようですが、モモタの目にはお友達は増えていないように映ったので、言いました。
 「今度は、みんなを自分に合わせるんじゃなくて、みんなにアゲハちゃんを合わせてみたら?」
 「合わせているわよ、あの子にはあの花が似合うでしょうし、あっちの子にはあの蜜の味が良いと思うの。
  私がみんなに合わせて言ってあげてるの、適材適所よ」
 なんか違うなーと思うモモタでした。






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