猫のモモタ

緒方宗谷

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小高い岬のお友達

岬のおばあちゃん

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 海のそばの高い丘の上に岬がありました。
 その岬の一番高いところに大きな赤い屋根のお家が立っています。
 もしかしたら、楽しいお友だちが住んでいるかもしれない、と思って行ったみたモモタは、フワフワ綿あめのようなウサギの冬気がコロコロしているのを見つけました。
 お友だちになりたいと思って辺りを探すと、夏気に生え変わりつつあるウサギを見つけたので、抜き足差し足忍び足。
 最初はお友達になろうと思っていたのに、お腹がすいていたモモタは、いつの間にか食べる気満々です。
 喜び勇んだ口元を見たウサギは、一目散に逃げていきました。
 「うさぎさん、待って-」モモタが叫びます。
 待ってと言われて、待つはずがありません。
 ウサギはお家のお庭に入って、床下を行ったり来たり。
 ついに花壇に生えていたイバラの中に入ってしまいました。
 モモタもウサギをを追いかけていて、イバラの中に入っていきます。
 すぐにモモタは叫んでとまりました。
 「痛い!痛い!何この葉っぱ?」
 ここはバラのイバラの中でした。鋭いトゲがいっぱいあって、チクチクモモタに刺さります。
 進むことも戻ることもできなくなってしまいました。トゲが刺さって痛くて動けないのです。
 しばらくすると、薄紫色のドレスを着て白いショールを肩にかけたおばあちゃんが、お庭にやってきました。
 バラに蕾が出来たか見に来たのですが、ちょっとびっくり。緑と赤色のイバラの中で、可愛いお尻がフリフリしているのを見つけたからです。
 近寄ってきたおばあちゃんは、短いしっぽのお尻を撫でながら言いました。
 「あらあら、猫ちゃん、こんなところでどうしたの?」
 おばあちゃんは、自分の手にイバラが刺さるのもいとわずに、モモタを助けてくれました。
 モモタは、優しいおばあちゃんに、ごろにゃーん、とお礼を言います。
 すると、おばあちゃんは、優しく言いました。
 「猫ちゃん、イバラの中に入っちゃダメよ」
 「バラはひどいお花だね。だって、とてもチクチクして痛くするもの」
 「そんなことないわ。バラはとても弱くて寂しがり屋のお花なのよ。
  みんなとお友達になりたいのに、お友だちになれなかったらどうしようって怖がって、みんなを避けてしまうの。
  だから、イバラのトゲでお花を守っているのよ」
 「トゲがあったら、本当にお友達になれる子ともお友達になれないね」
 “モモタ”と描かれた首輪を見ながら、おばあちゃんは言います。
 「いいえ、それは違うのよ。本当にお友達になると、トゲはトゲじゃなくなるの。
 その証拠に、モモタちゃんが追いかけていたうさちゃんは、トゲに刺されずにイバラの奥に逃げ込めたでしょう?」
 おばあちゃんは、イバラの奥から顔を出したウサギににっこり微笑んで、言いました。
 「本当だ。なんでだろう?」
 「トゲがあることで来る者を拒むことになるのだけれど、それと同時にイバラの中にいる者を守ることにもなるのよ」
 バラの弱さは、裏を返せば強さと同じなのです。
 傷つきやすいお友だちは、その傷を癒してくれるお友達に出会うと、びっくりするくらい成長することがることがあります。
 このおばあちゃんは、猫の言葉が分かるのでしょうか?それとも偶然?
 とても不思議なおばあちゃんでした。



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