猫のモモタ

緒方宗谷

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ずっと犬生敵だらけ、黒犬の話

ハートの落とし穴

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 空き家のそばで、たくさんの人が騒いでいます。
 大捕り物です。暴れん坊のひびき君を捕まえようとやって来た人間たちでした。
 みかんちゃんは、大声を張り上げる人間たちの合間をぬっていって叫びました。
 「ひびき君!早く逃げて!」
 「うるさい!お前が連れてきたんだろう!」
 「いつまでそんなこと言ってるの?」
 「お前は、アイツ(尻尾)を捕まえようとしている俺を失敗させたかったんだ。 
  もうすぐあいつを捕まえらせそうだったのに、お前のせいでもうだめだ」
 ひびき君は、塀の上にいたモモタにも吠え猛ってきました。
 「トラネコめ!そんなところでほくそ笑みやがって!そんなに不幸な俺が面白いか!!」
 「僕笑ってなんてないよ。
  それに、人間が怒ったのは自分のせいでしょう?
  ひびき君がみかんちゃんに嚙みつくから、ご主人様が怒ったんだよ」
 「そうさせられたんだ!このスピッツは良い顔して俺に近づいて、嚙みつかせたんだ。
  考えても見ろ、俺は来るなって言っていたのにわざと来たんだ。
  わざと来て追いかけさせて、コリーがいるところでワザと捕まってみせて、俺を悪者にしたてやがったんだ。 
  俺には良いヤツ面して、飼い主たちには被害者ずらして、こうなるように仕組んだんだ」
 それを聞いていたみかんちゃんが叫びます。
 「そんなの違うったら!わたしと逃げましょうよ。
  海でも山でも遠いところに」
 「そんなこと言って、飼い主に俺の居場所を教えるんだろ?その手には乗らないぞ」
 ひびき君は、ついに網でとらえられました。
 ヒビキ君が乱心気味に吠え叫びます。
 「人間だって、ずっと前から俺を捕まえたがっていたんだ。
  だから、スピッツが俺のところに来るのを黙って見てたんだ。
  ただスピッツを追いかけているだけでこんなことするとイジメになるから、ワザと放っておいて、俺がハメられるのを待っていたんだ」
 みかんちゃんとモモタ意外、誰もヒビキ君を同情しませんでした。ひびき君は、だいぶ前から人間を襲い始めていたからです。
 みかんちゃんが仕組んだ罠ではなく、自業自得でこうなったということをみんな知っていたのです。
 オリに入れられて連れて行かれるひびき君は、捕まってなお鉄の折に嚙みついて唸っていました。
 「寂しいとあんなになっちゃうこともあるなんて、愛を無くすと怖いんだなぁ」とモモタは思いました。








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