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モモタとママと虹の架け橋
第七話 モテ期到来
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続いて、みんなのアイドルねず子ちゃんのオンステージです。
「それじゃあ、チュウ太さんを見送るわたしたちは、チュウ太さんを本当のお友だちだって思っていないってこと? それはあんまりだわ。わたし、チュウ太さんのこと好き好き大好きなのよ。結婚してほしいのよ。だからお願い、行かないで」
それを聞いたチュウ太は一瞬で沸騰して、頭から勢いよく湯気を噴き出しました。
「ねねねねね、ねず子ちゃん、それそれそれそれ、それは本当かい?」
「本当よ。だから旅立ってほしくないのよ」
「うひ~~~~~♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡‼‼‼‼‼」
チュウ太は、衝撃の告白に気が動転して飛び上がり、切り株の上にあおむけに倒れました。
「う、う、ううう~」
あたかも十二ラウンド戦い抜いて力尽き、ついにダウンしたボクサーがなんとか立ち上がろうとするかのようにヨロヨロと立ちあがったチュウ太は、歯を食いしばって唸っています。
モモタは、その顔を覗き込んで言いました。
「おめでとう、チュウ太。僕大丈夫だから幸せになって」
「くぅ~…モモタぁ~」
それでもチュウ太は、なお我慢した様子でピョンピョン飛び跳ねて、踏ん張って、走り回るだけ走り回って、ようやく戻ってきて言いました。
「ねず子ちゃん、僕もねず子ちゃんのこと大好きだけれど、だからこそ行くんだ。考えてごらん、このお家にはたくさん食べ物があるけれど、もしなくなったりしたら、僕たちは食べ物を探しにここから出なきゃいけないだろう? そうなった時とても不安に思うけど、虹の雫を探して大冒険した僕となら、不安なんてなんにもないと思うんだ」
「そうね、でもあなたが不安なんでしょう? 旅立つチュウ太さんを追いかけて一緒に冒険に出てくれないわたしなんかと結婚したら、そんな時わたしは役立たずだものね」
「そんなことないよ」
チュウ太は、オロオロしながらねず子ちゃんに言いましたが、ねず子ちゃんは信じてくれません。
「もう知らない! 他にいいネズミ見つけて結婚すればいいんだわ!」
「僕が大好きなのはねず子ちゃんだよ。ホントにホント」
「でも、チュウ太さんの話だと、わたしはチュウ太さんが大変な時におんぶに抱っこで何もしないじゃない。わたしだって、一緒にドングリとったり、ヒマワリの種とったり出来るのに。そうだわ。『今モモタさんを助けないってことはわたしたちが困難にぶつかった時に助けられない』って言ったでしょ? と言うことは、今ここに残れないってことは、わたしが困難にぶつかって残ってほしい時に、チュウ太さんは残れないってことよ。たくさん子供が生まれても子育てしてくれないってことでしょう?」
「するよ、するする。僕、猫より速く走れる子供を育ててみせるよ」
「信じられないわ。チュウ太さんの話だと、信じられなくて当たり前のはずよ」
ねず子ちゃんの方が一枚上手のようです。
モモタは、泣きだしたねず子ちゃんを一生懸命慰めるチュウ太に気がつかれないように、そっとそばを離れました。
ですが、モモタが背を向けた時に、チュウ太がねず子ちゃんの肩をさすりながら言いました。
「見送るしかできないと友情がないなんてことないよ。見送ることが友情なんだよ。考えてごらん。みんながここにいてくれるからこそ、僕は冒険から帰ってくる場所があるってものだろう? もし、ねず子ちゃんが僕のことを想って待っていてくれたら、僕はどんな困難も乗り越えられると思うんだ。
ネズミにはそれぞれ役割があって、一緒に旅立つネズミや無事を祈るネズミがいるんだよ。ねず子ちゃんは、一緒にドングリ探して一緒に子育てしたいって言ったけれど、産毛しか生えていない子供を背負って、二匹でごはんを探しにいけやしないだろう? 二匹で子育てしてたら、ごはんをとってこれないだろう? 交互にしようよ。そのためには、時には旅立って時には残ってくれる僕が必要だろ?」
ねず子ちゃんは、俯いて首を横に振っています。どうしても行ってほしくないようでした。
チュウ太は、一生懸命に考えてから話し始めました。
「ねず子ちゃん、僕たちは毛も生えていない頃から比べて、だいぶ大きくなっただろう? お母さんがミルクをくれなくなって初めて巣から出たんだ。屋根裏にごはんがなくって初めて柱を下りたんだ。行き止まりがあって初めて前歯で壁に穴をあけたんだ。光が眩しくて怖かったけれどいい香りがして、初めて部屋の中に出て行ったんだ。木の実があることを知って初めて外に出たんだ。僕たちはそうやって成長してきたんだよ。だから、モモタが昔話を持って僕たちの前にやって来て、僕たちはチューチュー会議をしているってのは、“ここが成長のしどころですよ”ってことなんだと思う。だから僕行くよ――」
チュウ太は、そう言ってモモタを振り返ります。そして間髪入れずに叫びました。
「あちゃちゃちゃちゃっ、モモタいなよ。戻ってこいよ。おーい」大分離れたところを歩いていたモモタに、手を振りながら叫んで呼びました。
「僕今かっこいいこと言ってるんだから、ちゃんとそばて聞いていてくれなきゃ困るよ。言い終わった後、颯爽とモモタの頭に飛び乗って旅立つんだから。『チュウ太さ~ん、おたっしゃでー』ってねず子ちゃんに叫ばれながら、茜色に滲んだ夕日に向かって歩んでいく予定なんだからさぁ」
「ふーん」モモタはチラリと空を見ました。「でもまだ午前だよ」
「いいのいいのっ、気持ちだから」
かっこいいことを言っていたのにズッコケさせられたチュウ太をみんなで笑っていると、お家のおばあちゃんが出てきました。
「あらあら、モモタちゃん、久しぶりに遊びに来てくれたんだねぇ。待ってておいで、今猫ちゃんささみを持ってきてあげるからね」
「わーい」
咄嗟に隠れたチュウ太たちも「わーい」「わーい」
モモタはみんなと一緒に、お家のおばあちゃんからもらった猫ちゃんささみをお腹いっぱい食べてから、チュウ太を頭に乗せて山へと入っていきました。
「それじゃあ、チュウ太さんを見送るわたしたちは、チュウ太さんを本当のお友だちだって思っていないってこと? それはあんまりだわ。わたし、チュウ太さんのこと好き好き大好きなのよ。結婚してほしいのよ。だからお願い、行かないで」
それを聞いたチュウ太は一瞬で沸騰して、頭から勢いよく湯気を噴き出しました。
「ねねねねね、ねず子ちゃん、それそれそれそれ、それは本当かい?」
「本当よ。だから旅立ってほしくないのよ」
「うひ~~~~~♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡‼‼‼‼‼」
チュウ太は、衝撃の告白に気が動転して飛び上がり、切り株の上にあおむけに倒れました。
「う、う、ううう~」
あたかも十二ラウンド戦い抜いて力尽き、ついにダウンしたボクサーがなんとか立ち上がろうとするかのようにヨロヨロと立ちあがったチュウ太は、歯を食いしばって唸っています。
モモタは、その顔を覗き込んで言いました。
「おめでとう、チュウ太。僕大丈夫だから幸せになって」
「くぅ~…モモタぁ~」
それでもチュウ太は、なお我慢した様子でピョンピョン飛び跳ねて、踏ん張って、走り回るだけ走り回って、ようやく戻ってきて言いました。
「ねず子ちゃん、僕もねず子ちゃんのこと大好きだけれど、だからこそ行くんだ。考えてごらん、このお家にはたくさん食べ物があるけれど、もしなくなったりしたら、僕たちは食べ物を探しにここから出なきゃいけないだろう? そうなった時とても不安に思うけど、虹の雫を探して大冒険した僕となら、不安なんてなんにもないと思うんだ」
「そうね、でもあなたが不安なんでしょう? 旅立つチュウ太さんを追いかけて一緒に冒険に出てくれないわたしなんかと結婚したら、そんな時わたしは役立たずだものね」
「そんなことないよ」
チュウ太は、オロオロしながらねず子ちゃんに言いましたが、ねず子ちゃんは信じてくれません。
「もう知らない! 他にいいネズミ見つけて結婚すればいいんだわ!」
「僕が大好きなのはねず子ちゃんだよ。ホントにホント」
「でも、チュウ太さんの話だと、わたしはチュウ太さんが大変な時におんぶに抱っこで何もしないじゃない。わたしだって、一緒にドングリとったり、ヒマワリの種とったり出来るのに。そうだわ。『今モモタさんを助けないってことはわたしたちが困難にぶつかった時に助けられない』って言ったでしょ? と言うことは、今ここに残れないってことは、わたしが困難にぶつかって残ってほしい時に、チュウ太さんは残れないってことよ。たくさん子供が生まれても子育てしてくれないってことでしょう?」
「するよ、するする。僕、猫より速く走れる子供を育ててみせるよ」
「信じられないわ。チュウ太さんの話だと、信じられなくて当たり前のはずよ」
ねず子ちゃんの方が一枚上手のようです。
モモタは、泣きだしたねず子ちゃんを一生懸命慰めるチュウ太に気がつかれないように、そっとそばを離れました。
ですが、モモタが背を向けた時に、チュウ太がねず子ちゃんの肩をさすりながら言いました。
「見送るしかできないと友情がないなんてことないよ。見送ることが友情なんだよ。考えてごらん。みんながここにいてくれるからこそ、僕は冒険から帰ってくる場所があるってものだろう? もし、ねず子ちゃんが僕のことを想って待っていてくれたら、僕はどんな困難も乗り越えられると思うんだ。
ネズミにはそれぞれ役割があって、一緒に旅立つネズミや無事を祈るネズミがいるんだよ。ねず子ちゃんは、一緒にドングリ探して一緒に子育てしたいって言ったけれど、産毛しか生えていない子供を背負って、二匹でごはんを探しにいけやしないだろう? 二匹で子育てしてたら、ごはんをとってこれないだろう? 交互にしようよ。そのためには、時には旅立って時には残ってくれる僕が必要だろ?」
ねず子ちゃんは、俯いて首を横に振っています。どうしても行ってほしくないようでした。
チュウ太は、一生懸命に考えてから話し始めました。
「ねず子ちゃん、僕たちは毛も生えていない頃から比べて、だいぶ大きくなっただろう? お母さんがミルクをくれなくなって初めて巣から出たんだ。屋根裏にごはんがなくって初めて柱を下りたんだ。行き止まりがあって初めて前歯で壁に穴をあけたんだ。光が眩しくて怖かったけれどいい香りがして、初めて部屋の中に出て行ったんだ。木の実があることを知って初めて外に出たんだ。僕たちはそうやって成長してきたんだよ。だから、モモタが昔話を持って僕たちの前にやって来て、僕たちはチューチュー会議をしているってのは、“ここが成長のしどころですよ”ってことなんだと思う。だから僕行くよ――」
チュウ太は、そう言ってモモタを振り返ります。そして間髪入れずに叫びました。
「あちゃちゃちゃちゃっ、モモタいなよ。戻ってこいよ。おーい」大分離れたところを歩いていたモモタに、手を振りながら叫んで呼びました。
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「ふーん」モモタはチラリと空を見ました。「でもまだ午前だよ」
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「あらあら、モモタちゃん、久しぶりに遊びに来てくれたんだねぇ。待ってておいで、今猫ちゃんささみを持ってきてあげるからね」
「わーい」
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