猫のモモタ

緒方宗谷

文字の大きさ
382 / 514
モモタとママと虹の架け橋

第十五話 なぞなぞウォーキング

しおりを挟む
 森と河原の境にいた鳥たちが、細長い石ころだらけの河原へと出てきて、考え込むモモタたちの周りに集まってきました。

 「体じゃないの?」とアゲハちゃん。「一羽だったり三羽だったりしてたじゃない」

 みんなは、最初に見つけたミゾゴイのみちる君の体をくまなく探します。

 「ぎゃぎゃぎゃっ、くすぐったい」

 面白おかしく身をよじるみちる君は持っていません。なにも見つからなかったので、モモタたちは、他のミゾゴイたちの体も探し始めます。

 みんな、「ぎゃっぎゃ、ぎゃっぎゃ、グゲグゲ、グゲグゲ」大笑いです。「おいらにもやってー、おいらにもやって―」と群がってきました。

 もみくしゃにされたモモタたちは、大群の中からなんとか這い出します。

 「モモちゃん大丈夫?」

 ミゾゴイたちをひらりとかわして見守っていたアゲハちゃんが、訊きました。

 みんなで逃げようとしますが、ミゾゴイたちは諦めません。「おいらにもやってー、おいらにもやって―」と迫ってきて、おしくらまんじゅう状態です。

 我慢できなくて、モモタとキキが、「ふにゃ~」「ヒューイ」と鳴いて威嚇しました。

 動かなくなったミゾゴイたちに、モモタが「今なぞなぞを考えているから待っててよ」と、お願いします。

 すると、ミゾゴイたちは大人しく見守ります。

 今度は、チュウ太に答えが思い浮かびました。

 「カラーだ。色のことだよ。“体”が転じて“カラーだ”なんじゃないか?」

 「チュウ太のくせにあったまイイー♡」

 アゲハちゃんが舞い飛んで褒めちぎります。

 「“くせには”よけいだよ、“くせに”は」

 「あはっ、ごめーん」

 それでみんなで珍しい色を探します。

 確かに、アゲハちゃんやキキが住んでいた山とは、緑の色も土の色も違うのですが、緑は緑だし、茶色は茶色です。珍しいというほどの色の違いではありません。

 モモタが、木々を見渡しながら言いました。

 「そういえば、木の幹は珍しい感じだね。幹の灰色のことを言ってるのかな?」

 木々はツルツルした灰色の樹皮で、所々に横線が入っています。エノキという木でした。

 アゲハちゃんたちが住んでいた森の木は、茶色と灰色のまだら模様で縦に裂け目のある樹皮の椎の木と、鱗片状の樹皮の松が多かったので、モモタは珍しく思いました。

 アゲハちゃんが言いました。

 「お家の近くにうるしがあったわ。灰色のツルツルした感じの木肌よ」

 すると、「うるし?」とキキ「あの木うるしって言うのか」

 「うん、春に山に遊びに来た人が、そう言っていたわ。芽を天ぷらにして食べるんだって」

 「天ぷらって何?」とチュウ太が訊きます。

 「しらなーい」とアゲハちゃんが言ったので、モモタが教えてあげました。

 「てん…ぷらぷらぷらぷらぷらー、て作るんだよ」

 「何それ?」とアゲハちゃんがはてな、と首を傾げます。

 「そんなふうに音が出るから、天ぷらって言うの」

 みんなが「ふーん」と分かったような分からなかったような返事をしました。

 その後も、ゾロゾロとついてくるミゾゴイたちを引き連れて辺りの森を探索しますが、何も見つかりませんでした。そこで、キキが上空から森を見渡し、アゲハちゃんが梢の中を飛び回って探し、モモタとチュウ太が地上から探します。ですが、やはり見つかりません。

 あることに気がついて戻ってきたキキが、言いました。

 「そう言えばたくさん巣があって、それぞれに住んでいる鳥がいるのに、あの巣だけいないね」

 それを聞いたみんなで、その巣がある山桜の木の根元までやってきて巣を見上げます。

 「そうか」とモモタが言いました。「“体”じゃなくて、“カラーだ”でもなくて、“空(カラ)”だ、なんだ」

 モモタが、空っぽの巣がある桜の木に登って、巣をくまなく探すけれど、なにもありません。

 チュウ太が言いました。

 「もしかしたら、この巣の主が、持っていっちゃったのかな?」

 そう言い終わって、枝を組んだお皿形の巣の裏側を探し始めました。

 でもやっぱりありません。

 あまりに賑やかにやっていたので、薄茶色のハツカネズミが地面に掘ったお家から顔を出して言いました。

 「なんだい、こんなに集まっちゃって。昼間に寝ているお友達だっているんだから、ちょっと考えておくれよ。

  それに、タカに猫にミゾゴイたくさんだなんて、怖くて夢に出てきそうだよ」

 「ごめんなさいね」とアゲハちゃんが謝ると、すかさずチュウ太が訊きました。

 「この巣のミゾゴイってどこ行ったの?」

 「んー?」と、ハツカネズミが巣を見上げて答えました。

 「結構前に向こうの小川をピョンピョン飛び跳ねて、下って行ったよ」

 モモタたちは、もう一度小川に戻りました。ですが、匂いの痕跡も残っていません。

 ちょうど、“夜更かし”の逆の“朝更かし”をしていたフクロウおばさんがいたので、訊いてみました。

 「ああ、あの坊やか。以前ここいらでよくサワガニや魚を取って食べていたよ。
  そういえば、最後に見たのはいつだったかねぇ。たしか、わたしのお友達が『迷子になった様子で、夜ウロウロしていた』と言っていたね。『ボォーボォー、ブーブー』て鳴きながら川を下っていったらしいけれど、まだ帰っていないのかい?」

 フクロウおばさんにそう教えてもらったモモタたちは、小川伝いに山を下りていきました。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

あだ名が242個ある男(実はこれ実話なんですよ25)

tomoharu
児童書・童話
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!数年後には大ヒット間違いなし!! 作品情報【伝説の物語(都道府県問題)】【伝説の話題(あだ名とコミュニケーションアプリ)】【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】【トモレオ突破椿】など ・【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。 小さい頃から今まで主人公である【紘】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね! ・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。 頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください! 特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します! トランプ男と呼ばれている切札勝が、トランプゲームに例えて次々と問題を解決していく【トランプ男】シリーズも大人気! 人気者になるために、ウソばかりついて周りの人を誘導し、すべて自分のものにしようとするウソヒコをガチヒコが止める【嘘つきは、嘘治の始まり】というホラーサスペンスミステリー小説

たったひとつの願いごと

りおん雑貨店
絵本
銀河のはてで、世界を見守っている少年がおりました。 その少年が幸せにならないと、世界は冬のままでした。 少年たちのことが大好きないきものたちの、たったひとつの願いごと。 それは…

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

ぽんちゃん、しっぽ!

こいちろう
児童書・童話
 タケルは一人、じいちゃんとばあちゃんの島に引っ越してきた。島の小学校は三年生のタケルと六年生の女子が二人だけ。昼休みなんか広い校庭にひとりぼっちだ。ひとりぼっちはやっぱりつまらない。サッカーをしたって、いつだってゴールだもん。こんなにゴールした小学生ってタケルだけだ。と思っていたら、みかん畑から飛び出してきた。たぬきだ!タケルのけったボールに向かっていちもくさん、あっという間にゴールだ!やった、相手ができたんだ。よし、これで面白くなるぞ・・・

神ちゃま

吉高雅己
絵本
☆神ちゃま☆は どんな願いも 叶えることができる 神の力を失っていた

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

美少女仮面とその愉快な仲間たち(一般作)

ヒロイン小説研究所
児童書・童話
未来からやってきた高校生の白鳥希望は、変身して美少女仮面エスポワールとなり、3人の子ども達と事件を解決していく。未来からきて現代感覚が分からない望みにいたずらっ子の3人組が絡んで、ややコミカルな一面をもった年齢指定のない作品です。

処理中です...