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モモタとママと虹の架け橋
第十六話 かくれんぼ大好き
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モモタたちは、だいぶ川を下ってきました。苔むした岩ゴロの小川は姿を変えて、つるつるりんの小さな石ころの小川になっています。木々よりも草やツルが増えてきました。
小川がやぶに覆われていたので、アーチ状になったところをくぐって抜けると、山間の集落がありました。
山山の谷間に作られた小さな集落です。まさに猫の額といえるほどの大きさしかありません。そこに、多くの木々が植えられたおもむきのあるお家が集まっています。車が一台通れる程度の道がくねっていて、所々に菜園がありました。
キキが言いました。
「山の鳥が人里に出るなんて考えられないけどな」
「あんな変な鳥なら、出てもおかしくないかもよ」とチュウ太が答えると、「そうね」とアゲハちゃんが言って、続けて説明します。
「最初にみちる君に会った時、モモちゃんは天敵の猫なのに、ずっと木のふりしてそばで見ていたでしょう? 人里にだって興味津津なんじゃないかしら」
集落のすぐそばまで山が迫っています。チュウ太のお家がある村とも違う雰囲気でした。
チュウ太の村は、見渡す限りの田んぼの中にお家が点在していたのですが、ここは町のように家々が寄り添いあっています。周りに少し田畑がありましたが、すぐに山のすそ野になっていました。
あるお家のお庭に鳥かごがぶら下がっているのを、モモタが見つけました。中には、綺麗なインコちゃんが住んでいました。
アゲハちゃんが行って、「ミゾゴイを見なかったかしら」と訊いてみます。
「ミゾゴイ? いたわよ。年に何回か集落の上を飛ぶのは見るけれど、集落の中にいるのは珍しかったから覚えているわ。
ここのお庭でミミズをつついていたけれど、「サワガニが食べたーい」って言っていたから、お魚屋さんのことを教えてあげたら、「お腹がすいたから、お魚食べにいこーと」って言っていたかしら」
モモタの背中に登ってインコを見ていたチュウ太が、モモタの頭にもたれかかって言いました。
「うへぇ、ようやく山に登ってきたのに、また下りるの? 町のお魚屋さんに行って、「もう帰ったよ」って言われたらどうするんだい?」
キキが「じゃあ、僕だけ見てこようか?」と言いました。飛べるのならついてくる? と言ったふうにアゲハちゃんを見ます。
「天敵のタカだけで行って、話を聞いてくれるかしら? 木の枝にとまられると枝にしか見えないから、見つけられないのがオチじゃない?」とアゲハちゃん。
モモタは、それもそうか、と思いました。
アゲハちゃんが続けます。
「山のミゾゴイたちは、モモちゃんに興味津々だったじゃない? 猫が珍しいのよ。モモちゃんが行けば、会ってくれるかも」
「でもそれじゃぁ――」と、チュウ太が考えて言いました。「町の猫に対しても同じじゃん。もう食べられてるかも」
「大変だー」と、モモタとキキにアゲハちゃん。みんなは急いで町に下りることにしました。
「キキ、先に行って空から探して」とモモタが頼みます。
「オッケー」と言って、キキが飛んでいきました。
町へと向かう峠を登っていると、一台の軽トラックがやってきました。モモタたちは、その軽トラックの荷台に乗って、町へと向かいます。
町は、人間のお家が所狭しと立ち並んでいましたが、どれも背の低い建物だったので、とても空が広く感じられました。町と言っても、都会の町とはだいぶおもむきが違っています。
家々にはそれぞれお庭があって、庭木が生えてありました。ミゾゴイが擬態できそうな場所がたくさんあって、簡単には見つけられそうにありません。
トラックが町へと入って最初に停まった信号でモモタたちが荷台から降りると、すぐにキキが滑空しながらやってきて、庭木にとまり言いました。
「ミゾゴイは見当たらないね。お魚屋さんは一軒あったけれど、そばにはスズメもいなかったよ」
モモタは、キキの頑張りを労って考えます。
「それじゃあ、一度そのお魚屋さんに行ってみようよ。何かヒントがあるかもしれないし」
「ヒント?」とアゲハちゃんが訊きました。
「うん、においとか、目撃証言とか」
「わぁ、楽しそう。探偵みたいね」
アゲハちゃんは嬉しそうにチュウ太の方を向いて、「ワトソン君、頑張ってね」と言いました。
「ふっふっふっ、謎解きはまっかせなさーい」
「あらやだ、アシスタントよ」
「あちゃちゃ、もっと頼れよ。友達じゃないか」
お話ししながらキキの飛ぶ方に歩いていくと、一軒のお魚屋さんが見えてきました。みんなは、辺りの木々を慎重に見やりながら進みますが、擬態した鳥は見当たりません。
チュウ太が、「お魚屋さんの中に入っているかもな」と言いました。
「うーん」と唸りながら、モモタがお魚屋さんを離れたところから覗きます。経験上、お魚屋さんに近づくと、追い払われる、と分かっていましたから、中には入れません。
中に入るのを躊躇している様子を見てとったアゲハちゃんが言いました。
「わたしが見てきてあげる」
アゲハちゃんは、「頑張ってくるー」と手を振って、お魚屋さんの中へと飛んでいきました。
しばらくして帰ってきましたが、鳥どころかペットはいないようでした。
「全部のお部屋を見たから間違いないわ」
アゲハちゃんの言葉を聞いて、みんながっくしです。
ふと見ると、頭と背中が黒い白黒の猫が、庭木の隙間からこちらを見ています。チュウ太が言いました。
「猫って、あれで隠れてるつもりかねー?」チュウ太の後ろに隠れて、白黒猫の様子を窺うモモタを振り返って、「なんかみんな丸見えなんだよな」と続けます。
アゲハちゃんとキキは、「あ~」と妙に納得しました。
チュウ太が、モモタの前から移動すると、慌てたモモタが「ああっ、ダメダメッ、見つかっちゃうよ」と小声で叫びます。
そこでキキが片方の翼を開いて、モモタの背中を撫でました。アゲハちゃんもモモタの鼻の先にとまって、お鼻をナデナデ。すると、モモタは隠れている気分になって言いました。
「白黒猫はどうしてる?」
モモタはなんか楽しそうです。
アゲハちゃんが白黒猫のところに飛んで行くと、慌てたモモタがチュウ太の陰に伏せました。
「だから、丸見えだって」と、チュウ太がモモタのお鼻をポンポンしました。
アゲハちゃんが、白黒猫に話しかけます。
「こんにちは、バイカラーの猫さん。ちょっと教えてほしいんだけど、ミゾゴイ見なかった?」
「ミゾゴイ? ああ、見たよ」
インコちゃんの言う通りでした。何日か前に、ずっとお魚を眺めていた、と言うのです。
「なんか怪我をしているようで飛べそうになかったから、食べてやろうと追いかけまわしたんだけど、けっこうすばしっこくて捕まんないんだ」
「それで、食べたの?」とモモタが訊くと、「ううん、人間がやってきて捕まえていった」と返ってきました。そして続けて言いました。
「その人間、魚を買っていったから、お腹いっぱいになって余るだろうと思ってついていったんだけど、余りのごはんはくれなかった」
モモタたちは、白黒猫からその人間の帰っていったお家を教えてもらって、行ってみることにしました。
小川がやぶに覆われていたので、アーチ状になったところをくぐって抜けると、山間の集落がありました。
山山の谷間に作られた小さな集落です。まさに猫の額といえるほどの大きさしかありません。そこに、多くの木々が植えられたおもむきのあるお家が集まっています。車が一台通れる程度の道がくねっていて、所々に菜園がありました。
キキが言いました。
「山の鳥が人里に出るなんて考えられないけどな」
「あんな変な鳥なら、出てもおかしくないかもよ」とチュウ太が答えると、「そうね」とアゲハちゃんが言って、続けて説明します。
「最初にみちる君に会った時、モモちゃんは天敵の猫なのに、ずっと木のふりしてそばで見ていたでしょう? 人里にだって興味津津なんじゃないかしら」
集落のすぐそばまで山が迫っています。チュウ太のお家がある村とも違う雰囲気でした。
チュウ太の村は、見渡す限りの田んぼの中にお家が点在していたのですが、ここは町のように家々が寄り添いあっています。周りに少し田畑がありましたが、すぐに山のすそ野になっていました。
あるお家のお庭に鳥かごがぶら下がっているのを、モモタが見つけました。中には、綺麗なインコちゃんが住んでいました。
アゲハちゃんが行って、「ミゾゴイを見なかったかしら」と訊いてみます。
「ミゾゴイ? いたわよ。年に何回か集落の上を飛ぶのは見るけれど、集落の中にいるのは珍しかったから覚えているわ。
ここのお庭でミミズをつついていたけれど、「サワガニが食べたーい」って言っていたから、お魚屋さんのことを教えてあげたら、「お腹がすいたから、お魚食べにいこーと」って言っていたかしら」
モモタの背中に登ってインコを見ていたチュウ太が、モモタの頭にもたれかかって言いました。
「うへぇ、ようやく山に登ってきたのに、また下りるの? 町のお魚屋さんに行って、「もう帰ったよ」って言われたらどうするんだい?」
キキが「じゃあ、僕だけ見てこようか?」と言いました。飛べるのならついてくる? と言ったふうにアゲハちゃんを見ます。
「天敵のタカだけで行って、話を聞いてくれるかしら? 木の枝にとまられると枝にしか見えないから、見つけられないのがオチじゃない?」とアゲハちゃん。
モモタは、それもそうか、と思いました。
アゲハちゃんが続けます。
「山のミゾゴイたちは、モモちゃんに興味津々だったじゃない? 猫が珍しいのよ。モモちゃんが行けば、会ってくれるかも」
「でもそれじゃぁ――」と、チュウ太が考えて言いました。「町の猫に対しても同じじゃん。もう食べられてるかも」
「大変だー」と、モモタとキキにアゲハちゃん。みんなは急いで町に下りることにしました。
「キキ、先に行って空から探して」とモモタが頼みます。
「オッケー」と言って、キキが飛んでいきました。
町へと向かう峠を登っていると、一台の軽トラックがやってきました。モモタたちは、その軽トラックの荷台に乗って、町へと向かいます。
町は、人間のお家が所狭しと立ち並んでいましたが、どれも背の低い建物だったので、とても空が広く感じられました。町と言っても、都会の町とはだいぶおもむきが違っています。
家々にはそれぞれお庭があって、庭木が生えてありました。ミゾゴイが擬態できそうな場所がたくさんあって、簡単には見つけられそうにありません。
トラックが町へと入って最初に停まった信号でモモタたちが荷台から降りると、すぐにキキが滑空しながらやってきて、庭木にとまり言いました。
「ミゾゴイは見当たらないね。お魚屋さんは一軒あったけれど、そばにはスズメもいなかったよ」
モモタは、キキの頑張りを労って考えます。
「それじゃあ、一度そのお魚屋さんに行ってみようよ。何かヒントがあるかもしれないし」
「ヒント?」とアゲハちゃんが訊きました。
「うん、においとか、目撃証言とか」
「わぁ、楽しそう。探偵みたいね」
アゲハちゃんは嬉しそうにチュウ太の方を向いて、「ワトソン君、頑張ってね」と言いました。
「ふっふっふっ、謎解きはまっかせなさーい」
「あらやだ、アシスタントよ」
「あちゃちゃ、もっと頼れよ。友達じゃないか」
お話ししながらキキの飛ぶ方に歩いていくと、一軒のお魚屋さんが見えてきました。みんなは、辺りの木々を慎重に見やりながら進みますが、擬態した鳥は見当たりません。
チュウ太が、「お魚屋さんの中に入っているかもな」と言いました。
「うーん」と唸りながら、モモタがお魚屋さんを離れたところから覗きます。経験上、お魚屋さんに近づくと、追い払われる、と分かっていましたから、中には入れません。
中に入るのを躊躇している様子を見てとったアゲハちゃんが言いました。
「わたしが見てきてあげる」
アゲハちゃんは、「頑張ってくるー」と手を振って、お魚屋さんの中へと飛んでいきました。
しばらくして帰ってきましたが、鳥どころかペットはいないようでした。
「全部のお部屋を見たから間違いないわ」
アゲハちゃんの言葉を聞いて、みんながっくしです。
ふと見ると、頭と背中が黒い白黒の猫が、庭木の隙間からこちらを見ています。チュウ太が言いました。
「猫って、あれで隠れてるつもりかねー?」チュウ太の後ろに隠れて、白黒猫の様子を窺うモモタを振り返って、「なんかみんな丸見えなんだよな」と続けます。
アゲハちゃんとキキは、「あ~」と妙に納得しました。
チュウ太が、モモタの前から移動すると、慌てたモモタが「ああっ、ダメダメッ、見つかっちゃうよ」と小声で叫びます。
そこでキキが片方の翼を開いて、モモタの背中を撫でました。アゲハちゃんもモモタの鼻の先にとまって、お鼻をナデナデ。すると、モモタは隠れている気分になって言いました。
「白黒猫はどうしてる?」
モモタはなんか楽しそうです。
アゲハちゃんが白黒猫のところに飛んで行くと、慌てたモモタがチュウ太の陰に伏せました。
「だから、丸見えだって」と、チュウ太がモモタのお鼻をポンポンしました。
アゲハちゃんが、白黒猫に話しかけます。
「こんにちは、バイカラーの猫さん。ちょっと教えてほしいんだけど、ミゾゴイ見なかった?」
「ミゾゴイ? ああ、見たよ」
インコちゃんの言う通りでした。何日か前に、ずっとお魚を眺めていた、と言うのです。
「なんか怪我をしているようで飛べそうになかったから、食べてやろうと追いかけまわしたんだけど、けっこうすばしっこくて捕まんないんだ」
「それで、食べたの?」とモモタが訊くと、「ううん、人間がやってきて捕まえていった」と返ってきました。そして続けて言いました。
「その人間、魚を買っていったから、お腹いっぱいになって余るだろうと思ってついていったんだけど、余りのごはんはくれなかった」
モモタたちは、白黒猫からその人間の帰っていったお家を教えてもらって、行ってみることにしました。
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