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モモタとママと虹の架け橋
第百三十四話 螺旋の上
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上空から、誰もいなくなった防波堤をキキが見下ろしていました。その顔には、状況を悲観したかのような表情がありありと浮かんでいます。
そこにカンタンが舞い上がってきて合流しました。
「モモタが…モモタが・・・」チュウ太とカンタンがうわごとのように繰り返しています。
キキが、怒鳴りました。
「まだ分からないよ。海に落ちたとしても、まだもがいているかもしれないじゃないか。早く見つけて助けてやらないと‼」
「でもどうやって助けてあげられるの? 僕たちも波に飲まれちゃうよ!」カンタンが嘆きます。
「分からないよ! 分からないけど、何とかしなきゃ‼‼」
二羽して押し問答を繰り返しながら、旋回を続けます。必死にモモタたちを探していたキキの瞳に、防波堤の一階にある窓が映りました。よくは見えないのですが、開いているように見受けられます。
もしやと思って高度を下げて確認すると、間違いなく開いています。
キキは、カンタンを呼んで言いました。
「たぶん、みんなはあの窓から中に入ったんだよ。僕たちも行こう」
「ええ!? 危険だよ!」
カンタンの背中でチュウ太が叫びます。
「外を飛んでいるよりましだよ。それに、あんな大波にもこの灯台はびくともしなかったんだから」
それもそうだと頷いたカンタンは、灯台の窓を見やって生唾を飲み込みます。
ちょうどその頃、一階が海水で水没した灯台の内側で溺れていた亜紀ちゃんが、なんとかモモタとアゲハちゃんがいる階段の上へと這い上がってきました。
「亜紀ちゃん大丈夫?」アゲハちゃんが、びしょぬれになった亜紀ちゃんの頭にとまって、髪を撫でてやります。
実は、波が押し寄せる直前、ドアのすぐそばに上げ下げ窓があることに、亜紀ちゃんは気がつきました。急いで上げ下げ窓に駆け寄ります。下の窓を力いっぱい押し上げると、なんとか持ち上げることが出来ました。
鍵がかかっていなかったのか、壊れていたのかは分かりませんが、不幸中の幸いです。亜紀ちゃんはお腹を引っ掛けてよじ登ります。その隙間を縫って、モモタが内側に入りました。亜紀ちゃんが内側に転げ落ちた瞬間、波が灯台にぶち当たって内側に海水が溢れかえります。
モモタは急いで階段に避難しましたが、亜紀ちゃんは海水の中に飲み込まれてしまいました。
渦巻きの中で翻弄される亜紀ちゃんの上を、アゲハちゃんが飛び回って、頑張るよう必死に応援します。
まだ泳げない亜紀ちゃんは、だんだんと深くなって足が届かなくなると、とたんに溺れてしまいました。モモタも泳ぐことが出来ません。体もとても小さかったので助けに行くことも出来ません。「にゃあにゃあ」鳴き続けることしか出来ませんでした。
しばらくして、海水の浸水はなくなりました。それでも亜紀ちゃんはあっぷあっぷしています。だんだんと弱まっていく渦から逃れた亜紀ちゃんは、ようやく階段のそばに流れ着きました。そうして、なんとか一命を取り留めることができたのです。
キキたちには波の死角になって見えていなかったのですが、それが事の顛末でした。
息も絶え絶えの亜紀ちゃんが階段にとっぷした時に、キキが窓枠にとまって中を覗きました。モモタがキキを呼び込みます。その声を聞いて、キキも「モモタ」と叫びました。モモタの無事を喜んだキキが、モモタに飛びつきます。
「よかったキキ」モモタがキキをなめました。キキもモモタの毛づくろいをして、お互いの頑張りを讃えあいます。そこに、カンタンが恐る恐る入ってきました。溜まった海水の上に舞い降りて、ゆっくりと階段のほうへと向かって泳いできます。
チュウ太がカンタンの背から飛び降りて、モモタに抱きつきました。
「よかったモモタ、無事で本当によかったよ」
「心配してくれてありがとう、チュウ太」
モモタは、チュウ太のこともなめてやります。そしてカンタンにお礼を言いました。
「チュウ太を守ってくれてありがとう。チュウ太は僕の大親友だから、死なれたらとても嫌なんだ。
それに、あの波に襲われた時に亜紀ちゃんを助けてくれてありがとう。カンタンが来てくれなかったら、僕足がすくんで身動き取れなかったもん」
モモタは、カンタンのこともなめてあげました。
それからモモタは、亜紀ちゃんを励まそうとそばによって、頬をなめてやります。なんとか息を整えた亜紀ちゃんは、尽きかけているであろう気力と体力を振り絞って、身を起こしました。
胸には、どんな困難に見舞われようとも放さなかった懐中電灯がしっかりと抱えられています。
亜紀ちゃんは、その懐中電灯をマジマジと見やって、スイッチをスライドさせました。カチッと音がすると同時に、真っ白な光が天井となった階段の裏面を照らします。それを見上げた亜紀ちゃんにつられて、みんなも上を見上げました。
視線を戻した亜紀ちゃんは、「よし・・・」と呟きます。そして、フラフラしながらも立ち上がって階段を見上げました。
灯塔の中は、中心に柱が一本立っていて、その周りをコンクリートの螺旋階段が連なっているだけです。
壁に横長い突起物がついていました。たぶん蛍光灯が設置されているのでしょう。発電機が壊れているのか、初めからないから分かりませんが、非常灯の灯りはついていません。避難経路を示す緑色の走る人の絵が描いてある避難灯も消えています。電池が切れているのでしょう。
亜紀ちゃんは、震える足を撫でながら、壁沿いに上っていきました。
そこにカンタンが舞い上がってきて合流しました。
「モモタが…モモタが・・・」チュウ太とカンタンがうわごとのように繰り返しています。
キキが、怒鳴りました。
「まだ分からないよ。海に落ちたとしても、まだもがいているかもしれないじゃないか。早く見つけて助けてやらないと‼」
「でもどうやって助けてあげられるの? 僕たちも波に飲まれちゃうよ!」カンタンが嘆きます。
「分からないよ! 分からないけど、何とかしなきゃ‼‼」
二羽して押し問答を繰り返しながら、旋回を続けます。必死にモモタたちを探していたキキの瞳に、防波堤の一階にある窓が映りました。よくは見えないのですが、開いているように見受けられます。
もしやと思って高度を下げて確認すると、間違いなく開いています。
キキは、カンタンを呼んで言いました。
「たぶん、みんなはあの窓から中に入ったんだよ。僕たちも行こう」
「ええ!? 危険だよ!」
カンタンの背中でチュウ太が叫びます。
「外を飛んでいるよりましだよ。それに、あんな大波にもこの灯台はびくともしなかったんだから」
それもそうだと頷いたカンタンは、灯台の窓を見やって生唾を飲み込みます。
ちょうどその頃、一階が海水で水没した灯台の内側で溺れていた亜紀ちゃんが、なんとかモモタとアゲハちゃんがいる階段の上へと這い上がってきました。
「亜紀ちゃん大丈夫?」アゲハちゃんが、びしょぬれになった亜紀ちゃんの頭にとまって、髪を撫でてやります。
実は、波が押し寄せる直前、ドアのすぐそばに上げ下げ窓があることに、亜紀ちゃんは気がつきました。急いで上げ下げ窓に駆け寄ります。下の窓を力いっぱい押し上げると、なんとか持ち上げることが出来ました。
鍵がかかっていなかったのか、壊れていたのかは分かりませんが、不幸中の幸いです。亜紀ちゃんはお腹を引っ掛けてよじ登ります。その隙間を縫って、モモタが内側に入りました。亜紀ちゃんが内側に転げ落ちた瞬間、波が灯台にぶち当たって内側に海水が溢れかえります。
モモタは急いで階段に避難しましたが、亜紀ちゃんは海水の中に飲み込まれてしまいました。
渦巻きの中で翻弄される亜紀ちゃんの上を、アゲハちゃんが飛び回って、頑張るよう必死に応援します。
まだ泳げない亜紀ちゃんは、だんだんと深くなって足が届かなくなると、とたんに溺れてしまいました。モモタも泳ぐことが出来ません。体もとても小さかったので助けに行くことも出来ません。「にゃあにゃあ」鳴き続けることしか出来ませんでした。
しばらくして、海水の浸水はなくなりました。それでも亜紀ちゃんはあっぷあっぷしています。だんだんと弱まっていく渦から逃れた亜紀ちゃんは、ようやく階段のそばに流れ着きました。そうして、なんとか一命を取り留めることができたのです。
キキたちには波の死角になって見えていなかったのですが、それが事の顛末でした。
息も絶え絶えの亜紀ちゃんが階段にとっぷした時に、キキが窓枠にとまって中を覗きました。モモタがキキを呼び込みます。その声を聞いて、キキも「モモタ」と叫びました。モモタの無事を喜んだキキが、モモタに飛びつきます。
「よかったキキ」モモタがキキをなめました。キキもモモタの毛づくろいをして、お互いの頑張りを讃えあいます。そこに、カンタンが恐る恐る入ってきました。溜まった海水の上に舞い降りて、ゆっくりと階段のほうへと向かって泳いできます。
チュウ太がカンタンの背から飛び降りて、モモタに抱きつきました。
「よかったモモタ、無事で本当によかったよ」
「心配してくれてありがとう、チュウ太」
モモタは、チュウ太のこともなめてやります。そしてカンタンにお礼を言いました。
「チュウ太を守ってくれてありがとう。チュウ太は僕の大親友だから、死なれたらとても嫌なんだ。
それに、あの波に襲われた時に亜紀ちゃんを助けてくれてありがとう。カンタンが来てくれなかったら、僕足がすくんで身動き取れなかったもん」
モモタは、カンタンのこともなめてあげました。
それからモモタは、亜紀ちゃんを励まそうとそばによって、頬をなめてやります。なんとか息を整えた亜紀ちゃんは、尽きかけているであろう気力と体力を振り絞って、身を起こしました。
胸には、どんな困難に見舞われようとも放さなかった懐中電灯がしっかりと抱えられています。
亜紀ちゃんは、その懐中電灯をマジマジと見やって、スイッチをスライドさせました。カチッと音がすると同時に、真っ白な光が天井となった階段の裏面を照らします。それを見上げた亜紀ちゃんにつられて、みんなも上を見上げました。
視線を戻した亜紀ちゃんは、「よし・・・」と呟きます。そして、フラフラしながらも立ち上がって階段を見上げました。
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壁に横長い突起物がついていました。たぶん蛍光灯が設置されているのでしょう。発電機が壊れているのか、初めからないから分かりませんが、非常灯の灯りはついていません。避難経路を示す緑色の走る人の絵が描いてある避難灯も消えています。電池が切れているのでしょう。
亜紀ちゃんは、震える足を撫でながら、壁沿いに上っていきました。
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