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piece2 バースデーケーキ
ほんとに大好きなんだね
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翌日の放課後、悠里は彩奈に付き合ってもらい、製菓グッズが置いてある店を覗く。
「あ、悠里!こっちこっち」
手分けして陳列棚を探していた彩奈が、赤メガネの下の目を輝かせて手招きした。
その棚には、サッカー・野球など、スポーツを模した型がたくさん並んでいる。
バスケのユニフォームは、ノースリーブ。
悠里は目を皿のようにして、陳列棚を見つめる。
「……あった!」
シンプルなノースリーブのクッキー型。
大きさは、5センチくらいだろうか。
ちょうどいいサイズが見つかり、悠里は微笑んだ。
「……いい感じ?」
悠里の手元を覗き込み、彩奈も笑う。
「うん!彩奈、ありがとう」
「良かった良かった!」
悠里の長い髪を撫で、彩奈が棚を指す。
「あ、バスケボールの型もあるよ?これはいらない?」
「うん、大丈夫! ボールは、丸い型の上にアイシングで作れそうだから」
「もしかして、既に試作済み?」
ニヤニヤと彩奈が悠里の顔を覗き込む。
「さすが、気合い入ってんねえ」
「もう、彩奈!」
照れ隠しにむくれて見せ、悠里は話を切り替えた。
「せっかくだから、材料も買っていっちゃおうかな。いい?」
「もちろん!」
2人は笑い合いながら、製菓材料の売り場へと向かった。
ケーキとクッキーの材料をひと通り購入し、2人は、休憩とお喋りのためにカフェに入っていた。
「ねえねえ、悠里。どんなケーキを作るの?」
期待が膨らんで堪らないと言った体で、彩奈が問いかける。
悠里はにっこり微笑み、ノートに描いたケーキ全体の図案と、昨夜作ったアイシングクッキーの写真を見せた。
ワクワクと覗き込んだ彩奈の目が、パッと輝く。
「すごーい!バスケのボールとゴールだあ!これ、悠里が自分で描いたの?」
「うん!どう? それっぽく見える?」
「見える見える!むしろ、そうにしか見えない!」
ゴールのクッキーの上にボールのクッキーを乗せた画像を指し、彩奈が言った。
「この、ボールがゴールに入りそうな感じがいいよね!」
意図した通りのイメージが彩奈に伝わり、悠里は嬉しくなる。
「あ、ねえねえ、悠里」
彩奈が、パチンと指を鳴らす。
「誕生日の日付をさ、スコアボード風に描くのはどう?」
悠里は大きな目を輝かせて頷いた。
「それいいね!やってみたい!」
2人は早速、バスケットボールのスコアボードを検索する。
「この、デジタルのスコアボード、カッコよくない?」
彩奈が見せてくれたスマートフォンの画面を覗き込む。
シンプルなデザインで、上には時間、下には、両チームの点数が左右に表示されている。
そして中央には「basketball」の文字が入っていた。
「うん!カッコいいね!これを真似するなら、上に今年の西暦、下に日付で、真ん中にお名前かなあ」
「いい、いい!」
悠里の言葉に、彩奈が大きく頷いた。
自分では思いつかなかった素敵なアイディアをくれた親友に、悠里は微笑みかけた。
「可愛くなりそう。彩奈、ありがとう!」
彩奈は、嬉しそうな悠里を見つめ、目を細める。
「バスケのケーキ。まさにシバさんのためのケーキだね!」
その言葉に、悠里は頬を染めながら頷く。
「……うん。がんばる!」
「くう一っ!恋する乙女、可愛いぞぉ」
彩奈が頭を撫でてくる。
「悠里。ほんとにシバさんのこと、大好きなんだね」
悠里は、とっさに図案を描いたノートで顔を隠す。
そして、聞こえるか聞こえないかの微かな声と共に、頷いた。
「......うん」
きゃあっ、と彩奈が歓声を上げる。
「悠里がシバさんのこと好きって言ったー!可愛いすぎるう!」
そうして、写真のアングルを決めるように、両手の指で四角を作りながら微笑む。
「はあ~……この悠里を、シバさんに見せたいわ」
こんなん惚れてまうでしょ、と彩奈は満足げにうんうんと何度も頷いた。
「がんばるねえ、悠里」
「うん。ゴウさんと一緒に、たくさん思い出を作って。積み重ねて……それで、私のこと、好きになってくれたらいいな……」
半ば独り言のように、悠里は言った。
彩奈の手が豪快に、悠里の髪をクシャクシャと撫でる。
「わっ」
思わず首をすくめた悠里に、彩奈が笑った。
「これ以上好きにならせたら、シバさんのハートがパンクしちゃうんじゃない?」
「パ、パンクって」
「まあシバさんの場合、悠里でいっぱいにして、パンクさせちゃった方がいいかもね!」
彩奈が意味ありげに、悠里の顔を覗き込んだ。
「ああいう、いろいろ抱え込んでる人にはさ。抱えてるもん全部取り落としちゃうくらい、思い切りぶつかった方がいいよ!」
彩奈らしい威勢のいい言葉に、悠里は苦笑する。
どちらかと言うと自分は、取り落とさせるよりも、支えたい、と思うのだが。
彩奈が、ケーキの図案を描いた悠里のノートを、トントンと指して言う。
「いっそのこと、悠里から告白しちゃえば?」
「し、しないよ」
悠里は真っ赤になって首を左右に振った。
「私、今のままで充分だもん!」
彩奈には言えないが、本音では、過去と向き合う決意をした剛士を、急かすようなことをしたくなかった。
悠里は、剛士と手を繋いで話した、イルミネーションの夜を思い返す。
剛士に、信じて待っていると伝えた。
今はただ、穏やかで優しい2人の時間を、ゆっくりと積み重ねていきたい。
痛みと戦う剛士の心を、少しでも癒したい――
「何をコドモみたいなこと言ってんのよ。焦れったいなあ」
彩奈は笑いながらもう一度、悠里の頭をクシャクシャと撫でた。
「まあ、両想いで、まだ付き合ってないときがイチバン楽しいってのは、わかるけどね!」
「あ、彩奈……」
なんと言い繕うこともできない。
悠里は真っ赤に染まった頬のまま、俯くしかなかったのだった。
「あ、悠里!こっちこっち」
手分けして陳列棚を探していた彩奈が、赤メガネの下の目を輝かせて手招きした。
その棚には、サッカー・野球など、スポーツを模した型がたくさん並んでいる。
バスケのユニフォームは、ノースリーブ。
悠里は目を皿のようにして、陳列棚を見つめる。
「……あった!」
シンプルなノースリーブのクッキー型。
大きさは、5センチくらいだろうか。
ちょうどいいサイズが見つかり、悠里は微笑んだ。
「……いい感じ?」
悠里の手元を覗き込み、彩奈も笑う。
「うん!彩奈、ありがとう」
「良かった良かった!」
悠里の長い髪を撫で、彩奈が棚を指す。
「あ、バスケボールの型もあるよ?これはいらない?」
「うん、大丈夫! ボールは、丸い型の上にアイシングで作れそうだから」
「もしかして、既に試作済み?」
ニヤニヤと彩奈が悠里の顔を覗き込む。
「さすが、気合い入ってんねえ」
「もう、彩奈!」
照れ隠しにむくれて見せ、悠里は話を切り替えた。
「せっかくだから、材料も買っていっちゃおうかな。いい?」
「もちろん!」
2人は笑い合いながら、製菓材料の売り場へと向かった。
ケーキとクッキーの材料をひと通り購入し、2人は、休憩とお喋りのためにカフェに入っていた。
「ねえねえ、悠里。どんなケーキを作るの?」
期待が膨らんで堪らないと言った体で、彩奈が問いかける。
悠里はにっこり微笑み、ノートに描いたケーキ全体の図案と、昨夜作ったアイシングクッキーの写真を見せた。
ワクワクと覗き込んだ彩奈の目が、パッと輝く。
「すごーい!バスケのボールとゴールだあ!これ、悠里が自分で描いたの?」
「うん!どう? それっぽく見える?」
「見える見える!むしろ、そうにしか見えない!」
ゴールのクッキーの上にボールのクッキーを乗せた画像を指し、彩奈が言った。
「この、ボールがゴールに入りそうな感じがいいよね!」
意図した通りのイメージが彩奈に伝わり、悠里は嬉しくなる。
「あ、ねえねえ、悠里」
彩奈が、パチンと指を鳴らす。
「誕生日の日付をさ、スコアボード風に描くのはどう?」
悠里は大きな目を輝かせて頷いた。
「それいいね!やってみたい!」
2人は早速、バスケットボールのスコアボードを検索する。
「この、デジタルのスコアボード、カッコよくない?」
彩奈が見せてくれたスマートフォンの画面を覗き込む。
シンプルなデザインで、上には時間、下には、両チームの点数が左右に表示されている。
そして中央には「basketball」の文字が入っていた。
「うん!カッコいいね!これを真似するなら、上に今年の西暦、下に日付で、真ん中にお名前かなあ」
「いい、いい!」
悠里の言葉に、彩奈が大きく頷いた。
自分では思いつかなかった素敵なアイディアをくれた親友に、悠里は微笑みかけた。
「可愛くなりそう。彩奈、ありがとう!」
彩奈は、嬉しそうな悠里を見つめ、目を細める。
「バスケのケーキ。まさにシバさんのためのケーキだね!」
その言葉に、悠里は頬を染めながら頷く。
「……うん。がんばる!」
「くう一っ!恋する乙女、可愛いぞぉ」
彩奈が頭を撫でてくる。
「悠里。ほんとにシバさんのこと、大好きなんだね」
悠里は、とっさに図案を描いたノートで顔を隠す。
そして、聞こえるか聞こえないかの微かな声と共に、頷いた。
「......うん」
きゃあっ、と彩奈が歓声を上げる。
「悠里がシバさんのこと好きって言ったー!可愛いすぎるう!」
そうして、写真のアングルを決めるように、両手の指で四角を作りながら微笑む。
「はあ~……この悠里を、シバさんに見せたいわ」
こんなん惚れてまうでしょ、と彩奈は満足げにうんうんと何度も頷いた。
「がんばるねえ、悠里」
「うん。ゴウさんと一緒に、たくさん思い出を作って。積み重ねて……それで、私のこと、好きになってくれたらいいな……」
半ば独り言のように、悠里は言った。
彩奈の手が豪快に、悠里の髪をクシャクシャと撫でる。
「わっ」
思わず首をすくめた悠里に、彩奈が笑った。
「これ以上好きにならせたら、シバさんのハートがパンクしちゃうんじゃない?」
「パ、パンクって」
「まあシバさんの場合、悠里でいっぱいにして、パンクさせちゃった方がいいかもね!」
彩奈が意味ありげに、悠里の顔を覗き込んだ。
「ああいう、いろいろ抱え込んでる人にはさ。抱えてるもん全部取り落としちゃうくらい、思い切りぶつかった方がいいよ!」
彩奈らしい威勢のいい言葉に、悠里は苦笑する。
どちらかと言うと自分は、取り落とさせるよりも、支えたい、と思うのだが。
彩奈が、ケーキの図案を描いた悠里のノートを、トントンと指して言う。
「いっそのこと、悠里から告白しちゃえば?」
「し、しないよ」
悠里は真っ赤になって首を左右に振った。
「私、今のままで充分だもん!」
彩奈には言えないが、本音では、過去と向き合う決意をした剛士を、急かすようなことをしたくなかった。
悠里は、剛士と手を繋いで話した、イルミネーションの夜を思い返す。
剛士に、信じて待っていると伝えた。
今はただ、穏やかで優しい2人の時間を、ゆっくりと積み重ねていきたい。
痛みと戦う剛士の心を、少しでも癒したい――
「何をコドモみたいなこと言ってんのよ。焦れったいなあ」
彩奈は笑いながらもう一度、悠里の頭をクシャクシャと撫でた。
「まあ、両想いで、まだ付き合ってないときがイチバン楽しいってのは、わかるけどね!」
「あ、彩奈……」
なんと言い繕うこともできない。
悠里は真っ赤に染まった頬のまま、俯くしかなかったのだった。
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