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Lesson 25 空っぽの心
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空っぽだった。
空っぽになった。
ぽっかりと、心も頭も体もどこにもなんにも詰まっていない。
私の中が空洞になってしまった。
空洞な私を埋め尽くすのは淋しさ。
ギュッと胸を締めつける切なさ。
こんなにも私の中に葵はいたんだと、それを思い知らされた。
たった一時間前のことを後悔していた。
どうしてあんなことを言ってしまったのか。
言ったらこうなることがわかっていたはずなのに、それでも言わずにはいられなかった。
言いたいことと真逆のことを言って、葵が自分の欲しい言葉を言ってくれるなんて考えなかったかと言えばうそになる。
葵に考え直せと、俺だけを見ろと言って欲しかった。
矛盾ばかり、悪循環ばかりを繰り返してる。
スマホが鳴ってLINEの通知が届く。
確認しなくても送信者はわかってる。
松永だ。
返事しなくちゃ――
なのにスマホを握ることができない。
――なんで葵は私にキスしたんだろう?
優しいキス。
甘くとろけるキス。
激しく情熱的なキス。
そのどれもが首をギリギリと絞め上げる。
笑った葵。
困った顔の葵。
苦笑した葵。
真剣な葵。
どれもが私を揺さぶって、がんじがらめにする。
空っぽになった私が、葵で埋まる。
空っぽになったはずなのに、葵への思いがどんどん詰まっていくの、苦しいよ。
バカみたい。
葵と決別したら、もっと葵を求めるようになるなんてバカみたい。
同じ所でぐるぐる回って一歩も先に進めない。
それどころか、後ろ向きに進んでいるんじゃないかと思えてならない。
「嫌い」
つぶやきが虚しく響く。
「大嫌い」
言葉と心の声が裏腹すぎる。
今すぐ訂正しようか。
好きだって。
大好きだって。
「諦め悪すぎ」
ため息ばかり出てくる。
ふと顔をあげて窓際に立った。
すぐそこに葵の部屋がある。
すぐそこのベランダで、いつも葵がたばこを吸う。
近くにいるのに遠い。
こんなことならもっと物理的な距離があったほうがいい。
私たちは近すぎる。
心の距離とは大違い。
視線が机に向かう。
引き出しを開けた。
そこにも捨てられないものがしまってある。
空になったチョコの箱と、リボン。
そんなものまで丁寧にとっておくあたり、重症だとしか言いようがない。
何度目かの通知音に私はスマホをスワイプした。
LINEを確認して返事をする。
松永を傷つけてはいけない。
自分と同じ気持ちにさせてはいけない。
義務?
かもしれない。
松永を選んだんだから、きちんと彼女としての役目を果たさないとって思っている自分に腹が立つ。
中途半端な気持ちで松永を振り回す。
でも、甘えたい。
ズルイズルイズルイズルイ。
葵のことを責められる立場じゃないな。
松永のことを葵のように好きになれるだろうか?
時間が解決してくれる。
きっと。
スマホを置く。
空っぽの心がカランカランと音を立てる。
満たしてくれる水を欲しがるみたいに、悲しい音がずっと鳴りやまなかった。
空っぽになった。
ぽっかりと、心も頭も体もどこにもなんにも詰まっていない。
私の中が空洞になってしまった。
空洞な私を埋め尽くすのは淋しさ。
ギュッと胸を締めつける切なさ。
こんなにも私の中に葵はいたんだと、それを思い知らされた。
たった一時間前のことを後悔していた。
どうしてあんなことを言ってしまったのか。
言ったらこうなることがわかっていたはずなのに、それでも言わずにはいられなかった。
言いたいことと真逆のことを言って、葵が自分の欲しい言葉を言ってくれるなんて考えなかったかと言えばうそになる。
葵に考え直せと、俺だけを見ろと言って欲しかった。
矛盾ばかり、悪循環ばかりを繰り返してる。
スマホが鳴ってLINEの通知が届く。
確認しなくても送信者はわかってる。
松永だ。
返事しなくちゃ――
なのにスマホを握ることができない。
――なんで葵は私にキスしたんだろう?
優しいキス。
甘くとろけるキス。
激しく情熱的なキス。
そのどれもが首をギリギリと絞め上げる。
笑った葵。
困った顔の葵。
苦笑した葵。
真剣な葵。
どれもが私を揺さぶって、がんじがらめにする。
空っぽになった私が、葵で埋まる。
空っぽになったはずなのに、葵への思いがどんどん詰まっていくの、苦しいよ。
バカみたい。
葵と決別したら、もっと葵を求めるようになるなんてバカみたい。
同じ所でぐるぐる回って一歩も先に進めない。
それどころか、後ろ向きに進んでいるんじゃないかと思えてならない。
「嫌い」
つぶやきが虚しく響く。
「大嫌い」
言葉と心の声が裏腹すぎる。
今すぐ訂正しようか。
好きだって。
大好きだって。
「諦め悪すぎ」
ため息ばかり出てくる。
ふと顔をあげて窓際に立った。
すぐそこに葵の部屋がある。
すぐそこのベランダで、いつも葵がたばこを吸う。
近くにいるのに遠い。
こんなことならもっと物理的な距離があったほうがいい。
私たちは近すぎる。
心の距離とは大違い。
視線が机に向かう。
引き出しを開けた。
そこにも捨てられないものがしまってある。
空になったチョコの箱と、リボン。
そんなものまで丁寧にとっておくあたり、重症だとしか言いようがない。
何度目かの通知音に私はスマホをスワイプした。
LINEを確認して返事をする。
松永を傷つけてはいけない。
自分と同じ気持ちにさせてはいけない。
義務?
かもしれない。
松永を選んだんだから、きちんと彼女としての役目を果たさないとって思っている自分に腹が立つ。
中途半端な気持ちで松永を振り回す。
でも、甘えたい。
ズルイズルイズルイズルイ。
葵のことを責められる立場じゃないな。
松永のことを葵のように好きになれるだろうか?
時間が解決してくれる。
きっと。
スマホを置く。
空っぽの心がカランカランと音を立てる。
満たしてくれる水を欲しがるみたいに、悲しい音がずっと鳴りやまなかった。
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