ミリしらな乙女ゲームに転生しました。

猫宮乾

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【二十三】もしや、乙女ゲームのヒロイン?

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 学園を卒業してからは、私は週に二度ほどはメアリ様に招かれて、お茶会の開き方や夜会時の侯爵夫人としての振る舞いなどを教わった。それに他のご令嬢やご婦人にもご紹介頂いた。少しずつとではあるが、大学で学んだ事もいかしつつ、私はグレイルに相応しくなれるよう、努力している。

 セレフィ様の結婚式が行われ、ずっとお仕えしてきたセレフィ様が隣国に嫁がれた時はやはり寂しさがあったが、週に一度は魔術便で手紙のやりとりをしている。これが中々楽しい。

 他には閨の講義は続いている。
 同時に、私自身の結婚へと向けた準備が本格化してきた。まだ式まで二年はあるのだが、招待客の選定や、持参品などの話などが始まっている。主に叔父様夫婦と、メアリ様側が話し合っている段階だが、侯爵家同士の婚姻という事もあって、様々な儀式や手順があるらしい。なおエドワード殿下とユイレ様の結婚式は、私とグレイルの一年後を予定していると聞いた。

 私も二十三歳になった。
 あと一年もしない内に、【エルディアス侯爵家機密】を聞くのかなと考えながら、この日は予定が無かったので、私は自宅で紅茶を飲んでいた。何事も無ければ、クリソコーラ侯爵家ともお別れだ。マルスや良くしてくれた使用人達と離れるのも正直寂しい。

 そんな事を考えていると、丁度馬車が停車する音がして、マルスが高等部から帰ってきたのが分かった。それからすぐに私がいた居室の扉が開いたので顔を向けると、マルスが顔を出した。

「姉上、リズロット嬢という男爵令嬢をご存知ですか?」

 マルスは笑顔だったが、目だけは笑っていなかった。

「元々は平民で、ベアロン男爵家の養子となった――現ご夫人の連れ子の」

 それを聞いて、私は首を振る。
 するとマルスが私の正面の長椅子に座りながら、目を眇めて頷いた。

「その方がどうかしたのですか?」
「今、大学で騒ぎが起きていると耳にしたんです」
「どんな騒ぎ?」
「なんでも、フォルド第二王子殿下と恋仲だとか」
「え?」

 驚いて私は目を丸くした。確かに噂話として、フォルド殿下は許婚のレイア様とはあまり親しくないとは聞いた事があった。エドワード殿下とユイレ様のように、許婚から始まった関係でも愛が生まれるパターンもあるわけだが、元々が政略的な許婚関係であるから、上辺だけの婚約者がいるというのは、決して貴族間では珍しい事ではない。

 しかし王太子殿下はエドワード殿下だし、王位の継承はほぼ確実だと言われているとはいえ、まだまだフォルド殿下の影響力も無視はできないし、第一王子殿下と第二王子殿下の王位争奪戦は幕を閉じているわけではない。そのそれぞれの後ろ盾ともなっているのが、双方の婚約者である、ユイレ様とレイア様であるともいえる。

「フォルド殿下の前で転倒したリズロット嬢を、殿下が腕で抱き留めた事が契機となって恋が始まったそうなのですが……レイア様を無視して、いいや蔑ろにし、冷たくあたりながら、人が変わってしまったかのようにフォルド様が恋に呆けているそうなのです」

 私唖然とした。セレフィ様の同母弟殿下であるフォルド様は、これまではとても優しいお方だという印象しかなかったからだ。

「……恋は、人を変えてしまうのね」

 思わず呟くと、マルスが首を振った。

「どうやら違うようなのです」
「え?」
「リズロット嬢は、魅了魔術を封じ込めた魔石を所持している様子で――今、大学内の男子を誘惑し続けているようなのです」
「!」
「幸いにして、そうした魔術を無効化する品をお持ちだったエドワード殿下やグレイル卿は今のところ問題ないようですが、次々と被害者が現れています。姉上、グレイル卿ならば大丈夫だとは思いますが、気を抜かないで下さいね。念のため、グレイル卿にもこの件をお伝えするべきです。今はまだ、近衛騎士団が調査している段階なので」

 それを聞いて、私は蒼褪めつつも頷いた。
 なおセレフィ様のご成婚を機に、私は隊長職を退き、現在はマルスが隊長をしている。近衛騎士団が対応に当たるのならば事態の悪化は無いだろうが、注意するに越した事は無い。

「でも、リズロット嬢はどうしてそのような事を?」
「モテたいようです」
「――へ?」
「純粋な理由です。男性にちやほやされて、モテたいようなんです」

 私は複雑な気分になった。ま、まぁ、それはそれで、そういう動機があっても悪い事は何もないだろう。だが、前世知識と照らし合わせ……さらには、前世で読み漁った悪役令嬢転生ものなどを思い出し、もしかしたらそのリズロット嬢が乙女ゲームのヒロインなのではないかと推測した。とりあえず、グレイルが大丈夫らしいと聞いた事には、ひっそりと安堵してしまったのだったりもする。

 なお、私が零部隊を辞める事に関しては、グレイルとも何度か相談した。グレイルは私がやりたいならば意思は尊重するが、危険な目に遭って欲しくないと繰り返し言ってくれた。その気持ちが嬉しかったし、私は別段やりたくてやっていたわけではないので、あっさりと退職したし、叔父様も私が結婚を控えている事もあったのだろうが快諾してくれた。

 しかし、魅了魔術の魔石が無ければモテないというのは、一風変わった乙女ゲームだと思う。課金して石を購入するのだろうか? そんな事を考えながら、私は乙女ゲームとは奥が深いのだなと考えたのだった。

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